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Nurse With Wound / Terms And Conditions Apply
元々は『Huffin' Rag Blues』のVynyl Mixに付いてきたという編集盤だがこの度通常リリースされた。『Huffin』からのシングル・未発表Verを集めた『The Bacteria Magnet』、7インチのみだった『Rushkoff Coercion』、ラーセンとの制作で、初期クラフトワークなどでベースを弾いていたエベラール・クローネマンを招いた『Erroneous, A Selection Of Errors』をコンパイル。『Huffin』はスティーヴン・ステイプルトンが寵愛するホットジャズをベースに作り上げた名作。00年代の作品ではダントツに聴いてて楽しいが、未発表音源でもそのテンションは健在。クローネマン氏を招いた作品は初期クラフトワークそっくりな即興を繰り広げるほか、NWW流ミュータント・ディスコまで収録。引き出しの多さを改めて提示。

今堀恒雄 / Trigun First Donuts soundtrack
アニメ『トライガン』のサントラ。何回聴いたかわからない割にパッケージで紛失していたまま長い時間が経ったが、中古屋で再会、保護に至った。今堀氏のテクニックよりもジャンル的な試みが顕著な内容で、ティポグラフィカ期に重なるところもあり。多彩なジャンルに囲まれるアコースティック・サウンドは『トライガン』の持つ「西部劇+サイバーパンク」という世界観にマッチしている。「フィロソフィー・イン・ア・ティーカップ」が最高です。エンディングはアキマ・ネオス歌唱だが、後の『ガングレイヴ』エンディングを担当するスクービードゥーのコヤマシュウも似た声なのは偶然なのか、ちょっと面白い。
もう一つのサントラ『2nd donuts』はボイスドラマ入りで、内輪ネタも多いために音楽目的で買うと余計なオマケに感じるかもしれないので注意。

山本正之,久石譲 / ミュージック・カプセル J9シリーズ
J9
J9国際映画社(倒産)の看板アニメ『J9』シリーズの主題歌や挿入歌を集めたもの。このシリーズは音源ごとに複数バージョンがあるものが多く、それをコンプリートするにはLPはもちろん、ソノシートまで対象になってしまうのだった。
今回は好きな曲だけをデータ購入。81年から83年で3タイトル、それぞれ曲の傾向が異なる。『ブライガー』はハードロック調、『バクシンガー』は和楽器の導入や浪曲風、『サスライガー』はバラードと時代を感じるテクノポップなどなど、テクノロジーの変遷も伺えて面白い。歌モノでは「さすらいキッド」、「星影のララバイ」、「愛のライディング・マシーン」、「ハピィソング」、「恋人たちの星まつり」、「メイビィ・ベイビィ」がナイス。

藤子・F・不二雄 大全集F
見ての通り、藤子F作品のアニメ主題歌などを5枚組にまとめたオムニバス。驚くべきは劇判もいくつか収録されており、『キテレツ』などは初CD化らしい。
当然メインは主題歌、白黒アニメ時代のものなど、なかなか貴重。これまでF関連のサントラはポツポツ出ており、マニアにとっては目新しいものはないかもしれないが、自分はyoutubeでたまに探すくらいの人間なので、ちょうど良かった・・・のだが、正直6000円ちょっとという値段に見合う程楽しめているかは微妙。酔った勢いで買うものじゃないですね。『21エモン』の「ベートーベンだね Rock'nRoll」はクラシックパロディ+歌詞にジェフ・ベックやパープルヘイズが出てくる珍品。『モジャ公』の「恋人が宇宙人なら」は、もろにヤマタツ〜大瀧・ナイアガラなサウンドで、こればかり聴いている。『キテレツ』を筆頭に、原作者と意思疎通出来てないようなディレクションが目立つ主題歌だらけだったが、タイアップ一つとってもゆるい世界だったんでしょう。

Sol Invictus / In The Rain
ソル・インヴィクタスはトニー・ウェイクフォード(ex:デス・イン・ジューン)のプロジェクトで、これは95年作をリイシューしたもの。DIJよりずっと芳醇なメロディーで鑑賞するのも苦ではありません。ビデオゲーム馬鹿としては光田康典のアコギ使いが好きな人にこそお薦めしたい。「ステイ」は本当に名曲。
Tor Lundvall(この人も音楽活動を行なっている)によるアートワークも素晴らしい。実は13年にLPでリイシューされており、絵的にもこちらを買うべきなのだが、安いということもありCD版を買ったのだった。

Organum / SORROW
現時点ではオルガヌムの最新作。ホーリートリロジーの延長線上にあり、45分ほどのオルガンドローン+その他倍音のハーモニー。90年代後半の作品は微妙なものが多いともっぱらの評価、シングルはあまり聴いたことがないため、自信を持っては言えないのだが、確かにパッとしなかった印象がある。しかし、ゼヴとの共作以降は焼き直し気味な金属摩擦から脱却、徐々にその名通りのハーモニーで唸らせる作風になっていく。三部作は『AMEN』が好きだったが、この『SORROW』は梵鐘の音などネタに富み、繰り返し楽しめる。30年以上のキャリアを持ちながら、奇をてらわずに新境地に達するのは流石としか言いようがない。

Swans / OxygenRE
スワンズがbandcampをやっていると知った。サム・ビザールから出ていた過去作が出れば文句はないのだが、現在はヤング・ゴッドからの再発と、ここ最近の音源だけの模様。さて、これは昨年出た傑作『To Be Kind』からのシングルカット。日本でもタワレコが追加音源を収録してリリースするらしいが、こちらを買った。収録はタイトル曲とそのライブ、デモ、アコースティックバージョンだ。
ジラはハウリン・ウルフが好きだと言っていたが、どんどん自分が若い頃に好きだったものに近付いていく姿を見ることで今まで勝手に抱いていた神秘性が剥がれていく。バンド、そしてジラのキャリアがむき出しとなったのが今のスワンズだ。

Sherwood and Pinch / Late Night Endless
ベースミュージックという響きが使いやすくて安易に使っていますが、こういうのを指すんだろうか?誰か教えて!!
On-Uっぽいのは当然かもしれないが、変に売れ線狙いな歌モノのおかげで割と無理がある内容に感じた。『Music Killer EP』もだったけど、シャーウッド氏の個性があまり感じられず、このコンビの役割分担的にこれは正しいのだろうか。今や当たり前となった「音の良さ」も災いして、紋切型のフロアチューンという印象がぬぐえなかった。これならAndy Stottの方が良い。もちろん、エンジニアリングという点では色々チャレンジしている作品ではあると思うんですけどね。

V.A. / ROOMMANIA#203 RADIO COLLECTION
REこちら参照。本当に運が良かった。



電気グルーヴ / double A
前から存在は知っていたけど、国内では全然お目にかからないのがこれ。『A』とremixアルバムである『リサイクルドA』をセットにしたもので、妙に高い価格でオークションに出ているのがしょっちゅうだった。Discogでドイツのお店から購入。値段も普通に安かった。収録内容が微妙に異なっており、『A』は「ループゾンビ」ラストの「敬礼ー!」がなくなっている。そしてシングル『Shangri-La』のカップリングだった「Shangri-Joppo」が何故か収録。ダムダムTV的なコンクレート風味のトラックで、「エジソン電」にも通じる。『リサイクルドA』は収録曲の一部が国内のものと変更されており、ここが重要。キャプテンファンクの「あすなろサンシャイン」、コルサコフの「猫夏」、センソラマの「スモーキーバブルス」は他ではあまり聴けない貴重なトラックだ。内容に関しては、どちらも素晴らしいアルバムだけにここでは書かないです。

電気グルーヴ / Fallin' dawn
電グル新作はケラリーノ・サンドロヴィッチ監督のドラマに提供した主題歌。卓球の嗜好に忠実な歌モノで、古臭いテイストながら録音が抜群に良い。相変わらず歌詞は音重視で、ひたすらシュール。昔のように、めちゃくちゃのようで筋が通っている絶妙なリリックが欲しい人は残念でした。カップリングは「baby's on fire」のリミックス。(((さらうんど)))のリミックスでは途中で鴨田氏(?)のシャウトが入る。映画のような企画が立ち上がるらしいが、すっかりキューンの稼ぎ頭として再起用され働きっぱなしの電気。WIREも一旦は終わり卓球の苦労がチラチラ目に入りがちになる一方で、ピエールが売れまくってて凄い。

The New Blockaders / NONCHALANT ACTS OF ARTISTIC NIHILISM
TNBブロッケイダーズ新作がリリース。珍しく単体名義で、2012年と14年のライブ音源を収録。ハーシュノイズは今でこそ珍しくないジャンルだが、TNBは良い意味で飾り気のないノイズを生み出し続ける。考え事をしている時の、周りの音がおぼろげになる、あの曖昧な時間。音じゃなくて、こちらの環境からノイズを引っ張り出すという逆説的な定義は昔からあったのでしょうが、飽きません。ガーゴーいってる音が大好きというわけではないので、彼らの作品はとても自然に聞こえる。TNBオーケストラ名義の作品は全然買えてない。本作はディスクユニオンが仕入れていたので買えました。

Current 93 / The Starres are Marching Sadly Home (The InMostLight ThirdAndFinal)
カレント93のInmostlightシリーズ完結作。CDでも出ているし、データでも買えるようになった昨今だが、この秀逸なジャケットはアナログで持っておくべき。フォーエヴァーレコードにて購入した。93内容は20分弱のドローンを背後に、チベットやシャーリー・コリンズが歌う、というよりは唱えるもの。
前作にあたる『オール・ザ・プリティー・リトル・ホースィーズ』含めて、このシリーズはアートワークと内容がマッチしすぎ。


Robert Haigh / The Silence Of Ghosts
ロバート・ヘイの新作。最近は聴く機会が少なかった御仁だが、今回やVynyl On Demandから出た過去音源の復刻をきっかけに過去作をちょっとおさらいした結果、しょっちゅう聴くようになりました。今になって良さというか、やりたいこと、コンセプトを予想することが出来て、そこに強い意志を感じます。ピアノをフィーチャーした、イージーリスニングに感じるのは大間違い。ドゥルッティ・コラムと同じで、この淡い音がヘイの強靭なポリシーの表れ。

Haco / Secret Garden
haco『フォーエヴァー・アンド・エヴァー』以来となる新作。前作は過去の素材を加工して制作、震災の影響が色濃い時代性のある歌詞など、異質な作品だったが、今回は従来の「独善的でない」ノスタルジーをふるまうHacoならではの世界に。陳腐な表現だが、幻想的な空気に包まれた曲と詞の数々は不思議と懐かしさを覚える。hacoはっきりとは思い出せなくても、至る所で引っかかるデジャヴの数々。人の想像は記憶に基づいているのだと改めて思う。「白くなりゆく影」がダントツで素晴らしい。
ディスクユニオンはPVのコード付きステッカーが同梱。歌詞は和英どちらもあるのが嬉しい。

squarepusher / Damogen Furies
スクウェアプッシャー最新作は自身が開発したソフトウェアによるワンテイク作品集。一発録りにしては凝りすぎているような内容だが、制作環境のチェックを兼ねてなのか、音楽スタイルの振れ幅が広めで、『ultravisitor』を延々と崇める人又は前作で呆れた人のどちらにもショックを与えるような異色作に。もちろん、後者にとっては嬉しい衝撃で延々と金太郎飴を切り続ける仕事をオリジネイターが放棄してはいけない理由はない。後は環境面の違いがフォロワーたちのそれと異なるということを受けてにどうわかってもらうかだろう。この環境に慣れて旧来のドリルンベースだかに回帰されたら元の木阿弥かも。なんにせよ、家で聴くにしては少々厳しいがライブは楽しそう。近年に限らず何故だかあまり好きになれないのは自分でも不思議...。

いずみたく / ゲゲゲの鬼太郎60'S+70'Sミュージックファイル
gやっと入手した資料もの。サンプリングにも最適なネタの数々。とにかくこの時代の環境でしか出せぬミックスと鳴りに膝叩きまくり。ベースとストリングスが特にキマってて、幅が広がり洗練された80'S以降にはない胡散臭さが病みつきです。これを幼少時に浴びていた人たちは(怖かったでしょうが)幸せでしょ!!アニメの鬼太郎はまだまだ語られていないところが多いので、水木御大生前葬も兼ねてパーッと特集してください、ホントにお願い!!あとBOX安価で再発して。

CALEXICO / Edge Of The Sun
知らない内に出ていたキャレキシコの新作。以前出たものはHDDが死んでしまったために聴きなおすことが出来ず。悲しみに暮れていた頃に本作の存在を知ったのだった。相変わらずといったところだが、申し訳程度に電子楽器をフィーチャーしているのが好印象。4曲目が特に良い。ここまで来ると流行などを意識する必要もないため、ルーツに忠実な彼らの気楽さが心強く感じるところもあり。カバーをまとめたものもそろそろ出してほしいかも。

Coil / Black Antlers
gコイル名作のブートが昨年から新たにフランスで流通していた。333枚限定と書くと貴重に感じますが、あまりにお粗末な装丁で買ったの失敗でした。音源も公式で販売しているWAVだかを焼いただけかもなあ。内容は素晴らしいですが、この扱いはコイルや関わった人たちにとってもキツイ。多くの人に聴かれて欲しいからブートでも、と思う時もたまにはあるが、やっぱり真面目なところが正規で再発すべきですな。

Leftfield / Alternative Light Source
長いスパンを経ての新作。流行に重なるのは音の良さくらいで、内容だけ聴いてたらいつの時代の作品か断定し辛い。そのマイペースぶりが良いけど、それ以上のものはないというのも本音。作業の傍ら流していますが、何度再生しても飽きない(頭に入ってこない?)。巷に蔓延る「心に突き刺さる歴史的傑作!!」なんて文句に飽きた方は是非。

NURSE WITH WOUND / Syivie and Babs Hi-Thigh Companion
gまさかのリイシューとなった80年代を代表する一作。リマスターはデニス・ブラッカムで、アンドリュー・ライルズとマット・ウォルドンのリミックスに加えて未発表音源と素材も付いてきました。タイトルは以前のCDリリースに合わせて、「Hi-Thigh」になっていますが、CDDBだとオリジナルと一緒。そのモンドな内容ばかりに注目しがちですが、総勢45名を超えるオールスターのクレジットはそのままステイプルトンの交流関係及び人柄を示していると思う。これで名作と呼ばれるものは大体再発されたかな?2ndと3rdがまだですが。

NURSE WITH WOUND and WHITEHOUSE / The 150 merdelous passion
NWWとホワイトハウスの共作。オリジナルはレア盤だが、CDは2回プレスされており、どちらもそれ程高くなかった。自分が持っているものは状態が悪かったので、安価ということもありこの度2枚目を購入。古いブツ故にブロンジングが確認できる。音自体に問題はナシ。今聴くと意外と短めな再生時間もあって、なかなか良い。この作品を巡ってちょっとしたトラブルがあったと言われているが、今後もリイシューはないのだろうか。

The Chemical Brothers / Born in the Echoes
ケミカルの新作。相変わらずアルバム中に良い曲が少ないグループだが、そこが好きなのは自分だけだろうか。オービタルもアンダーワールドも優等生すぎてイマイチ・・・と感じた自分には、ケミカルやノーマン・クックの下世話でサンプリング全開の貧乏臭さが好きなのだ(クックはサンプリングのライセンスで売り上げが相殺されたエピソードもあり)。『ダスト惑星』っぽい部分もナイスです。リード曲「ゴー」も変な歌モノで、古臭さだけが気になってしまう。レフトフィールドの新作と似ているようだが、こちらの方がムズムズさせてくれて堪らないね。

DEGO / The More Things Stay the Same
4ヒーローのディーゴによるソロ。90年代臭が凄いのは意図的なのか、この人の地なのか、クラブジャズなんて単語じゃ括れない、我らにとってのオールドスクールでございました。中学生の頃に96〜99年を過ごしていたら、より感慨深い作品に感じるんだろうけど、そこまでおっさんくさいことはしたくないな。BGMにどうぞ。

Coil / Unnatural history
コイルの編集盤がカセットテープで復刻。同じレーベルからはタイムマシーンの作品まで出しており、謎の気合を感じる。曲のクレジットなどもちゃんと書いてあるし、何よりフォーマットに合わせたデザインがちゃんと為されていて好印象。

James Blackshaw / Summoning Suns
ブラックショウの新作は歌と生音にこだわったクラシック・スタイル。日本から「森は生きている」のメンバーが参加しており、日本語ボーカル「Towa No Yume」はアルバムでも白眉。時代背景などを感じさせにくいスタイルなので、聴いている人間のコンディションがモロに出る。ブラックショウによるイラストも真っ白の背景に線画が添えられているもので、なかなか示唆的だ。アコギの調べとフィンガーノイズに癒される、なんて安々と言えません。

Merzbow / Wildwood
メルツバウ新作。アナログとデジタルを混合した録音が多かった昨今だが、近ごろはアナログに偏っている。今作もサンプルこそ使っているが、一発録り的な手探りの音いじり。高音のうねりの位相やチャンネル振りは相当拘っているように感じる。高解像度のハーシュノイズはメルツバウのトレードマークだが、今作も期待を裏切らないミキシングに満足。4曲目終盤のグリッチな展開がGOOD!!!
なお、アルバムはブルガリアのワイルドウッド・トラストという施設で保護されている二匹の熊へのベネフィットも兼ねています。

Cornelius / Constellations Music
コーネリアスこと小山田圭吾の仕事集。リミックスや提供曲、新曲のピースとなるものが収録。久々に聴いたコーネリアスですが、『センシャス』的なサウンドは変わらず、料理する素材の持ち味次第といったディレクション。もはやデザイナー。砂原良徳にも言えるけど、自身の作品以外の場所で個性を出せる人はかっこよく見えますね。小山田氏本人をを知りたかったら『69/96』や『ファンタズマ』に行ってしまうので、今回のような作品集は歓迎。「幽霊の気分で」(坂本慎太郎)、ペンギンカフェとの「ソラリス」が○。

Liberez / All Tense Now Lax
ローズ・マクドゥールの過去作をリイシューするレーベルのbandcampで発見。今年出た作品で、brainwashedのレビューにもあったことは覚えていた。期待してなかったけど、思った以上に良い作品。とにかくメッセージ性に欠けたドライな仕上がりで、2曲目の「グレイトフル・ファミリー」は簡素なパーカッションによくわからないうわ言とノイズがノンストップで垂れ流される。途端にメロディアスになったかと思うと、それが最後の曲だったりでアルバムという構成を無視しまくり。どんな顔して作っているのか想像し辛いところが好印象。

Scoobie Do / Extra Funk-a-Lismo!
スクービーによるカバー曲と未発表音源集。昨年の『グランド・フロッグ・セッションズ』と同じで、ライブの定番である曲の数々をコンパイル。何を歌っても面白い境地に達したシンガー、コヤマシュウの名人芸を堪能できます。もちろん演奏も素晴らしく、「エンジョイ・ユアセルフ」では先日死去したリコ・ロドリゲスも参加。白眉はやっぱりスカパラの「美しく燃える森」か。メジャー在籍時にあったイロモノカバー(「スニーカーぶる〜す」や「チェリー」とか)より、普通に演奏する方が良いんだから凄いもんです。フィッシュマンズと「タイトゥン・アップの合わせ技には脱帽ものですが。お蔵入りになった「贈ることだ!」も良い。

Coil / Backwards
突如リイシューされたコイルのお蔵入り音源。元々は90年代中心に録音したものをまとめたデモテープで、08年には『The New Backwards』の形でリメイクされていた。オリジナルが後から出るという結果になってしまったが、これらの音源の一部はロシアから出ていた編集盤などに入っていた・・・はず。コイルの過去作をリイシューするプロジェクト、「スレショルド・アーカイブ」の一環のようで、ダニー・ハイドが関わっている模様。色々と気になる点が多いこの企画は、11月前半時点で8枚のCDがリリースされている。詳しくはこちら

Drew McDowall / Collapse
今回復刻されたコイルの音源は90年前後の作品が多く、ダンス路線に傾倒していた音源がメインだった。その時期の録音に参加していたのがドリュー・マクドウォール。ローズ・マクドウォールの元旦那さんで、PTVにも在籍していた御仁。そんなドリューの初アルバムがとうとうリリースされた。モヂュラーシンセならではのドローンが目立つ作品で、この手のフェチにはたまりません・・・が、聞きどころはそこぐらいとも言える、なんともマニアックな内容になってしまった。

Andrew Liles / Fckwit E.P.
gなかなかショッキングなタイトルとアートワークが目立つ作品。小曲集ながらもクオリティは高く、ライルズのハードロック好きが伝わる。今年のリリースは中々当たりが続いていて、凄いぞ。奥方らしき声が聞こえるけど、過去の素材がメインのようだ。

久石譲,山本正之 / 銀河疾風サスライガー音楽集
g主題歌集でも聴いていた曲の数々が良かったので、劇判もまとめてコンパイルされたこちらを買ってみた。何故かディスクユニオンが行なっていたキング系列の復刻企画で、J9は全て出ている。良くも悪くも80'sといった曲だらけで、一つのテーマのバリエーションが多いのも実にそれらしい。『ナウシカ』を手掛ける前年の仕事ということで、貴重な記録だ。ニューウェイヴ調な曲に紛れて、カントリー風のモンド・ミュージック候補な品も多く、気負いなく聴ける。「恋人たちの星まつり」はホントにホントに名曲だからして。

Oneohtrix Point Never / Garden of Delete
前作『R Plus Seven』が良かったOPN。新作は一転してやかましい作風になっていてちょっと拍子抜け。ワープ名物のノイズ乱れ打ちは苦手だったので、前作の小さい音でも楽しめる路線が恋しくなった。アルカもだけど、好きな人じゃないと入り込めないうえに、オーディオなどの環境も要求されるような敷居の高さがちょっと辛い。

former_airline / Ice / Silence / Death
former_airline今年前半にもアルバムが出ていたformer_airlineの新作。今回もカセットで、まだ本体が届いていないがデータで聴けた。前作同様、ポストパンク期に多かった痩せ気味で冷たいサウンドが目立つけど、決してインダストリアルという語だけでは括れない、あの時代の多様性を反映した部分が随所で確認できる。それは作り手である以前にリスナーであることが容易に想像できるし、親近感をも抱かせる温もりがある。5曲目はタイトルからしてドゥルッティ・コラムだ。様々なサウンドへのフェティッシュが淡々と詰め込まれる中、後半に突然ベースが歌い出しては機嫌の良い瞬間を見せてくれる2曲目が泣けます。画像からレーベルへ行けます。

Phew / ニューワールド
phew上がポストパンクのサウンドに対する愛着を見せたものならば、こちらはそれに邂逅したと言える。恐らくは望んでのものではないと思うので、回帰ではない。『秘密のナイフ』から20年。その間に『万引き』やプロジェクト・アンダークとしての活動もあったPhewだが、ここにきて、純粋なオリジナル・アルバムのお披露目となった。驚いたのはコニー・プランクのスタジオで録音されたあのサウンドのような、クラスターの冷気だけをまとったような音になっていること。こうならざるを得なかったのは時代のせいなのか、『万引き』が余計に恋しくなってしまう。サウンドも歌も素晴らしい。しかし、これを素直に祝福していいものだろうか。プロジェクト・アンダークに通じる、残された者へのメッセージは次々と発見されていく。エレクトロニック・パンク「スパーク」、西ドイツ流オペラ「また会いましょう」などなど、アプローチは多くとも殆どが歌ではなく遺言のよう。最後に歌われる「浜辺の歌」はどこから聞こえてくるのか、前向きに考えるのは自分には難しい。ジャケットに本人不在という、これまででは滅多になかったケース。カーテンをめくれば去っていった人たちが立っているのか、それとも...

Scott Walker / Scott 4
スコット・ウォーカーのソロで69年発表作。持ってたはずだけど、まともに聴いたことはなかったのでこの度聴き直してみたんですが、まぁ1曲目からデス・イン・ジューン
で驚きました。ダグラス・ピアースも影響を公言しているけど、ここまで一緒だとは。曲名も「ザ・セヴンス・シール」だし。古びることのないクラシック、歌い継がれるトラッドソングの何代目?なんにせよ、60年代が生んだ奇跡の一つ。Sunn O)))と組むのも納得だね。

Ron Morelli / A Gethering Together
気付いたら終わってたインダストリアル詰め合わせ。この配慮と愛嬌のなさは如何にインダストリアルというジャンルが脚色ありきのものかを知らしめる。そして、無造作に感じる本作が、あの手この手でブラッシュアップされたインダストリアルよりもそれらしいのだから気の利いたオチである。聴く度に記憶が消される、印象に残らないという毒を持つ。

Steroid Maximus / !Quilombo!
quilomboフィータスのプロジェクト、ステロイド・マキシマスの初アルバム。CDとデータで持っていたが、アートワークを手掛けていたThe Pizzが逝去したことを受け、アナログを購入した。バカバカしさもある暗黒大陸的カートゥーンはこのサイズで持っておきたい。架空の民族音楽やサウンドトラックを作るというコンセプトで出来たマキシマスは、もう10年もフィータスが劇判を担当している『The Venture Brothes』にも繋がっているもので、フィータスのルーツであるカートゥーン・サウンドから出来ている。安らかに。
Angels Of Light / We Are Him
何故かインポートしたっきりで放置していたAOL。マイケル・ジラがスワンズ活動休止後に立ち上げたプロジェクトですが、再結成後のスワンズの作風はこのプロジェクト抜きでは完成しなかったでしょう。ロックンロールの親でもあるカントリー、フォークを核としたサウンドはジラのルーツ。テンガロンハットがますます似合う。今聴くと、歌は完全に後期スワンズ。同じような歌詞をひたすら繰り返す洗脳スタイル。

MONOS / 360 DEGREES
MONOS コリン・ポッターとダレン・テイトのユニットであるモノス。ICRのbandcampで販売されていたもので、オリジナルは2001年のCDR。可愛らしい猫を模したパッケージだったそうだが、この度データでの購入となった。ICRはポッターのレーベルでもあるが、自身の作品や他のリリースも今後は充実していくのだろうか?内容はMONOSお得意のドローンで、テイトによるフィールドレコーディング素材をポッターがミキシング、更に加工したものだそうだ。金太郎飴になるのが宿命のジャンルだが、新調したヘッドフォンの性能のテストも兼ねていたため、連続で通して再生した。

NURSE WITH WOUND / Lumb's Sister
古くは80年代にChriss Wallis(スティーヴン・ステイプルトンの友人で、録音にも参加したことがある)の自主映画に提供した音源集だが、リマスター+若干のアレンジをもって再発。アレンジは恐らくAndrew Lilesかな。「How to Destroy Angels II」(コイルの名作リミックス)がちょっと新鮮なバージョンで登場。過去作の音ネタもちらほら。リチュアル・アンビエントなNWWという、今ではちょっと懐かしい内容故に新鮮なのだが、やっぱり飽きるのが早いかも(繰り返すようなジャンルでもないけど)。

服部克久,M.I.D. / 無限のリヴァイアス 1RE
99年のサンライズ製アニメ『無限のリヴァイアス』のサウンドトラック。全部で3枚ほど出ている他、ドラマCDも出ている。流石にそこまでは手を出せないし、劇中で使われた曲の殆どはこれ一枚で充分である。アニメの内容にふさわしい、鬱と躁を行き来する根暗トラックの数々。服部氏によるサウンドはオーケストレーション時々ドローン、後者は間違ってもヒーリングなんかには結びつかず、ビートのないものが殆どでとにかく暗い。エモーショナルなトラックは大体M.I.D.によるもので、時代を感じざるを得ないヒップホップ・トラックにむせび泣き。98年の『seirial experiments lain』にも通じるが、あちらのように節操なくジャンルに手を出していないだけ一貫して雰囲気が統一されており好印象。エンディング「夢を過ぎても」、M.I.D.による「Easy Living」は名曲。一枚絵を映したエンディングは、カメラがどんどん上に昇っていくのが印象的だった。平井氏の絵で馴染んだのはこれくらいだった。

James Blackshaw /Fantomas: Le Faux Magistrat
去年の暮れに出ていた新作。無声映画『ファントマス』の100周年を記念して作られたサントラにして、ライブ音源。今回はギター控えめ、ピアノの演奏が主になっている。サントラということで、オールインストで淡々と曲が進んでいくわけですが、去年出たカレント93の新作にも通じるクラシックのような佇まい。スワンズの来日公演で前座を務めたりしていたけど、どうしても日本だと評価のされ方がおかしい気がする。もっともっと評価されていいはず。

石野卓球 / Throbbing Disco Cat
飽きる程聴いているにも関わらず、なぜかiTunesに入ってなかった99年作。叩き売られていたものを購入した。アナログ版はミックスと収録内容が微妙に異なるし、シングルカットの『Montag EP』も同様。初回盤のボーナスDISC(リミックスや提供曲)ばかり流していることもあり、本編を通して聴いたのは久々。この時期はDJに没頭しているため、構成もノンストップ。『ベルリン・トラックス』がDJ向けに作られていたことに対して、こちらはコンセプトそのものがDJ-MIXだ。「Fuse」など突然展開が変わる構成は今聴いても鮮やか。トリオのカバーも気持ちが良い(アナログ版では長尺になっている)。ハードハウス、ミニマル、アシッド、そしてディスコと卓球のルーツを総ざらいする記念碑的な作品で、後に電グルが『フラッシュバックディスコ』に行き着くのも納得。

Aphex Twin / Computer Controlled Acoustic Instruments Pt2
昨年の『Syro』に続いてEPをリリース。内容はドラムマシーンとピアノによるサンプル集と呼ぶべきもので、10秒未満のトラックすらある。『Druqs』に近いが、意図的に完成させていない状態でリリースしているので全く違うとも言える。NWWの『サックド・オレンジ』的な素材集のようにも感じたが、コンセプトがそうだとしても一発ネタに近いイメージしかない。ありがたがるわけにもいかないし、結局「Xtalみたいな曲作れねーのかよ」という、リチャード本人が予想するようなコメントに落ち着いて忘れてしまいそう。リリース前は一部の評論家やメディアが「『Syro』より良い」と持ち上げていたが、それはコンセプトを評価したということなのだろうか。せっかくだし、DTMごっこの素材にしてみようか。

Nurse with Wound & Aranos / The Acts Of Senseless Beauty
Aranosとの共作。持っていたかどうか忘れたので買ってみたところ、普通にストックしていた一枚。Aranosとの共作は01年あたりに出たものがとても良いため、忘れてしまっていたのだった。Aranosのヴァイオリンがフィーチャリングされ、とても上品な1曲目がお薦め。コリン・ポッターも参加しており、Aranosの技巧とステイプルトン流のダブ・エディットに磨きをかける。ジャケットがそんなに可愛くないためスルーしがちだが、インナーのアートワークは良いもの揃い。UDでは100番目にあたるリリースだそう。

Andrew Liles / Andrew Lieles'S cover Girls
REAndrew Lilesのサイトから直に購入。5日ほどで着いたのが嬉しかった。今回は2011年から録音していたという気合の入った企画で、1曲ずつゲストの女性ボーカルを招いてカバーアルバムを作り上げるというもの。
選曲もアレンジも多彩で、ライルズ氏の趣味炸裂。コージー・ファニ・トゥッティやベイビー・ディー、奥方であるメロン・ライルズも参加。ドローン+鼻歌でなぞられる「ラジオスターの悲劇」、サビがウィスパーボイスで繰り返される「ロック・ボトム」、オースティン・パワーズでお馴染み「I Touch Myself」などなど、楽しすぎます。100部限定のメールオーダーエディション(ポスターと缶バッジ付)もあったけど、何故か予約しなかった。情けない。

Model 500 / Digital Solutions
モデル500の新作。最近の動向はサッパリで、この路線が安定なのか、回帰なのかは判断しかねる。全体的にホアン・アトキンスの音楽体験を復習するもので、きわめて個人的なバック・トゥ・オールドスクール。Pファンク、初期エレクトロなどを堂々とトレースする一方、ダブステップ的な部分もあっさりと消化していて嫌みがない。ボリュームも控えめで、ソウル・ミュージックのような後味の良さを持つアルバムだった。

Former_Airline / A Meteor Stream Attack on the Control Tower
former_airlineカセットテープを久々に購入。吟醸派なる国内のレーベルからのリリース。オールドスクールなインダストリアル・トラックが目白押しで、コレクター、好きな人が作ったとすぐに伝わる。音的なフェティッシュになる前のインダストリアル、つまり70年代末までのその筋が好きな人にはジャスト。例えるなら初期キャブスか。M-4はスーサイドに捧げたというもので、名曲「Dream Baby Dream」を思わせるシンセが泣かせる。ダウンロードコードが付いてくるオマケも嬉しい。画像にリンクあり。

Foetus In Excelsis Corruptus Deluxe / Male
90年にニューヨークはCBGBで行なわれたライブの録音。フィータス公式からデータで購入してみた。iTunes Storeでも売られれているのだが、ラストトラックが何故か1分ちょっとという不具合(としか思えない)があるので注意。編成はノーマン・ウェストバーグやマーティン・ビシといった面子でのライブで、ジャンクここに極まれり。2枚目が特に強烈で、最強のギャグナンバー「デス・レイプ2000」からの「パペット・デュード」(エルトン・ジョンの替え歌)が素晴らしく、シンガー・フィータスの真骨頂。この次の「スタンボ」やTADのカバーもかっこよすぎる。今では自身のルーツに忠実なキャリアを進むフィータスだが、後追いの人間でもこの暴走する車のようなテンションが恋しくなる時もある。ジャケットの、いかにも日本のマンガとわかるしゃくれ顎の兄ちゃんが眩しいが、その出展元は謎。後ろの新聞広告か何かの切り抜き共々検証するべきテーマだ。

THe Pop Group / Citizen Zombie
35年ぶりの新作というポップグループ。ここまでブランクがあると、どんな内容でも失敗してしまいそうになるのは大御所の悩みどころ。安易に1stや2ndを踏襲したローファイ・即興に偏った内容じゃなかったところはカッコいいけれど、どうしてもクリアすぎる音質が似合うグループではないので、そこがもどかしい。ジャケットもちょっと微妙だし・・・。もちろん、いつまでもレジェンドとして語り継がれるだけの存在よりは実際に活動する方が遥かに尊いため、ケチをつける必要はない。より活発なリリースが望まれる。でも真っ先にマークのソロを全部リマスター再発してほしいなー、なんて。1stのリマスターが凄かったので。

SCOOBIE DO / 4×20
こちら参照。

Aranos / Aah Man and Amen That
現時点ではAranos最新作。公式から購入した。手製の紙に梱包されてきたが、裏側にNWWの『Santoor』のアートワークがプリントされていてビックリ。内容はドローンもので、ちょっと拍子抜けしたところに、2曲目後半から女性の声が入り込んでくるなど微妙な変化の発見が面白い。日本は来たことないそうです。aranos
The Flying Lizards / Fourth Wall
1stばかり持て囃されるデヴィット・カニンガムの出世プロジェクト。前作がDIYに重きを置いた超低予算録音に対して、こちらは豪華なゲストとスタジオワークで作り上げた内容に。音はそれまで通りのローファイ風味だが、アレンジやウワモノに凝っているせいか一曲の完成度が非常に高い。同時に素人らしさが良いというアマチュア信仰に傾きすぎた同業者に釘を刺すようなニヒルな感覚もあり。カーティス・メイフィールドの「ムーヴ・オン・アップ」のカバーが秀逸。そういえばカバー曲だけで構成された3枚目『トップ・テン』は再発されないんだろうか?

WIRE / WIRE
セルフタイトルなのが彼ららしからぬ案だと思ったが、過去作を聴いてると全部「デザインの内なんやな」という安直な考えに傾いてしまう。それはそれとして、ワイアーは毎度古典的なロックンロールの編成でアンチ・ロックまたはパンクを行なうところに男気を感じるバンドなので、曲や歌詞ではなくアルバム単位で嗜みがち。「イン・マンチェスター」なんて叙情的な内容なんだけど、彼らなりの制約で作っているだろうから「作られた」それなんですね。そのそっけないドライな感覚から生まれたものにエモーショナルな空気を感じてしまうのが音楽の面白いところなんだろうけど、流石に『ピンクフラッグ』や『154』などをさらって聴いた身としては耳が飽きてしまいがち。歌詞を翻訳して彼らのルール・コンセプトを想像するのが良い付き合い方ですね。意外と時事ネタ率高いのは流石ポストパンク。

Nurse With Wound & Graham Bowers / Mutation
NWW新作はまたもグラハム・バワーズとのコラボレーション。半端にIDMというか、流行もの(といっても00年代のそれだが)に接近しているような内容なのでかなり違和感がある。『Parade』でも似非ブレイクコアみたいなところがあったが、NWWでやる必要はないと感じる。グラハム側の要望なのだろうか?60部限定のArt Editionもあったが、すぐに売り切れてしまったので間に合わず。ここ最近はライブ音源が安定しているため、スタジオワークに対しては保守的になってしまう。

Jac Berocl ,David Fenech,Vincent Epplay / Antigravity
ジャック・ベロカル目当てで買ったが中々面白いフリージャズの断片集。トーキング・ヘッズのカバーなど、変化球だらけに見えますが、奏者たちそれぞれのバックボーンが見て取れます。「ロックンロール・ステーション」のセルフカバーは期待せざるを得ないが、逸脱しまくった内容で流石に一筋縄ではいきません。Blackest ever Blackから出ているのもなかなか...

Marc Almond/ The Velvet Trail
知らない内に出ていたアーモンドの新作。シャンソン、ショウビズという時代が生きていた頃のキャバレーを自分なりに復活させたパーソナルな内容と感じる。たとえ艶やかで、音が良すぎる録音だとしても、古ぼけたフィルムやレコードでしか知らない、かつての時代を想像することは可能だし、それがアーモンドの所業でもある。都合のいい部分だけを回帰させまくりな昨今、アーモンドによる古のポップ・ミュージック再演は作為がないように思う。特別版はDVD付らしい。

NURSE WITH WOUND,Organum / a Missing Sense / Rasa
g名門のRRRecordsが取り扱っているNWWカセット。新品の状態なので値段も相応に安い。音源自体も多分オリジナルなので、ここは盲点でした。
さて、これはオルガヌムとのスプリット名作で、自分も同人誌のタイトルに拝借する程には気に入ってるものです。オリジナルとCDは持ってるから、あとはテストプレス盤さえ揃えばコンプリート。内容に差異はないから、意地みたいなもんですけど。

Current 93 / Dawn
C93初期の名作。ネオフォーク路線に傾倒する直前で、スティーヴン・ステイプルトンのコラージュ技術が爆発する一曲目がGOOD。今回買ったのはリイシュー盤だが、正確な年数は未チェック。08年の物は2枚組(アンドリュー・ライルズによるリミックス付)だが、これは1枚だけなので92年くらいのものだろうか。ジャケットは黒バックに赤プリント(オリジナルは白バック)で、1曲目はオリジナル版とCD版で異なるmix。こちらはなんと二つとも入っていてお得だった。コンピレーションに入っていた名曲「ア・デイ・イン・ドッグランド」も嬉しい。1曲目のオリジナルにパパス・アンド・ママスが使われているのは有名。

Tei Towa / CUTE
割と早いペースでリリースされたテイ・トーワ新作。流行を無視するように意識しているせいか、過去の作品を想起させる曲が多く、個人的には嬉しい。00年くらいのテイさんの作品は当時の友達の兄が聴いていたこともあり、おぼろげにも記憶に残っている。あの体験がなかったら、今のような趣味にはなってないだろう。そんなどうでもいい思い出が蘇る曲の最たるものが、ユキヒロ氏をボーカルに招いた「ラヴ・パンデミック」。音は格段に良いが、やっている曲は90年代(=過去の時代のアップグレード)なので、リマスターされたクラシックを俯瞰するような印象に。

BUDDHA BRAND / 病める無限のブッダの世界〜Best of the Best〜
5月に急逝したD.LことDEV LARGEこと大峠雷音etcを偲んで購入。久々に聴くと改めてサンプル狂というか、作り手以前にコレクターだったことを実感する。アートワークへのこだわりも同様で、そこに自分は共感できたからこそ、Bなこの人に入っていけたのだと思う。日本語なのに何言ってるのかわからないのは流石。「大怪我3000」はオリジナルより先に聴いたので懐かしさもあり。ゆっくり休んでください。

Thighpaulsandra / The Golden Communion
後期コイルを支えたタイポールサンドラことティム・ルイスの新作。10年近いスパンを経て作られた本作はなんとエディションズ・メゴからのリリース。後期コイルが完全にグリッチ、エレクトロニカといったジャンルに足を突っ込んでいたこともあってか、この手のジャンルのレーベルも欲しがっていたんでしょうね。さて、内容ですが、多彩なルイスのキャリアやコイルの血肉となっていた音楽が結合した大傑作です。2時間近い内容は疲れますが、片面ずつでもいいから爆音で聴きましょう。「ミゼリー」の展開には思わず手が止まりました。広告によくある「あらゆるジャンルを投げ込んだ」的な安い作り方じゃなくて、こちらが多数のジャンル・音楽間にある共通項を見出せる内容です。音楽に歴史があるということを痛感します。そうなるように導いてくれるルイスの手腕なくして、後期コイルはあり得なかったでしょう。たぶん今年最強。

Andrew Chalk / A Light at the Edge of the World
チョーク新作。相変わらず手元に置いておきたくなる手製スリーヴ。限定版もあったらしい。40分ちょっとのドローンが1曲。こぼれるように入り込むピアノは今年出たロバート・ヘイの作品も連想してしまう。リリースも同じサイレン・レコーズからです。ここ最近は情緒豊かというか、『ヴェガ』のようなクールな印象が薄れていて個人的には好き。ドローンはフラットでなければならぬという意見もあるし、それもその通りだなんて思うわけですが、こうした作品に励まされるのは自分のメンタルが欲しがっていたということかな。「世界の果ての光」という名前も良いですね。

Benoit Pioulard / Sonnet
brainwashedのレビューで知った作品。ジャケットが良かったので試しに買ってみたが、まぁ普通のドローンで、コメントに困るそれだった。まずオーディオ環境にかなり左右されるジャンルとなってしまった世界なので、その敷居の高さをカバーしてくれる要素が内容に見受けられれば良かったのだが、本当の意味で終始同じなので辛い。ハズレも多いジャンルにまで変容したのだということを再認識させられる。

New Order / Music Complete
久々の新作。ピーター・フック脱退後は初となるオリジナル・アルバム。ミュートからのリリースには驚きました。全盛期のダンス狂、『ゲット・レディー』的ギターロックのどちらも深入りしなかった自分ですが、『シングルズ』で「ビザール・ラヴ・トライアングル」と「リグレット」を狂ったように再生する時期はありました。3年くらい前のライヴ盤も非常に良かったので、アルバム単位ではあまり評価できないバンドというのが率直なところ。しかし何故だか期待は大きかった一枚で、リード曲の「レストレス」もなかなか良かった。内容はかつてのダンス狂時代よもう一度、という安易な路線になっておらず、年相応の渋さが光る小粒な曲が揃っています。EDMのような景気の良いサウンドじゃなくて良かった。サムナーの自伝とセットで長く付き合いたい一品。いずれ感想は別で書きます。

Nurse with Wound / Solliloquy For Lilith
g88年名作のリイシューですが、03年くらいに出た3枚組BOXと中身は変わらず。違いはケースのプリントが赤になっているだけで、完全にファンアイテムです。すぐになくなってしまいそうだから買ってみたけど、意外とプレスしている様子。NWW公式のショップから購入したのだが、ポンドではなくユーロなのがありがたい。

Rosse McDowall / Cut with the Cake Knife
奇しくもマクドウォールのお二人がリリースした2015年。ローズは過去に出した作品集に追加音源を加えてのものでした。ストロベリー・スウィッチブレイド用の音源もあるそうで、1曲目の「チベット」から涙ナミダの泣きメロ。元々はパンク・バンドという出自だが、そのルーツは60年代。バリバリのサイケデリックの娘であるローズが同じ60年代の子供であるジェネシスPオリッジやチベットらと交流を深めるのは必然だったのかも。bandcampで買いました。

Curter Tutti Void / f(x)
我らがカーター・アンド・トゥッティがファクトリー・フロアのメンバーと組んだこの企画。なかなか好評なようですが、聴くのは初めて。最近の流行というか、トレンドの一つにがっちりハマった快作。これはBlackestever Blackから出ていても違和感なし。フロアでも行けるビート感覚とギター「のような」ウワモノは奇しくもTG時代のかきならしドローンそっくりだった。CDとデータはアナログよりも1曲お得。ラストの「f = (2.7)」がGOOD!!

POLTA / SAD COMMUNICATION
POLTA90年代は小学生だったので世界が狭く、偏った認識があった。で、上の世代の人たちの想い出を聞いている内に勝手にイメージが固まってしまった。POLTAはそんなイメージそのままの曲ばかりで、知らないのに懐かしいと感じてしまう不思議が何よりの魅力に感じた。1曲目「遠くへ行きたい」と、続く「みそじれーしょん」、「宇宙」が秀逸で、都合の良いヴィジョンだけで形成された我が90年代がフラッシュバックする。女性でないし、三十路でもない(わけではない)、そもそもまともに過ごしていないのに何故?当時から、そして今も自分がお洒落な年上の人が聞いている音楽だと思っていたギターベイダー、セシル、宅録時代のスネオヘアー、杉本清隆、セラニポージらに並ぶポップグループがリアルタイムで目の前に!!

Steven Stapleton and Crestoph Heemann / Painting with Priest
09年にイタリアで行なわれたライブ音源を素材に作ったもの。久々に行なわれたヒーマンとのコラボだが、平坦なドローンに終わらず、コンクレート路線も顕著でなかなか楽しめる。CDとVynylではmix違い、更にはvynylは赤盤が枚数限定で存在。裏ジャケのイラストは一発でヒーマンとわかります。配給は最近大人しかった、というか音信不通だったRobot Records。

Floating Points / Elania
フローティング・ポインツのことを知ったのは本当に最近で、これが初アルバムということも聴いてから知ったのだった。ジャズや現代音楽、一昔前にとっての「実験音楽」がベースになっているせいか、何処か人懐っこさもあり、とっつきやすい。楽器はじめとする環境が違っても構成に共通した骨格が見える。そういった音楽が好きですね・・・と勝手に満足した作品だった。再生時間も控えめで良い。流行だとか気にせずにBGMとして接せるような人間のままでありたいと思う。

Loop / Array 1
ロバート・ハンプソン率いるサイケデリック・ロックの古株が再結成。80年代末から90年代頭にかけて、俗に言うシューゲイザー周辺のサウンドに加わっていたが、すぐに停止。ハンプソンはメインとしてのソロ活動に励むほか、オルガヌムに協力していたことでも知られている。バンドとして再結成してのEPだが、当たり前となったスタイル故に慎重な姿勢が伺える小粒な曲が揃うが、ラストのノイ!もどきでテンションが上がります。

HONDALADY / SAMPLING MADNESS
ホンダレディの新作。冒頭からおっさん丸出しのイントロが炸裂し、使うネタからジャングル重視のトラック、そして電グル「N.O.」の歌詞が一生続いているようなペーソスまみれの世界観に涙必至!「らったった」はシメが特に秀逸。着地点が一貫してナードコア以前のナードコアな姿に狂気ではなく、勇気を感じます。色々とヤバいジャケットはマッシュアップで大人気、MOUNTAIN GROUPHICSさんです。

Swindle / Peace Love And Music
スウィンドルの各公演を収録したもの・・・と思いきや、各国に影響を受けて作られたアルバムだそうだ。各局にはテーマとなっている国で使われる言語でタイトルが唱えられている。日本語で「愛と平和と音楽の使者、スウィンドルです」と聞こえてきてビックリ。グライムというかダブステップというか、その手のサウンドとジャズを合流させた仕上がりで横ノリを共通項にBPMが変わりまくる構成が爽快。「上海」では中国のトラディショナルっぽくするなど、国ごとのアイデアも面白い。ジャズは様々なジャンルと合流してきたが、こうした融合の結果がポップになるのは実に英国らしい。

Grimes / Art Angels
グライムス!4ADから出ていたのも頷ける前作だったが、今回は売れ線満開なハッピー・サウンド。もちろん明るい曲調ということではなく、ネガティブも楽しんでしまおうというヤケクソな気合が伝わる。それが転じてポップになったというわけだけど、昔からのファンはどうなんでしょうね。自分は前の方が良かったなあ。過剰な期待をする程のファンではありませんが、好きだと公言していた芸能山城組のようなサウンドになったら入信します。

The Orb / Moonbuilding 2703 AD
オーブ新作は壮大な長尺トラックによるもので、1曲の中で曲調が少しずつ変わっては戻っていく様がダンス・ミュージックらしい。それはシングルがフロア用に切られたり、矢継ぎ早に使われるダンス・チューンではなく、テクノの外皮がまだブヨブヨだった頃を思わせる。ビートこそあるが、踊る時には適さない。今年急逝した横田進のこともあってか、氏の『サクラ』と共に侘しい気持ちになってしまうのだった。古今東西、ずっと愛され続ける月に乾杯。