SCOOBIE DOが活動20周年を記念してベストアルバム『4×20』をリリースした。インディーズ時代から最新アルバムまで横断し、果てはカップリング限定や初期ライブ音源までも収録する大盤振る舞い。資料性も高く、長らくカセットテープを愛でていた筋金入りのファンにとっても嬉しい内容だろう。 一部の例外(シングル『悪い夢』収録のビートルズのカバーなど)はあれど、手に入れるのが難しい音源は殆どここでサルベージされたことになる。更にPVを網羅したDVD付である。
2010年に出た『ROAD TO Funk-a-lismo!』と曲被りが少ないのも嬉しい選曲だ。後は日比谷野音ライブのDVDを再販さえあれば・・・と欲望は尽きることがない。

あまり語られることがないバンドだけに、こうしてインターネット上に感想を残すに至ったわけだが、昔見ていたファンサイトは軒並み消えてしまったのだろうか・・・?
なんにせよ、邦楽バンドでここまで長くファンを続けているものは自分の中では数少ない。自分のため、そして偶然ここにたどりついてしまったファンのために、極力無駄知識を詰め込んでみた。 データベースも作るつもりが停滞したままなので、なんとかしたいところだ。

Disc別に色分け。橙:1 緑:2 茶:3
夕焼けのメロディー 同名のデビューシングルから収録。てっきりメジャーデビュー時のそれが入ると思っていたため、このK.O.G.Aバージョンが入るのは意外だった。7インチでも出ており、これがスクービーの実質的なデビューシングルとなっている。メジャー版と比べてテンポが遅く、そもそもアレンジ自体が大幅に異なる。アルトサックスまで導入されているのが特徴。ルーディーをキーワードとしていた頃の貴重な記録にしてマスターピースでもある。
December Song ここから『Doin Our Scoobie』。この曲はライブでも定番だったのか、過去曲中心に披露する「DOの部屋」でも気持ちよく演奏される。キャリア初期を彩る名曲で、ギターが終始いぶし銀です。
きまぐれ天使 あまり話題にならないが、後半のコヤマスキャットが秀逸な一曲。今回の収録には漏れたが「のら犬のブルース」とセットで楽しみたい。アルバム通して、録音含めてヴィンテージな環境だったらしい。今回の収録にあたって、これらの過去曲はリマスターされているのもポイント。
悪い夢 なんとシングルバージョンで収録。7インチでしか出ていなかったもの(B面のデイトリッパーは『EXTRA FUNK-A-LISMO』に収録)だけにCD化は非常に嬉しい。微妙にアレンジが異なる他、終盤のコヤマの台詞がアルバムと違うのに注目。詞は例に漏れず、女と男の一晩、男が勝手に抱くトラウマないしは神格化の世界である。
No.3 2000年シングルより。本人ら曰く「一番売れなかったシングル」だそうだが、アルバム未収録のものばかり入っているので、ファンには貴重。安田謙一さんがRCサクセションの「三番目に大事なもの」と比較していたが、頂点を目指すあるいはそこに到達できない人への賛歌である。「太陽はまぼろし」などのカップリングの方は流石に収録から漏れた。この曲はライブでも定番だ。
Little Sweet Lover ライブと言えばこれ、今も昔もキラーチューンとして君臨する曲。生だと圧巻なMOBYのプレイや、舌足らずに韻を踏み続けるコヤマも見もの。ライブのアレンジに慣れすぎていて、とても遅く感じる。
勝手にしやがれ ここから『ビーチパーティー』。アルバムの幕開けを担当する定番曲で、歌詞はスクービー史上でも屈指の意味不明度。そして、奇妙なことにかっこいいのであった。意図的に悪い録音を施しているアルバムだが、それが津Ý身になっている好例。
キミとオレ アルバム『ビーチパーティー』収録曲だが、これは7インチで出たシングルからの収録である。キャッチーな歌ものを意識し始めた頃の曲で、「こういうのもやっていいんだ」とマツキやコヤマが語っていた記憶。『ビーチパーティー』は前半4曲が秀逸すぎて、当時のバンドに何が起こっていたのか、と知りたくなる。「夕焼けのメロディー」に匹敵する「スクービーらしい」曲の骨格になった。
アフィルグ I feel good.の略称。JBや和田アキ子をロックとコネクトするのがコヤマの所業の一つ(と勝手に思っている)であるが、これは前者の例の頂点だろう。終盤の「one more!」に痺れる。
OH YEAR! これもライブでは定番。ボーカルとコーラスの掛け合いが秀逸。イントロにこだわっていた時期なのか、一発で持っていかれるそれに、研鑽と苦悩が見て取れる。
Get Up メジャーデビューシングルより。名刺であり宣誓でもある曲。先輩バンドと比べられることへの不満もちらほら?『BREAK ROCK』にはイントロが異なるバージョンが入っている。これと「Ride On Time」のカバーはセットで聞きたい。
The Thing 2010年のベスト盤にも入っていた曲で、地味に人気があるようだ。同じような歌詞を繰り返すところも"グルーヴィー"。わかりやすく、ライブ向きなのかも。
ゆうべあのこが 『ビーチパーティー』収録曲だが、メジャーデビュー時のリライト版を収録。この時期では個人的にこれが一番。ハッタリが薄まり、負け犬の美学(自己陶酔)にもフォーカスしていく。メロディの容赦ない甘さと相まって、唯一無二の世界へ。
路上のハードボイルド ここから『BREAK ROCK』。押しつけがましい歌詞が似合うには、自分たちが言われる側に近くなければ駄目、と言わんばかりに泥臭く、もがくようなコヤマのボーカルが泣ける。スポーツカーが出てくるPVだった気がする。
左胸のボス まず曲名がかっこよすぎる。限られたコードを繰り返すシンプルな構成で、テンポ命の曲。終盤のコーラスのようなものは生声とシンセで作ったそうだ。
最終列車 メロウ路線でも屈指の完成度を誇る一曲。ポップであることの強みを意識し始めた時期の作品でもピークに達するものだ。ライブでは、1番がリズム隊なしで歌われるスタイルが定着。
つづきのメロディー 「サンセットグルーヴ」がない、と思っていたが、2010年のベスト盤と極力重複を避けたのだろう。これはアルバムのラストを飾るもので、エンドロールが毎回素晴らしいスクービーらしさを象徴する一曲。2番からビブラフォンやキーボードが目立ち始めるのが◎。テーマはもちろん失恋。
風の恋人 ここから『Beautiful Days』。シングルを切りまくっていた時期で、これもシングルからの収録となった。GSを咀嚼していた初期と違って、フォークであるところに注目。マツキが過労で休養している時期だったせいか、コヤマが歌詞を多く担当している。アルバム版ではたくさんの楽器がフィーチャーされ、よりポップに。ついでに主張しておきたいのが、シングルのカップリングにあったFREETEMPOによるリミックスで、これは必聴です。
茜色が燃えるとき 個人的にスクービーを知るきっかけになった曲だけに思い入れも強い。そして、彼らのキャリア上でも一際異なるカラーを持つ問題作にして大傑作でもある。コヤマによる歌詞はニヒルの極みで今一度、こんな詩を歌って欲しいとすら思う。ヴァイオリンは第2の旋律として、ゲストにふさわしい名演を見せる。
ラストナンバー
~Beautiful Down~
これはアルバムからの採用。キーボードやパーカッションのゲスト参加が著しく、アルバムに参加していた東京スカパラダイスオーケストラと共振する。汗臭いライブハウスではない、「ダンスホール」を歌った名曲。「楽しいことが多すぎただけ」というラインに励まされる。
パレード シングルを出すならば、それぞれ異なる個性を持たねばならぬ、と考えたかは知らないが、過去の曲と比べてメロディの比重が少ないのが珍しい。歌詞は応援ソング丸出しの辛さこそあるが、鳴かず飛ばずの淵ギリギリで踊るスクービーが歌うなら話は別。このパターンは後の『ミラクルズ』でも爆発。
Beautiful Days アルバムはこれまでのスクービーのそれと比べると、よりつややかにコーティングされているが、それまでの曲とアルバムを繋ぐのがこれ。leyonaのコーラスが良い味を出している。アルバムでは「美しい日」とセットで愛聴。
恋は魔法 これまた能天気なほどに明るい歌詞だが、コヤマが歌うと膝の震え含めてのポジティブさが心強くなる。テーマはまたまた失恋か、はたまた告白か。「Urban Souls」など、このアルバムは佳曲揃い。
また逢う日まで エンドロールものの中でも特に壮大な展開を見せる一曲。豪華なゲスト楽器隊が集結し、コヤマの歌声を支える。「最終列車」のワードも再び登場。
PLUS ONE MORE ファンキー4にプラスワンモアというと、シュガーヒル・ギャングらを連想するが、コールアンドレスポンスから成り立つ参加型の曲であることからして、そこからの影響は明白。ミニアルバムからの収録で、ライブではお馴染み。
What's Goin' on RHYMESTARとのセッション。宇多丸もお気に入りの一曲。『Funk-a-lismo!』にはスクービーのみのバージョンも収録されている。ドラマの主題歌だったらしい。最近のライブではマツキがギターを弾きながらラップを披露する。
Back On 「アフィルグ」の弟とも言えるキラーチューン。ひたすら同じことを嘆願する歌詞が曲とリンク、無我夢中を体現した時間を作り出す。ライブでもあの手この手のアレンジが加えられる。カッティングギターを堪能したい人にはこれ一曲。
Disco Ride ここから『SCOOBIE DO』。バップ、スカでお馴染み「チキチキ」、「ハイ」といったコールが楽しめるダンスチューン。10年目の正直と歌ったアルバムからの採用か、ヤケクソすぎる曲が眩しい時期。
やっぱ音楽は素晴らしい これもRHYMESTARとのセッション。元々はライムスターの『ヒートアイランド』収録の「音楽は素晴らしい」だが、こちらはスクービー側によるアレンジがなされている。SOIL PIMP & SESSIONからタブゾンビと元晴が参加。自身らも「ファンク中毒患者」と名乗るように、フレーズ一つ一つに参照元がある・・・気がする。こちらも近年ではファンキー4がラップパートを演奏しながら披露する。
トラウマティック・ガール ここからチャンプレコードの時期に突入。最初の一歩故に、気合が入る以上にピリピリしているムードに満ちている。メジャー在籍時代のプレッシャーがまだ残っているとも言えるが、この危ういバランスがまたカッコいいのも事実。プロデュースは向井秀徳。
ロックンロールは未定 ライブの定番。歌詞は単純すぎる上に全く意味不明だが、盛り上がる。「勝手にしやがれ」や「Back On」の子供。「見切り発車オーライ」という歌詞通り、出たとこ勝負の怪作。
真夜中のダンスホール シングルカットされてもおかしくない程にポップな仕上がりを見せた曲(後に7インチ化)。個人的にチャンプレコードになってからはこれが一番のお気に入り。横ノリのリズムとベースの独演が最高。フロアで踊る人よりは、後ろのカウンターやラウンジで寝ているだけの人を励ましている。
MIGHTY SWING 『SPARKLE』より。売れ線、というか90年代風のテイストに少し傾いた作風が多かったアルバムだが、この曲は自分たちのルーツとの間に立つバランスを持っている。低予算PVも記憶に新しい。タテ乗りロックに長けているのはさすがのファンク中毒患者。
バンドワゴン・ア・ゴーゴー 『何度も恋をする』から。近年のスクービーの路線を決定づけた名作アルバムで、彼らのルーツの中でも日本のそれをメインに立ち返った作風。ファンクしていた頃のスクービーが好きだよ・・・というファンは少し引いてみて、彼らの活動を振り返っては如何か。2010年に出たのが哀しくも絶妙なタイミングだったと今になって思う。
イキガイ モータウンのリズムだが、「歩いて帰ろう」と形容されることもある(らしい)。怒髪天ばりの愚直さを見せる歌詞と優しい曲調が、泣き笑いを誘う。
ミラクルズ 『ミラクルズ』より。バンドのルーツとこれまでのライブで磨いた結束が結実した名作。震災後ということもあり、歌詞の励ましっぷりが強烈だが、不気味なほどに艶やかな曲にはない生臭さがここにある。レコードをプレイしている間にしか発せられないメッセージだからこそ、この歌詞なのだと思う。もちろん、ジャクソン5の「I Believe in Miracles」が由来だが、その言葉にすがる弱弱しさにこそ希望を見る。
恋の彗星 早すぎるテンポで楽器隊が爽やかに並走する佳曲。ベースとギターが同じコードをなぞるアンサンブルが魅力。コヤマのボーカルの透き通りっぷりに涙。
かんぺきな未完成品 『かんぺきな未完成品』より。ガレージロックへと回帰した作風で、ソウル・歌謡曲に傾倒していた時期に飽きていたファンにとっては朗報か?ゆらゆら帝国の「すべるバー」っぽいと言ってはいけない。遡れば、スーツを着る以前のバンドがやっていた曲が辿り着く。
結晶 『結晶』より。地力をそのまま示したようなアルバムで、完成したデモテープというべき、オーソドックスを極めた内容。小粒な作品が多いだけに、この曲以外のアルバム収録曲の方が印象に残っているのだが、リード曲としては適格。
新しい夜明け 今回のための新曲。スカパラホーンズが参加したのは『Beautiful Days』以来。そのせいか、懐かしさを感じるが、今のスクービーはメジャー時代にあったスリリングなムードではなく、より自然に歌い上げる。かつて理想として歌っていた像に自分たちが到達したことを高らかと歌い上げる。アウトロのギターリフはどこか懐かしい。PVは彼ら御用達「洋服の並木」で撮影。
夜明けよ急げ ここから最初期・シングルカップリング・ライブ音源DISC。はっきり言って、ここだけでも今回は買う価値がある。妙に音が良いのはUKプロジェクトのスタジオだからか?コヤマの歌声が今よりも老けて聞こえるところが、如何にもマニアたちのバンドといった風情。
わがままなあの娘 和モノを冠するにふさわしいブルース大作。いなたさすら感じるギターとワウにむせ返りそう。きまぐれ天使」というワードが出ていることに注目。
空っぽの言葉  『ミラクルズ』や『かんぺきな未完成品』の曲と比べるとあまり浮いていないのが驚き。サビの歌い方は流石にショッキング。ザ・ヘアにも近い、エキゾとすらいえるムードに幻の昭和を見る。
ロングスカート・ベイビー・ブルース バンドのアンサンブルが強調された曲でずっしりと、しかしタイトなリズムが冴える。イントロが長めなところも渋い。「お似合いさ、ベイビー」は生で聞きたい。
女と男の世界 曲名が凄すぎるが、歌詞が棒読みのように感じるのは当時のバンドの年齢もあるからか?一心不乱に刻まれるドラムは、既にリズム隊の成熟が伺える。バックのギターが何気に良い塩梅。
裸の天使 「Sister」の原型にも感じるイントロが印象的な曲。『Doin Our Scoobie』に近い曲調になっていく時期。
恋人はそれを待ちきれない シングル『キミとオレ』より。今までは下北沢Queでのライブ音源でしか音源化されていなかったが、めでたく収録。吐き捨てるようなコヤマのボーカルとハーモニカが最高。
真夜中のヒーロー シングル『路上のハードボイルド』から。威勢の良い歌詞はデビューして間もないからか、猪突猛進と形容できるテンションは貴重。途中で無音になるのは「Little Sweet Lover」と共通している。
冷戦 カップリングらしく、バンドの通な部分を提示する曲。コテコテなファンクで、コヤマの色気が増強されていく様を中継するような内容。ゴングの音は完全に趣味です。
R134 シングル『ラストナンバー』より。ラジカセで録ったような音、というかラジカセで流れ来る音+波の音と書いた方が正しいか。謎の一曲である。しかもインスト。
八月の天使 マツキお気に入りの一曲で、夏を象徴する名曲である。山育ちで海を知らない自分にとって、都合の良い海のイメージを植え付けた罪深い曲。サビでキーボードが出張ってくるのがポイント。
サマーダウン 長尺インストナンバー。コヤマのハーモニカがここまで主張する曲も珍しい。あざといくらいに情景をイメージさせるのは山下達郎に匹敵する仕事というほかなし。最後のコーラスも最高です。
3rd Season シングル『風の恋人』より。秋に出たせいか、正に季節を象徴するインストナンバーとなった。ハーモニカはコヤマの第2の歌声だと実感できる。今聴くと懐かしさにまみれてダウナーになります。FREETEMPOとのスプリット12インチには別バージョンが入っている。
Funky Way 三十路を迎えた自分たちへの宣誓でもある曲。シングル『パレード』のカップリングで、同曲の弟とも言える。
おんな 怒髪天とのスプリット『恋のレキシカン・ロック / おんな』から。日本の歌謡曲、というか怒髪天の影響が強い異色作。この企画は互いの曲をカバーし合うなどの試みも楽しく、両者のファンならずとも必聴。
木曜日のユカ ライブ音源。最初期のもので、ライブの告知から始まっている。音の悪さが最高で、貴重な時代を切り取った証拠物品。かなりサイケデリックで、ザ・ヘアの強い影響がうかがえる。
Com'on Sunset Back 『ビーチパーティー』時代のライブより。劣悪な録音でしか生まれ得ぬ、余計なノイズによるグルーヴが最高。ハーモニカの不安定な感じも生ならでは。MOBYが何故かハッスル。
Oh Yeah! 続きでライブ音源。今と違って、満場一致で受け入れられていない空気が伝わってくる。ぎこちなく足早な演奏がフレッシュだ。前の曲からノンストップで続いていく構成に震える。
アフィルグ そして、これも前の曲からシームレス。ライブで生まれ変わることを覚えた時期の記録。
勝手にしやがれ ラストを締めくくるのはこの曲。2分弱に詰め込んだスクービーの意地・・・ねずみ花火のごとく走り回った時代があったからこそ、今がある。

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