備忘録/2016聴いたブツ/随時更新

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irr.app.(ext.) / Matériaux Déplacés
irrapp

年末に届いたirr.app.(ext.)の2枚組CD。過去に録音した音源をコンパイルしたもので、それぞれ長尺の大ボリューム。少しずつ聴きはじめたのだが、いつもの即興+ドローン。目当てはブックレットのお手製イラストだったので、持ってるだけでほぼ満足かも...。気になったのは「This Piano Can Think」で、これ、NWWの曲(というか素材)の名前からとってますよね。あちらは「This Piano Can't Think」だったけど。どうでもよいですが...。

Stereolab & Nurse with Wound / Simple Headphone Mind
head
これも年末に届いた。ジャケットが最高で、中身もクール、何度も聴いたステレオラブとNWWの共作。アナログ新品をNWW公式からゲット。ビニールの袋なので、封を切ると必然的にイタんでしまうというニクイ仕様。古いものを持っているけど、これは開封せずにずっと保管しておきます。
Sunn O))) / Kannon
買って一度聞いたきりで放置していた新作。短めの再生時間が嬉しいと感じるのは、この手のサウンドに飽きたからだろうか。いやいや、以前のスコット・ウォーカーとの共作が良すぎたんだな。でも、アレの後なんだから、これくらいアッサリしていた方が良いのかも。
David Bowie / ★
blackstar遺作となった衝撃の一枚。エポックメイキングなサウンドも相まって困惑気味だが、良いアルバムなのは確かだ。お粗末ですが、別枠で書いた文はこちら
Andrew Chalk / 狂詩曲の波間に浮かぶ四十九の風景
欲しかったけど手に入らなかった一枚をようやく入手。49のドローンの断片が詰まった作品で、従来の長尺とは異なる印象。気軽に聴けて、とても良い。一枚ごとに微妙に柄が異なる手刷りの染め物を見ているような・・・わかりにくい?なんにせよ名作でございますな。
bakemono / shed leaves
bandcampで見つけた作品。典型的なローファイで、タイトルから音まで、東洋的なテイスト。長尺のドローン『whiteface』ともどもダウンロードした。こうしたジャンルが水のように感じられる時代である。NYPなので、こちらからどうぞ。
Nature And Organization ‎/ Snow Leopard Messiah
マイケル・キャシュモアによるプロジェクト、ネイチャー・アンド・オーガニゼーションのアルバム2枚をコンパイルした編集盤。ボーナストラックにはロッド・マッケンのカバーまで入っており、素晴らしいリイシューだ。90年代半ばくらいのカレント93を支えたのは間違いなくキャシュモア氏で、あまり音沙汰のない御仁だけに今回の再発は嬉しい限り。内容はカレントやデス・イン・ジューンに通じるフォークものだが、2枚目の方は静謐なピアノとチェロといったわずかな編成だけのストイックな内容。鬱を患っていたキャシュモア氏はセラピーとしても録音に励んでいたという。長きに渡って聴ける作品だ。歌はゲストたちに任せているところも渋く、D.TibetやダグラスPが歌い、ローズ・マクドウォールもコーラスで参加している「マイ・ブラック・ダイアリー」は名曲です。
METAFIVE‎/ META
高橋幸宏、テイ・トーワ、小山田圭吾、砂原良徳、ゴンドウトモヒコ、LEO今井というスーパーグループによるプロジェクトのアルバム。各々の過去曲をなぞるような企画モノではなく、ちゃんとそれぞれが新曲を作っている時点で凄いのだが、クオリティも相応のもので驚いた。先行曲「ドント・ムーヴ」のような高速ファンクから英国ロックもどきまで披露されているが、狙ったわけではなく身体に染みついた結果として出ているリラックスな出来栄えに安心します。個人的に砂原氏が担当した「Luv U Tokio」と「Whiteout」がお気に入り。
SCOOBIE DO / アウェイ
昨年の野音ライブが良かったスクービー。勢いはそのまま、というか自然体で作られたアルバム。売れてるのかそうでないのか微妙な立ち位置だが、ここまで来ると「最高傑作」といった賛辞を贈るようなバンドではないと思う。アルバムよりもライブ、更に俯瞰して普段の立ち振る舞いそのものを見るべきバンドじゃないかね。とはいえ、リーダーによるメロディ仕事は素晴らしい。一発ネタの「ファンキー獣道」もちゃんと作っててサイコ~。ライブDVD『ダンスホール野音』は結構な速さで売り切れになっており、買っておくべきだったか。
初恋の嵐 / セカンド
このバンドについては最近知ったために、ボーカルが急逝してから長い間活動停止になっていた、近年活動を再開していた、過去の曲のリライトもあるなどの情報をなしに購入した。理由はスクービーのコヤマシュウがゲストボーカルで参加しているからだが、それ以外にもあったのか、自分でもよくわからない。さて、聴いてみたところ、ボーカルがゲストとメンバー含めて複数存在し、曲調も微妙ながら豊富なので、ラジオで知らない曲を延々と流されているような感覚があった。懐かしくもフレッシュなひと時だったが、こんな気分は久しぶりである。「どこでもドア」、「宝物」が◎。
戸川純×非常階段 / 戸川階段
定期的に出てくる非常階段のコラボ企画だが、昨年も出ていた戸川純とのタッグがまたまたリリース。内容は想像通りだが、かつてCDで聴けたシャウトと寸分たがわぬそれが聞こえてきたりして、不思議な気持ちに。あまり表に出てこなくなった戸川さんだが、これくらいの頻度で声を聞くような距離感が、一リスナーとしては気楽かもしれない。なんの話をしてるんだか・・・。
City Of Dawn / Sage
bandcampはDiscogからジャンルなどを検索して、そこからたどり着くケースが多い。これもそうだったか、タグからして内容は想像できたのにNYPということもあり、ダウンロードした。ほぼ同じドローンが延々と・・・厳しいですが、この手のジャンルでは大正解なのかも。こちらからどうぞ。
夢のはじまり / 須山公美子
不勉強ながら存じ上げない方でしたが、宇都宮泰氏のマスタリングということもあり買ってみました。アフター・ディナーにもあった、生まれていないはずの時代に感じる郷愁に満ちた一枚。85年作ということで、当時としては破格の額をつぎ込んだ録音らしい。演奏も篠田昌己や近藤達郎といった豪華な顔ぶれ。マスタリングはもちろんだが、マスターからして良いようだ。音への拘りは限りがないが、凝り過ぎるとポップスとして釣り合わないものになる。そんな絶妙なバランスが維持されているガラス細工のようなアルバムだ。最後の「すたあまいん」が素晴らしいです。
Piero Umiliani / Tra Scienz Fantascienza
ピエロ・ウミリアーニ買っておいて放置していた一枚。イタリアの映画音楽ではお馴染みらしいピエロ・ウミリアーニがモギという名前で手掛けたサントラの再発。オリジナルは76年ということだが、シンセを多用したスペース・ミュージック的ジャズで、今でもかなり新鮮に聴こえるのだから凄いぞ。ジャケットも最高。サンプリングするっきゃない?
The Pop Group/ For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?
a名作が本人らによるリマスターで復刻。対訳に当時のブックレットを再現したポスターまで付いてくる。ラストポエッツが参加している3曲目が差し代わっているが、本人らが言うにはこれが正しい内容らしい。本当か?影響を強く受けた作品を多く聴いた昨今、先駆者としてではなく、彼らの精神面、この場合は政治的なそれに関心が行ってしまうのだけど、資本主義を糾弾していたマークが、再結成してからはグッズを売りまくるなど、ちょっと首をかしげたくなるキャンペーンもちらほら。その辺は無自覚なのかわかってやっているのかは気になるところ。とはいえ、聴き取りやすくなったサウンドは新鮮で、フリージャズにダブまで投げ込んだ試みはやっぱり面白いです。『ブラインド・フェイス』冒頭のシャウトは電グルの「DS Massive」で使われてたっけ。というか、マークのソロもリマスターで出して!
Current 93/ The Moons at your Dorr
カレントの新作は同名の怪奇小説オムニバス(D.Tibetが選出)のイメージアルバムで、グループでは93番目のそれらしい。本当か...。アンドリュー・ライルズの仕事が殆どという感じで、NWW的な仮想フィールドレコーディングといった趣。もちろん、音周りは凝っており、あらゆるオーディオで確かめたい内容なのだが、いかんせん渋すぎて、カレントでやられると辛い。今に始まったことではないけど、2014年のアルバムが素晴らしかっただけに、あの編成をまた期待してしまうのが本音だ。まぁ気長に待ちましょう。近々、『サンダー・パーフェクト・マインド』のリイシューもあるらしいので、買ってみます。
Theodor Bastard / Vevti
ジョン・バランスを偲ぶコンピレーションに参加していたという情報しかなかったロシアのバンド。昨年のアルバムということで聴いてみたが、Coilが好きなのも頷けるシャーマニックなサウンドが目玉。ロシア語と女性ボーカルの相性は抜群で、ぐいぐいと引き込まれる。a
Crustgirls / ローファイの冒険
Discogで新譜を見ていると、どうしてもこの手のヴェイパーものが目に入るのだが、内容は殆どがハーシュノイズまたaはガバという謎。エヴァって特にそんな傾向だよね。決め手はサターン版『鋼鉄のガールフレンド』を素材にしているところでしたが、音には全く無関係です。俺もネットにデブリを散布したるでえ!と勇気をくれるタイプです。NYPですが・・・どうする?
TV Girl/ Who Really Cares
名前だけは聞いたことがあるような気がする御仁の新作だそうだが、なんとNYPで公開されていた。なんとなくグランジよりのロックかなと思っていたが、トラックにメロメロのヒップホップ、歌謡エレクトロでございました。こんなクオリティが無料って何かあるんだろうか?フィジカル版もあるみたいです。年度末に無理やり聴いて、4月から頑張ろうと言い聞かせたい時には最高。
The Groovin' Jailers / Take It Or Leave It
コッテコテのレゲエ・ダブ。昨年にCDでも出ていたそうだ。これもDiscog徘徊で目に止まったもので、ジャケットが良かったので気になっていた。結局iTunesで聴いてしまったのだが、流行一切無視という潔さ。アナログで欲しいイラストだが、悩み中です。やはり相応のファットな音が出る環境で聴きたい。DJをやる機会があれば、かけてみようか・・・そんな、音の鳴りが楽しみになるのはこのジャンルならではでしょう。
Marc Ribot, The Young Philadelphians / Live in Tokyo
aマーク・リボーによるバンドの東京公演。バンドの発端は敬愛するオーネット・コールマンの率いたバンドや、フィラデルフィアのソウルへ捧げるというもので、曲目は全てフィリーソウルのカバー。日本からも演者が出ており、豪華な編成で過去の名曲をプレイする。楽曲の理論より先にフィーリングがやってくる、横ノリの定番を突っ切るいぶし銀なセットリストですが、最後の「ハッスル」の大団円までノンストップで流してみて。ジョン・ゾーンのスコアもプレイしていたリボーを中心に、プロフェッショナルがポップスをなぞる類のものにハズレなし。もっとも、リボーらは自分たちの作品もこれらの名曲に並ぶように作っていると思いますが。ジャケットが伊藤あしゅら紅丸先生というのもビビった。
Cavern Of Anti-Matter / Void beats / Invocation trex
ステレオラブで知られるティム・ゲインが新たに立ち上げたプロジェクトがキャヴァーン・オブ・アンチマッター。アルバムとしてはこれが初だそうだ。ステレオラブファンの期待を裏切らない、クラウトロック、というかノイ!直系のスペース・ロックなのだが、より内省的な出来になり、アシュラやマニュエル・ゲッチングのソロにも近い。10分だろうが3分だろうが、気付かないままクラクラする類のそれです。スペシメン3やディアハンターからゲスト参加しているけれど、歌モノよりモートニックなインストの方が良かった。新しいことはやっていないと言われたら頷くしかありませんが、それはステレオラブ時代からもそうだし、ゲインがやる必要もないと思うので、今回のような作風は大歓迎。「パンテクニコン」が◎。
Venetian Snares / Traditional Synthesizer Music
aヴェネチアン・スネアズの新作はモヂュラーシンセを大々的に使用したもので、ジャケットもレトロ志向。いつものブレイクビーツ地獄じゃないのかと思ったら、やってることは大して変わってなくて、コンセプトが生きてるのか死んでるのか判断しかねるところが良かった。ヴィンテージものは制限があるからこそ面白いところはあるのだけど、ブレイクビーツやブレイクコアでそうしたハードルをご破算するところにカウンターと自暴自棄的な居直りを感じて、良いです。曲自体はどれも一緒に聴こえるが故に何回でも再生できるのもこのジャンルの宿命であり強みでもある。機材とスタイル、そしてタイトルの不釣り合いぶりに本人の病み具合が出ていて、面白くも不安になる怪作。
Michael Arthur Holloway / Guilt Noir
a何気なくオススメされたジャズもの。最近流行している(らしい)類のそれではなく、ノアールと言えばいいのか、フィルムのために書かれたような作品。それもそのはず、『ツイン・ピークス』のサントラが50年代のスピークイージー(米国の有名なダイニングバー)で演奏されていたら、というコンセプトで、霧と雨に包まれた都市のBGMとも名乗っている。ここまでイメージを前置きしていれば当然かもしれないけど、2016年にこの手のサウンドを出すのが最高。よく聴いたら、サンプルの挿入といった細工も使われていて、ただの模倣でもないところが更に最高。この人のメインプロジェクトは存じませんが、これは良いな~良いな~言ってたら3月も終わりそう。間違いなく3月現在では、一番の再生回数。
Michael Reiley McDermott /Music From Ephemeral
aノラ・ギブソンという方が主宰のコンテンポラリー・バレエが2016年に行なった公演で使われたスコアだそうで、書いた本人によれば、季節の移り変わりから人生のサイクルまで含めた、時間と人間の繋がりがコンセプトになっているそうだ。フィールドレコーディング的なサンプルが使われるなど、言われなければバレエを連想できないくらいに我が強めな内容で、無料で公開されていること含めて凄すぎ。もちろん、バレエを見てこそなんでしょうけど、これは音だけでも充分楽しめますよ。
Masami Akita & Eiko Ishibashi / 公園兄弟
録音はジム・オルークと豪華なラインナップで作られた2曲入り。どちらも20分に満たないボリュームで、この手のジャンルとしては手軽に聴けるのが嬉しい。秋田氏のドラムが入ると、「日本の鳥」シリーズっぽくなるけど、一人で作っているように感じないのは共作が上手くっている証拠でしょうか。今ではフェティッシュとなり、サウンドの仲間入りを果たしたノイズですが、立派な音色の一つとしても味わえる本作はそれを証明している。大音量で味わうのはもちろん、ヘッドフォンで垂れ流しておくのも良さそうなので、ノイズに馴染のない人にもいいかも。ジャケットも良い。
Underworld / Barbara Barbara, we face a shining future
アルバムが出たのは何年ぶりなのかもわからないくらいには追いかけていないグループだが、新作ということもあり買ってみた。「ボーン・スリッピー」や「レズ」のようなテンションでないだけで驚きだが、Kompactのようなローテンポ主軸の作風は歳相応の落ち着きを見せていて何度でも聴ける。ケミカルのように下世話かつ微妙な曲ばかり作り続けるのも好きだけど、スマートな力の抜き具合が好印象。なんだか去年のモデル500といい、今年のサージョンといい、大御所による渋い作品が増えているけど、これらの着地は自然なものなのだろうか。とはいえ、カール・ハイドとブライアン・イーノとの共作もこんな感じだったので、この形に落ち着いたのは当然なのかもしれないが。
Cloudland Canyon / An Arabesque
abrainwashedで過去作のジャケットが表示されているのを見て、最近の動向が気になったグループだが、新作を出していて少し驚いた。上のキャヴァーンと同じで、全体的にクラウトロック・トリビュートな内容だが、電子音をわかりやすく使っているこちらの方がキャッチーかも。ヴォコーダーもクラフトワーク時代から変わらぬ使い方で、よりオールドスクールだし、アシュラ直系のミニマルなシンセ・ループもあって、その手のマニアは必聴か。40分にも満たない内容なので、聴きやすいのもありがたい。
Barry Adamoson / Know Where To Run
a古くはマガジンやニック・ケイヴ・ザ・バッドシーズのメンバーをこなすほか、ソロ活動でもアルバムを作るバリー・アダムスン。実在架空問わず多くのサウンドトラックを手掛けてきた氏の新作だ。これまでの仕事からの影響をパッケージしたものらしく、スパイ映画からキャバレーまで、ノスタルジーと共に記憶されている時代を辿るような内容。本人が一番堪能しているような気持ち良さが微笑ましい。「クロウ・アンド・ウィング」はイントロの時点でメロメロ。
Woo / AWAAWAA
もともとは70年代末から80年代前半にかけて活動していた兄弟によるユニットで、数年前から復刻が進んでいたことしか知らなかった。ネットなどで情報を得る前に聴けたわけだが、ヤング・マーブル・ジャイアンツやRIO系をまぜこぜにしたような奇怪なサウンドで、何処か釈然としないところは先進的。レッド・クレイオラやスウェル・マップスのようなジャムっぽさもない。ペンギン・カフェやカンが近いのかもしれない。あれこれ結びつけるのも良いが、この時代特有の技術と思い付きと才能がケンカする内容の産物ということで。
Glenn Jones / Fleeting
Brainwashedで取り上げられていたのでデータで買ってみたアルバム。ジャケットから内容まで、典型的な英国フォークですが、ところどころ安心できない、不明瞭な部分がある。メロディが少ない故にそう思うのだろうか。これと70年代のフォークを交互に流していると、当然かもしれないが微妙な差異が浮き出て面白い。本作をきっかけに、ビル・フェイ、スティーヴ・チベッツなどを聴き直した。
電気グルーヴ / 電気グルーヴ25周年記念ツアー塗糞祭
旧メンバーからスチャダラパー、天久聖一まで出てきたツアーを記録したDVD。曲目もとんでもないチョイスで、ファン以外は置いてけぼりのどえらい仕様になっている。初回限定版ということで、映像の他に音源と刷毛が付いてきた。スタジオで手を加えた『イルボン2000』のようなエディットは無理だとしても、『レオナルド犬プリオ』よりも雑な編集なのは否めない。あくまでオマケなんですが。それにしても、ポケモンの絵本にモザイクがかけられたり、「オバQ」や「LSD」といったワードも歪められていて笑ってしまったが、スペースインベーダーはいいんですね。それにしても「電気ビリビリ」の後半が殆どボカされているのはちょっと...。「twist of the world』に至っては収録すらされていない。とはいえ、「Hi-Score」や「ママケーキ」、「マイアミ天国」といった過去の曲がリアレンジされているのは新鮮だし、彼らの仲の良さの微笑ましさに乾杯。
Aranos  / Omen of Good Times
aAranosの新作。前回は長いドローン2曲という構成だったが、今回はヴァイオリンとボーカル多めのアイリッシュな弾き語り。NWWと作った『サントゥール』が好きな人間としては嬉しい。スティーヴン・ステイプルトンも楽器以外で参加しており、地味ながらにチェックすべきだ。音色からフレーズまで、日本人の琴線に触れると思うのだが、いかんせん知名度が少ない。ロバート・ヘイが昨年出したアルバムのように常に聴いていられる作品だが、あちらほどストイックではないので、より多くの人に薦めたい逸品。それにしてもハンドメイドで国際便という条件にも関わらず、2000円ちょっとというのは安すぎ。大丈夫なのか。
Serial experiments lain Cyberia mix
aアニメ『シリアル・エクスペリメンツ・レイン』のサントラで、クラブミュージックのものだけをまとめたもの。既に持っていたが、叩き売りされていたところを保護しておいた。劇中でかかるものは殆どなく、イメージアルバムとも言える。サイベリアとは劇中で出るクラブの名前で、そこでプレイされている楽曲ということか。曲を手掛けているのは竹本晃氏と近田和生氏。近田氏はJ.Jとしてアニメにも出ている。今聴くと、鳥肌が立つような古めかしいスタイル及びサンプルばかりで、5鍵ビートマニアと並んでノスタルジーを刺激する一枚でもある。一周回って、このいなたさが良いのかもしれない。主題歌のヒップホップ・リミックスはやはり名曲だ。サントラの内容についてはこちら
Tony Wakeford & Steven Stapleton / Revenge of Selfish Shellfish
a何故か紛失してしまったトニー・ウェイクフォードとスティーヴン・ステイプルトンの共作。リマスターとリミックスなどを追加した2CD版を最近追加されたオフィシャルシャツと共に注文した。外着にするにはちょっと厳しいかな。CDは素晴らしい内容です。トラッドと実験音楽の融合という例えは彼ら周辺の音楽を指すものだったけど、これはその中でも最高峰。
The New Blockaders, Vortex Campaign, Coil / The Melancholy Mad Tenant
84年に出たオムニバスで、05年にも再発されていたレア盤。いずれも高騰している中で、突然の復刻となった。アートワークはR.ルぺナスだそうで、公式再発と言っても良いのだろうか。内容はTNBと初期Coilと言われて頷けるもので、Vortex Campaignの音源にも興味が湧いた・・・が、これだけなのだろうか。売る場所によってはシャツと豪華な外箱付のものもあるようだが、あまりに高いので通常版を購入。
田中フミヤ / You Find the Key
久々の新作。長尺のミニマルがギッシリ詰まった大作だが、サンプルとベースラインが曲ごとにハッキリ異なるとわかるせいか、飽きずに聴ける。フロアでは色々なネタを乗せては遊べそうなくらいにはストイックなので、バラエティ豊かな顔を見せる秀作。リッチーの『コンシュームド』とは違うタイプだが、リスニング志向な作品でもあると思う。昔からサンプル選びが面白い人だと感じていたが、今作で再確認。
Matt Elliott / The Calm Before
サード・アイ・ファウンデーションより先にディス・イモータル・コイル(コイルのトリビュート・プロジェクト)で知った御仁の新作。本名でのダーク・フォーク路線が好きだったのは前述のトリビュートの影響か。前作の三部作の延長にあるもので、コイルの「オスティア」といった楽曲と共振する、無常の詩篇が6曲。ジャケットにも使われている海の写真がピッタリで、寄せては引く波、昇っては沈む太陽、果ては生まれては死ぬ人間にまでフォーカスした世界もまたコイル的。すぐに彼らを引っ張り出してしまうのはエリオット氏に失礼なのだが、それ程にこの音楽は彼らから感銘を受けた記憶を呼び起こすのだった。癒されるなんてとんでもない、けれど孤独の波に押しつぶされそうになる時間がとっても愛おしい。名作!
Mark Stewart / Mark Stewart
手元から離れて久しく、動画サイトでも間に合わせられなかったが、なんとApple Musicの対象になっていた。サンプリング絡みで難しそうだと思うのだが、そうでもないようだ。さて、これは力作であるソロ2ndの次に出たもので、前作と一転してソフトな仕上がりになっている。808のパカパカはもはや流行り廃りを飛び越えたサウンドと実感。「戦メリ」ネタも良いけど、やっぱりサティの「ジムノペディ」を使った元祖トリップホップ「ストレンジャー」でしょう。ハードすぎる2ndよりも再生回数自体はこちらの方が断然上。リマスター再発、するべきですよね~。
Tim Hecker / Love Stream
1曲目の管楽器とサンプルの絡み具合からしてカッコよかったが、これまでの作品と比べてだいぶポップになったと感じる。それほど長いファンではないのだが、中途半端にイメージを固定させていただけに、予想を裏切られて驚きだった。聖歌隊のコーラスを使うという、西洋エレクトロニカ鉄板の選択肢も、オルガヌムの『アーメン』を思わせる刹那的な使用であざとさゼロ。地味かもしれないが、末永く聴いていけそうなアルバムだった。「ヴォイス・クラック」のグリッチ具合も今となってはレトロスペクティヴ・・・と感じるのは、単にこのジャンルは疎いからでしょうか。
CoH / Music Vol.
イアン・パヴロフの新作ということで、久々に聴いてみたが、短いフレーズ及びサンプルを延々と繰り返すのはラ・モンテ・ヤングに連なる後期コイルのスタイルを思い返さざるを得ない。場所を選ぶ類の音楽だが、少しずつ変容していくスローモーションな作りは流石の一言。
Brian Eno / The Ship
ボウイの死が良くも悪くもイメージを導き出している新作。長尺のタイトル曲も『ロウ』のB面っぽいと感じるのは避けられないことであった。語弊があるかもしれないけど、昨今ではすっかりポップのフォーマットになったスタイル故に声を多用してみたのかもしれない。ヴェルヴェッツのカバーはコテコテですが、やっぱイイです。今年は至る所で★を見つけることでしょう。
Hiroshi Watanabe / Multiverse
色々な名義でリリースしているが本名でのアルバムはご無沙汰。トランスマットからのリリースだが、かねてから初期デトロイト・テクノに通じるサウンドだったので、ようやくと言っていいのかも。他のジャンルのようにテクノもスタイルが分岐して、新鮮さと懐かしさを行き来する者も多い中、一貫して同色のサウンドを積み続けるストイックさに打ちのめされる。仏像を彫るかのように生み出された曲だけに区別がつかなくなってくるかもしれないが、Disc2のMIXはDJとして料理しているので親切。空やご子息の写真にイメージが引っ張られることも多かったが、今回はより抽象的なヴィジュアルとなった分、懐が限りなく大きくなったように感じる。
V.A. / Give Me New Noise
タキシードムーンの『ハーフ・ミュート』がリイシューされ、一緒に同作のリミックス集も発表された。サイモン・フィッシャー・ターナー、アクサク・マブール、カルト・ウィズ・ノー・ネーム、フィータスなど、独特のラインナップだが、そこはタキシードムーン、室内楽~クラシック色が濃い内容に落ち着いているので、原曲のイメージを損なうものはない。フィータスの「ホワット・ユース?」はクラシックで繋がるも、オーケストレーション的なアレンジで生まれ変わっていてカッコいい。マブールはどうなっているのか不明だが、トリップホップ的なサウンドからも中身が違う人になった?
ANOHNI / Hoplessness
アントニー・ヘガティーが女性としての名前、アノーニで新作を発表。サウンドは全編エレクトロニックで、共演したこともあるハドソン・モホークとOPNということで話題性も抜群。ジョンソンズやカレント93では出来ないサウンドとテーマだ。ローマ法王の一件以降、直接的なアプローチが増えてきたが、その集大成とも言えるリリックは、示唆的な含みを飛び越えて直接問題に言及している。甘美なサウンドに乗せられるリアルすぎる歌詞は、現代版マーダーバラッドと呼ぶにふさわしい。メディア上ではポップスとして優れていると評価される一方、メッセージには表面上だけ触れて避けられているように感じるが、それを見越してのリリースなのだろうか。音楽として優れているのは素晴らしいことだが、そこで止まってしまう現実を認識させ、更に改善するには音楽以外の手段が重要なはずだ。受け手の一方的で、瞬間的な称賛に違和感を覚える今日この頃。
The Jooles / Moving Memories
時代を無視したスタイリッシュなソウル。ベルリンのバンドということだが、お国柄が出てないのは良くも悪くもスタイルゆえの宿命か。カッティングとフルートさえあればOK、という安直な我が耳を楽しませてくれる。a
James Blake / The Colour in anything
これまでの作品はそれほどハマらなかった御仁だが、今回は歌に特化して敷居を下げてくれたように感じる。CDめいっぱいに収録されているのだが、それは曲数が多いことからで、以前のように少ない曲数に反比例した大作志向からコンスタントに、それでいてブレイクの個性が見て取れる我流のポップスを量産できるようになったことに成長を感じた。もちろん前の方が良かったという人もいるだろうが。他のミュージシャンと組んだり、せっかく自分で歌っているのになんだが、ゲストボーカルがいても面白いかもしれない。そんなプロデューサー気質が大きく発揮された内容だ。小粒ながらに耳に残る曲が多く、「タイムレス」はサンプルからして面白い。
Nurse with Wound / Dark Fat
昨年から出る出ると言われてハードルが高くなっていたような新作。ライヴ音源から選び抜かれたものを編集しているようだ。アンコールでお馴染み、「ロックンロール・ステーション」のビートがあちこちで使われたり、アンドリュー・ライルズのギターもわかりやすくプレイしてくれるなど、ライヴ・パフォーマンスに関しては集大成的な内容である。だが、どうしても詰め込んだだけという感じも否めない。これなら『コントラリー・モーション』の方が良いな・・・。最後の無題トラックは以前も出ていた音源に「ティケッティー・ブー」が組み合わさった内容で豪華だが、やっぱり焼き直し感がぬぐえないものとなっている。CDは2枚組、届くより先にbandcampで買ってしまいました。
Philip Sanderson / Seal Pool Sounds
スナッチ・テープスの主宰者であり、オルガヌムことデヴィッド・ジャクマンらとも交流のあるフィリップ・サンダーソン。氏が大阪のレーベルからリリースしたアルバムがこれ。運営者本人から譲っていただいたもので、一緒にロバート・ヘイと取り組んだ『フロム・ジ・エア』までもらってしまった(こちらは持っていたけど)。一聴すると時代を判別しにくい不鮮明なサウンドまみれだが、オーディオごとに表情を変化させるチャンネルなどは流石に細かい芸当。ヘイの叙情的な曲とは違い、ややハードルが高く感じるが、オルガヌムのように不思議とリピートしてしまう。
The Pop Group
/ The Boys Whose Head Exploded

未発表ライヴ音源と映像収録DVDの2枚組。「ロブ・ア・バンク」のような見違える内容になっているものから、グラクソ・ベイビーズのカバー、更には完全未発表曲もある。が、正直ファンアイテムの中でもかなりマニア向けで、見つかったものを適当に出しているだけとも言える。こうした小出し及びビジネスこそ、マークが糾弾していたものではないのか・・・と面倒くさいことを考えてしまうのも事実。どうせなら核放棄を求める集会で披露したという「エルサレム」を入れて欲しかった。映像はまだ見ていない。
anokthus / Negation Overflows
「Harsh Industrial Music For Harsh Industrial People」のコピーを裏切らないハードなインダストリアル・サウンド詰め合わせ。この手のサウンドを集めなくなって久しいけれど、本作のようにビートが主導権を持っているとすんなり聴ける。ビートと言ってもロックでなくテクノ、それも最初期のハード・ミニマル的なそれ。ニューガバやハードスタイルのような下品さを伴う華やかさなんてどこ吹く風なストイックさがGOOD。ロックより先にテクノを好きになって良かったと思わせてくれる作品だった。箱で浴びたい類。
The Claypool Lennon Delirium / Monolith of Phobos
ショーン・レノンとレス・クレイプール(プライマス)によるデュオというだけでビックリなアルバム。ビートルズの子供と、レジデンツの(精神的な)子供が手を組んだ結果はサイケデリック一直線、プレスリーだけに焦点を当てていたレジデンツのトリビュート企画が霞むような危うい内容に。ビートルズ風の歌唱も目立つなど、笑える場面も多いけれど、単純に曲が良いのだから侮れない。プログレを通してサイケデリックに回帰する人は多いが、ビートルズやザッパを通る人は意外と少ない。両者は同じであることを証明したレジデンツの仕事を受け継いだという点でも凄い企画だ。日本盤がこの先リリースされ、ボートラもあるらしい。
テニスコーツ / Music Exist Disc3
これまでの作品も良かったけれど、これは頭一つ抜けていた。ミニマルなようでわずかに変容を続け、ラストで再び一周する「違相」の時点から引き込まれてしまう。フォークからゆっくりと民謡へ近づいては離れていく旋律は、少しずつそのズレを見せては消えていく。宇都宮泰氏の仕事でもあるからか、アフター・ディナーが持っていた手の触れようがないレトロ、知るはずのない懐かしさがここにある。Phew&山本精一の『幸福のすみか』を最初に聴いた時もこんな妙な感覚だったような。幾重にも試みられた録音は実験の域に達しているだろうが、その実を結ぶスタイルがポップスであるというのは何とも出来過ぎた話である。今年に出たマット・エリオットと並んで傑作でしょう、これは。
Floating Void / Floating Void
ジャケットがどうもNWWの『ホモトピー・トゥ・マリー』(92年CD版)ひいてはジューリー・クルーズっぽいなと思って買ってみた作品。なるほど、NWW的なステレオ音響にドローン、そしてフルートがかぶさるという前衛ジャズスタイル。個人的には大当たりでした。a
Swans/ The Glowing Man
現在の編成ではラストとなるらしいアルバム。このご時世に2時間超え、一曲30分クラスの大ボリュームを突きつけてくるだけで恐れ入るが、各曲それに見合う出来なのは流石というべきか。既に活動再開後からして3枚目となるため、ちょっと飽きが来ていたのも本音だが、それを見越しての解体だと思われる。ラストの曲は『バーニング・ワールド』から続くフォークの陰を持つフィナーレだ。クオリティ自体は前作の方が上だと感じるが、多くの曲が実演中の即興から組み上げたものだという出自を考えれば、判断材料としてもライヴを見なければ。マイケル・ジラはちょっと悪い噂も経っていたのだが、これはどうなったのだろうか。生活レベルで一緒になる彼らの集まりは、わずかにコミューンの気配があり、ピンク・フロイドで狂ったサイケデリック世代としては納得の出自であるね。
salami rose joe louis / son of a sauce!
ロサンゼルスから出たシンセポップ詰め合わせ。ブロードキャストが更にチープになったような趣で、16bitのゲームで耳にしたような音色が心地良い。キーボードのサウンドが持つ可能性云々をテーマにしているらしい。そんな大きなスケールを背負っているのが、これらのいなたい楽曲群なんだから、電子音はやめられない。a
Jacek Staniszewski ‎/ Zawstydzajacy Dar
aポーランドのヤチェク・スタインゼブスキによるアブストラクトな電子音ループ。お目当てはアレクサンドラ・ヴァリシェフスカのアートワークだったが、内容もなかなか良い。尺が長いので途中でダレてしまうのも否めないが、低音などを用いずにひたすら同じサンプルを繰り返す潔さは珍しい。
Teho Teardo and Blixa Bargeld / Nerissimo
ブリクサ・バーゲルトの新作。コラボものはいずれもハズレがない御仁だが、今回は音数の少ないタイトかつチェンバーなトラックをバックに、朗読のようなボーカルを聞かせてくれる。いや、これはもうラップの域かな。最近のニック・ケイヴの世界観にも近くなった作品だが、頽廃的ながらも閑雅なあちらと異なり、より閉鎖的な世界になっている。少し前のアルヴァ・ノトとのコラボは音に比重を置いていたが、こちらは声ということで。あまりにも渋すぎるため、時間をかけて味わっていこう。
鷺巣詩郎ほか/ Refrain of Evangelion a
エヴァブーム再燃というわけではないのだが、ゲームなどに触れたのをきっかけに劇判の方も思い出したのだった。倉庫をかき回していたら出てきたので、我ながら物持ちがいいぞ。エヴァのサントラは色々出ていてるが、これは原作に使われたものから定番のものをコンパイルした手堅い内容である。曲数自体は少ない『エヴァ』だが、無音のシーンも多かったので納得。鷺巣氏は山本正之と並んで、仕事を整理されるべきだな。クラシック調の曲が多いのはもちろん注文だろうけど、羽田健太郎が『イデオン』でたまに見せていたようなピアノネタがあったりと今聴くと発見も多い。やっぱり一番は「次回予告」ですな。
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Merzbow / Berserk ‎– A History Of Self
a台湾から出たメルツバウとベルセルクなる人物のスプリットLP。前者は『ドルフィン・ソナー』といった作品を始めとして、パワーマック導入時代から顕著だったベースのサンプルが心地良い。後者はアニメか何かのサンプリングにはじまり、アナログなノイズ詰め合わせ。それにしてもこのアートワークは一体何?
Clarke : Hartnoll ‎/ 2Square
ヴィンス・クラーク関連のアイテムとしてゲット。ポール・ハートノルとのコラボだそうだ。デペッシュ・モード在籍時ほどは単調でないが、複雑でもないハイグレードなポップスという感じ。日本で言えば最近の電気グルーヴに近いサウンドだ。割と広い世代に受けるんじゃないだろうか。「シングル・ファンクション」がカッコいい。
Juan Atkins & Moritz von Oswald Present Borderland ‎/ Transport
何度か取り組まれているコラボレーション。各々のやりたいことが出来ているのは、こうした機会があるからだろうか。尺も長く、ストイックな4つ打ちが延々と続くのだが、気まぐれに再生する度に異なる感触をもたらすのは不思議。デリックの『イノヴェイター』もこんな感じだったが、極めてフラットで漂白された器のような作品だ。ヒロシワタナベの『マルチヴァース』と並んで愛聴。
鷺巣詩郎ほか/ メガゾーン23
a京都のレコードまつりで買った一枚。特に珍しくもないが、主題歌だけをパッケージしたCDは高騰しているのと、「淋しくて眠れない」が聴きたくなって買ったのだった。動画サイトでいいやんというツッコミは無用。鷺巣氏の仕事の中でも、このシリーズの歌ものは良作が多い。人に薦めにくい作品ではあるが、自分は好き。1作目だけ...
Don Bradshaw-Leather / Distance Between Us
Nuse with Woundリストに掲載されていた奇盤として知られていた作品。そのサウンドの飛び抜け具合に反して情報が全くなかったのだが、この度再発となった。非公式なので謎はそのままだが、こうして聴けるようになったのは大きい。ワーグナーin暗黒大陸といった趣のパーカッションやメロトロンは正にNWWまたは初期C93に見られるステイプルトンに継承されている。高かったけど内容的には大満足。
YPY ‎/ Zurhyrethm
ズリレズムと読む。バンド・プロジェクトであるgoatとも共振するミニマルぶりだが、決め打ちされた展開がない分こちらの方が陶酔的である。同期せずに流したトラックをそのまま収録したという1曲目や、「バグズ・グルーヴ」(意味深なタイトル)は最初期のテクノにもあった歯切れの悪さがあり、それを意識すると楽しい。自分の感覚がズレてきた・・・と思ったら、ラストの「ドリームス」のエキゾっぽいサンプルで揺り起こされる。気持ちよいです。
山本精一 / Palm
YPYの『ズリレズム』と並べたくなるのがこちら。ミニマルテクノの方法論で作ったというギター・インスト詰め合わせである。ギターの音色そのものにこだわるスタイルはやり尽くしたのか、音の配列に着目したのはなるほどという感じ。個性の強いアコギの音をいかに、「そうでない」ようにするのか。最初はドゥルッティ・コラムなんかと無理やり結びつけようとするのだけど、だんだん苦しくなってくる。受信する側に挑戦したような意欲作。
Rebolledo / Mondo Alterado
レボレドの新作はパチャンガ・ボーイズの作品も出していたヒッピー・ダンスから。サイケ丸出しの作風は前作からだが、今回はよりBGM的な仕上がりになり、モンドの域に達している。好きな作家がことごとくモンド、サイケデリックに辿り着くことが多い年だなと感じる。一曲目はショート・バージョンと名乗っておきながら、15分という長尺。ボーカルをサンプルにするお馴染みの手法「パウ・パウ」が中毒性高し。蒸し暑い夜のお供。
日野繭子 / アカシック・レコード
2014年にデータのみで販売していた音源がCD化したもの。CDの容量を目いっぱい使っており、アナログ・ノイズが渦巻くスケールの大きい作品。「メビウスの帯」なんかは後期のコイルを彷彿とさせるリズミックなノイズで、表情を変える瞬間が多いおかげでダレない。30分を超える「黄金律」は正に日本のノイズといったスタイルで、そこからピアノがアンバランスに鳴り響く「フォーアール」へと繋がる。是非ともノンストップで味わうべき展開です。
DJ SHADOW‎/ The Mountain Will Fall
DJシャドウの新作。あまり詳しくない御仁だが、アートワークに惹かれて買ってみた。ビートは近年のトラップなどを取り入れたものだが、ウワモノが全体的に90年代っぽく、リズムとサンプリングに不思議なギャップを感じる作品となった。ビートが後から乗り込んできたような前半も「ザ・サイドショウ」といったトラックで一気に盛り上がる。中盤からリスニング志向の流れになって、さらりと再生できる後味の良さが魅力。
Nurse with Wound / Lea Tanttaaria/Great-GodFather-Nieces
アウトサイダー作家、アドルフ・ヴェルフリに捧げるコンピレーションに提供していた曲が単独音源になったもの。自伝らしき冊子に3"CDが付いてくる。言語がフランス語なので読めないのがちょっと残念。もとのコンピレーションはグレアム・レヴェルとDDAAも参加しており、80年代中期の録音とのこと。ファンアイテムだが、冊子という形態が気に入ったので購入。
POLTA / HELLO AGAIN
POLTAのミニアルバム。前作から続く90年代供養のような爽やかさだが、ペーソス交じりの歌詞と奇怪なアートワーク(あけたらしろめ氏による)もあり、どこまでが計算の内なのか判断が難しいのも魅力だ。ネットスラングを駄洒落でねじ伏せる「こうじゃこうじゃ」や、「春が過ぎても」あたりがお気に入りだが、何よりLet's just rock recordでの購入特典であるカバー曲に驚いた。
Little Annie/ Trace
リトル・アニーの新作で、昨年の夏に超限定的な公開がされていたそうだが、最近公式にお披露目となった。シャンソンに終始した作品で、ジャンヌ・モローのカバーなんかもある。かねてから、この時代に没入していたアニーの本願は、老成した今だからこそ発揮される。
Aphex Twin / Cheetah EP
出る度に「前作よりマシ」と言っている気がするエイフェックスの新作だが、これは再開後で一番いいかも?マニアの間では有名なシンセサイザーを用いて作ったものらしく、作曲よりも機材への拘りを優先して作られた、極めて個人的に感じる内容。『アナロード』シリーズにも近いかな。特に起伏もない曲が延々と続く釈然としない佇まいに妙な余裕を感じることも。リチャードだから許される。
John Duncan ‎/ Bitter Earth
イギー・ポップやペル・ウブ、コールマン、ガン・クラブ、ニーナ・シモンなどのカバー、つまり歌が込められた作品。最小限に絞られた音はノイズも含んでのことで、呟き手前の歌に不思議な魅力がある。レコードなので、尺的にも各面通して聴きやすくて良い。これはずっと楽しめますな。
Michael Rother / Katzenmusik
来日公演ということで、過去作を引っ張り出していたが、やっぱりこれがナンバーワン。ジャケットと音がピッタリな作品はそうそうないのだけど、これは数少ない例の一つ。音的にも似ているドゥルッティ・コラムの1st,2ndと並んで夏にふさわしい一枚。
YBO2 ‎/ YBO2アーカイブBOX
YBO2の音源をコンパイルした9CD+1DVDのBOX。昨年から出資を募っており、かなり危うい感じではあったが発売までこぎつけた。『アリエネイション』や『太陽の皇子』といったアルバム以外に、未発表ライブ音源や初CD化となる音源もある。それほど詳しくないバンドなので、こうして網羅できるだけでもありがたいと言えばありがたいのだが、盤起こしなのがモロわかりな音質、出資した人間以外はクレジット一切なし、解説なども一切なしというトンデモない内容だけに、往年のファンの方々のダメージは中々のものだと思う。マスターテープ諸々は行方不明なのだろうか。自分は10年くらい前にレンタルCD屋で聞いたくらいだったけれど、「猟奇歌」、「ドグラマグラ」、「太陽の皇子」といった曲は本当に凄い。トラッドにも接近していたスタイルはカレント93と並べて聴きたい。一応出資したんで先行して届いたし、クレジットにも入れてもらいました。価格は最終的に上がっていたのでお得。
COIL / The Ape of Naples
COILの実質ラストアルバムにして、最高傑作がついにリイシュー。ブートこそ常に出ていたのだが、これは10年程前に『ニュー・バック・ワーズ』と共にLPボックスを出していた米国のレーベルからなので、正規といっても良いだろう。発売が遅れて冷や冷やしたが、無事に届きました。装丁はスレッショルドから出た2ndプレスとほぼ同じ・・・だと思う。美しい写真を収めたライナーもあるが、リマスターなどの表記はない。とにかく、今後は販路を拡大してもらって、多くの人に聴いてほしいという気持ちでいっぱいである。結構な頻度で聴いているので、改めて感想を述べるまでもないのだが、最初に聴いた時から今に至るまで、その圧倒的な印象が薄れることはない。間口が狭めになるサウンドから一段階上がって、英国流のポップと言うべきである歌と旋律が形作られている。「タトゥード・マン」、「トリプル・サン」、「ゴーイング・アップ」、「アメジスト・ディシーヴァース」・・・いやいや、全て名曲です。赤ビニールのボックスも出ているそうだ。
Jeff Milles / Free Fall Galaxy
ジェフ・ミルズの企画もので、結構な数をリリースしているらしい。ダンス・トラックというよりは室内で聴くプレ・テクノといった感じ。これもヒロシワタナベの新作に近いかな。フロアにも対応していたあちらに対して、こちらは完全に静止したままインプットするストイックな内容。ライリーやモンテ・ヤング的に接してみてはいかがか。
Factory Floor/ 25 25
相変わらずオールドスクールなアシッドとディスコのぶつかり合いだが、徹頭徹尾クールなテンションで職人芸にすら近づきつつある。少し前の変拍子ものや「フォール・バック」みたいなフロア向けのものが少なくなり、セクション25、パッとしない時期のファクトリー・レコードの陰もちらつく。環境次第で大きく印象が変わるのだろうけど、マニア向けなのは否めないか。303好きには嬉しい。
Andrew Liles / The Power Elite
アンドリュー・ライルズの新作はユナイテッド・ディアリーズからのリリース。なるほど、NWWに通じる実験映画のサントラ、インプロヴィーゼーションの体を成しているもので、ライルズの手腕とセンスを改めて確認できる力作だった。初期NWWにあった不意打ちとも呼べるネタ使いなどはないのだが、末永く楽しめる作品なのは間違いない。タイトルとブレア首相・夫人を改造したアートワークからして、英国のEU離脱が裏テーマ?
Monika Roscher Bigband/ Of Monsters and Birds
ドイツのモニカ・ロッシャーがビッグバンドを率いて録音した作品。本作で初めて知ったので、普段からこんな作品なのかはわからないのだが、ストーリー仕立てのビッグバンド~ジャズロック・メドレーという痛快な仕上がりなので、過去作もチェックしたくなる。今年はフィータスといい、ビッグバンド、オーケストラものにぶち当たることが多いのだが、自分はショービズというか作り物っぽさがあるものに惹かれるみたいだ。歌もあるし、楽しく聴ける一枚。bandcampもあります。
Hypnopazūzu / Create Christ, Sailor Boy
デヴィット・チベットとユースによるユニット、ヒプノパズズの初作品にしてフルアルバム。ヨガ好き同士でドローンだろうと思っていたら、カレント93でもご無沙汰というほどの熱唱がてんこ盛り。バイプレイヤーの頂点とも言えるユースによって作られる豊富なレパートリーのおかげで、一切ダレません。一昨年のカレントのアルバムとセットで聴きたい、渋さが光る力作だ。鈍重なダブ・マナーのベースラインからもわかるプレイヤーとしての力と、ポポル・ヴーのサンプリングに代表されるセンスの二つが融合する、彼ら流の王道サイケデリック・ロックアルバムである。第2のメロディであるチベットの歌にとにかく注目!
former_airline / Our Fantasies for Science and Pornography
頑なにテープでリリースを続けるなど、曲も姿勢も渋いformer_airline。今回もオールドスクールなノイズはもちろん、ポストパンク絶頂期に芽生えた新種の音たちへのフェティッシュが詰まった作品だった。ネガティブなイメージの強いワードが選ばれたタイトル群すらも、そんな嗜好のパッチワークの一つになっており、精巧なアルバムになっています。「ホワット・ジ・オーシャンセッド」が長閑に感じる人間で良かった。こちらから買えます。
Pan Sonic/ Atomin Paluu
フィンランドの原子力発電所をレポートしたドキュメンタリーのサウンドトラック。実質的にパン・ソニックの最終アルバムとなるそうだ。長期間に録音していた素材をミカ・ヴァイニオが編集したそうである。いつものパンソニなのだが、やはり映画本編を見ないと100パーセント楽しめない気がする。日本でも公開すべきじゃないか?是非のどちらかではなく、現状をそのまま描いたドキュメンタリーという点含めて、その存在をまずは受け入れるべきであるね。終盤はやはり気合が入って、ビートがぶち込まれます。男気を感じます。
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IV the Polymath ‎/Opening Doors
90’sのアシッドジャズを思わせる小曲集。なんとなく『R4』のようなゲームで流れていた曲が重なり(曲が短いからか)、どの曲も苦労して作った痕跡がないと感じる。ショーケースのようなものと本人が書いているのもあるのだろうけど。短く、展開も少ないのだけどグルーヴを作るのはベース、ドラム、ビブラフォンだと言わんばかりの貫徹したバックが○。何回でも聴けます。
Nick Cave and the Bad Seeds/ Skeleton Tree
自身を記録したドキュメントのサントラも兼ねている作品で、前作よりも更に孤高の境地に到達した快作。バースディ・パーティはもちろん、バッドシーズのキャリアを通してですら、ここまで統一されたテンションは珍しい。晩年のコイルやレナード・コーウェンのような佇まいである。息子の死がインスピレーションになってしまったのもあるだろうけど、全世界に向けているアノーニとは対極にある個人の世界へ没入しているように感じる。バラードでポジティヴな愛を歌い始めて幾年、死からそれが発芽するのはバースディの時と似ているようで異なる瞬間であった。マット・エリオットの新作といい、今年は歌が好きになる。
VIVENZA‎/ VERITI PLASTICI
ヴィヴェンツアが83年に発表したテープの再発。50本限定というレアものだったが、この手の再発に明るい謎のレーベル、ROTORELIEFからCD化されていた。正直どれも同じなのだが、早い時期から高いクオリティを誇っているのは確かで、今日でも全く古びない洗練されたジャンク・サウンドだ。詳細がよくわからないグループでもあるのだが、不動の音とアートワークが何よりの紹介となっているのは流石。よく行くレコード屋さんに安く売られていたので購入。
JG THRILWELL/ Imponderable
映像作家Tony Ourslerのフィルムに提供されたサウンドトラック。インスタレーションとして「5D」上映されたらしいが、詳細不明。バラエティに富んだ曲が詰まっており、中国の古楽器を使ったものから、フルートが躍るクラシック小曲、NWWばりの耳をかきむしる音響など豊富。改めてサールウェルの手腕に脱帽。
Free TEMPO meets SCOOBIE DO/ Namorada
do Vento e.p.
フリーテンポとスクービードゥーのスプリット。スクービー側は03年ごろに後者が出したシングル『風の恋人』にカップリングで入っていたリミックスと、別バージョンを収録している。フリーテンポ側には明るくないのだが、このリミックスが大層素晴らしいこともあり、ファンアイテムとして長く探していた。この度安価で入手できて嬉しい。想い出というのもあるけれど、秋になるとどうしても恋しくなる曲の一つだ。「3rd season」の別バージョンはこれでしか聴けない。
David Bowie/ Reality Tour
ミーハー丸出しだが、未聴の作品に手を出している最中のボウイ。やはりベスト盤というか、良いとこどりで辿ってきた御仁なので、このライヴ盤も買ってみた。過去の曲もしっかり歌っており、「アンダー・プレッシャー」や「ヒーローズ」は流石の盛り上がり。後者はドイツに滞在していた時にオリジナルをよく聴いたのもあって、世代じゃないのに思い入れのある曲となってしまった。
坂本慎太郎 / できれば愛を
ソロになってからはそれほど聴かなくなったが、不思議と新作は早くにチェックする御仁。いつも通りと言えばそうなのだが、活動そのものがミニマルになっていく不気味さもアリ。何度でも欲しくなる水のような作品だ。海外から帰ってきて聴き返すと、日本でしかあり得ないように聞こえたのでこれもJ-POP認定。
Andrew Chalk / 夕焼け空 一緒に帰ろう
タイトルからして反則なチョーク氏の新作。新鮮味はエロディーの方があるけれど、前作と同じトーンの淡いドローンはやはり格別。今回は10数曲パッケージされている。楽器の種類も増えて、全て同じようでその実バラエティ豊かな波紋を見せる、氏ならではの内容だった。通常版はこれまでのように掛け軸っぽい見た目のケースではなかったのだが、限定エディションではどうなのだろうか。
VIVIEN GOLDMANN / RESOLUTIONARY
音楽ジャーナリストであるヴィヴィアン・ゴールドマンをフィーチャーしたレコードで、長らく高騰していたがこの度復刻された。参加陣はラフトレードを中心にしたポストパンク・オールスターで、レインコーツやスリッツ、PilL、エイドリアン・シャーウッドなど錚々たるメンツ。本人のインタビューも収録されている価値ある企画だ。
Momus / Scobberlotchers
前作に続いて、民謡のレコードを素材に作ったモーマス流ポップス集。いわゆる飛び道具的なネタ使いは控えめで、個々の楽器をこれまで使ってきた西洋楽器が担っていた部分に当てはめている場面も多々。ややキテレツな楽曲に反して、歌詞は時流に沿っているというひねくれぶりも◎。
Våga / Mamman Och Pappan
Discogで見かけて、ジャケットが可愛いのと「スムースジャズ」のタグが付けられていたことから購入。本人らにメールすることで直接送ってもらえた。
思った以上に90sで幼少期を思い出したり。