旅行記2018 pt1. アイルランド


無事に海外への取材旅行から帰還できた。出発前から帰国直前まで、多くのご助力をいただいたことに、この場を借りて感謝申し上げます。特に大きな問題はなく、気に入っていた帽子を置き忘れてしまったくらいのものであった。
取材は現在執筆している著作にまつわるものだが、ここでは今回訪れた国々の様子を記録しておこう。滞在期間は一ヶ月弱、アイルランド2週間、ロンドン2日、ドイツ10日、それぞれアバウトだがこんな感じです。


前回の飛行機はKLMを利用したが、今回はキャセイパシフィックにした。しかし、9月頭の台風23号による被害で関西空港が一時ストップし、結局振り返ることとなった。フライト自体は順調で、乗り継ぎの香港からダブリン空港への飛行機はガラガラ。隣の席2つを使ってベッド代わりにできた。個人的にキャセイのシェアが伸びて、より日本からヨーロッパ圏へ行きやすくなってくれたら嬉しい。
入国審査はアイルランドに関しては前回とさほど変わらなかった。が、のちに他国へ渡る時は少しだけトラブルに見舞われることになる。アイルランドでは滞在期間と目的、そして宿泊先を明示するように求められた。前回もそうだったかな?


空港のカフェで時間を潰した後にゴールウェイ行きの高速バスに乗る。ゴールウェイはダブリンに次ぐ主要都市だが、その規模は小さい。まずはここで1週間と少し滞在するため、宿泊先のドミトリーホテルに向かった。アイルランドの都市部全般に言えることかもしれないが、ゴールウェイは観光スポットなので、長く滞在する旅行者は少ないようだ。私の泊まった8人部屋で3日以上滞在していた人はおらず、入れ替わりはとても激しかった。一人だとしり込みしやすいが、挨拶とどこから来たかくらいは言えた方が良い。当たり前をしておくだけで個人間の距離が縮まることもある。
ここでゴールウェイへの移動手段となった高速バスについて今一度書いておく。
私が利用したのはバス・エイラーンで、空港からゴールウェイ・バスステーションを走るコースに乗った。片道18ユーロとなっていたが、オンラインで予約したらなんと10.6ユーロ、さらに往復チケットが18ユーロだった。予約後に送信されたレシートを搭乗時にドライバーへ提示するだけでOK。かなり手軽かつ安い。帰りのバスでは発行されたレシートが必要なので忘れずに保管しておくこと(ドライバーによってスタンプされる)。アイルランドではバスが主な交通機関になっているので、電車に乗る機会は少ない。一度は電車にも乗ってみたかったが、空港から直でいけるバスをどうしても使ってしまうのだった。なお、ゴールウェイ・バスステーションは電車のゴールウェイ駅と直結している。ダブリン市中央のヒューストン駅へ向かう路線は片道18ユーロくらい。また、この時は1ユーロ=131円。


上の写真はダブリン駅の一角。古い建物が多いため、補修工事がそこかしこで行なわれている。高い建物や、いわゆるオフィスビル的なものは少ない。電線がないおかげもあり、空がすぐ目の前にある。下左がバス・エイラーンのレシート。予約していない場合は、ドライバーから駅内の券売機で買う。中央はゴールウェイへ向かう途中の建物。子供たちによる誰かの似顔絵あるいは肖像画が掲示されていた。肌色がピンクとか青なのが良い。右はゴールウェイの中央にあるエア・スクエア広場。


取材先を訪れるまでの数日間はホテルとゴールウェイの繁華街を行き来した。といっても、歩いて3分もあれば街の中心に辿り着ける上に、繁華街も30分あれば踏破できるほどの規模である。スーパーなど生活必需品を揃えられる場所を確認した後は街頭をウロウロして初日を終えた。古い建物を利用したホテルが多いようで、近年増加の一途を辿っているようだ。空き家を売りに出している広告もいくつか見かけた。飲食店はカフェとパブが多く、ファーストフードといった企業のフランチャイズはあまり見かけなかった。繁華街にマクドナルドが一軒、電車のゴールウェイ駅構内にスターバックスが一軒あったくらいか。あとは見慣れぬブランドが片手で数えるほどである。写真はスーパーサブス。
スーパーは数種類のブランドが密集している。個々の特徴については次回。


今まで訪れた国がみなそうであったせいか、今の私は経済的に貧しい土地の方が合っている。消費を楽しむ文化のない国、と言い換えた方が適切かもしれない。それはそれとして、アイルランドの物価は安いとは言えなかった。これは後にベルリンへ立ち寄った時に改めて実感することになる。


ゴールウェイ市中心部にあるエア・スクエアは広場であり、それ以外の説明をするのは難しい。この旅行中は天気の良い日が続き、日差しも強かった。軽食を買いベンチで食べていると、大量の観光客と学生たちが前を歩いていく。やや京都市内や三宮っぽい光景だ。繁華街の規模と密度も似ている。神戸に至ってはすぐそばに海があるし。
ゴールウェイは湾港にできた街なので、必然的に海外と貿易することで発展してきた。港にあるモニュメントの中にはスペインから贈られたものもあるそうだ。


海沿いを歩くとソルトヒルと呼ばれる海岸にたどり着く(下段右)。去年行ったときと比べて明らかに天気が良かった。湾へとつながる河を逆に辿ると、ゴールウェイ大聖堂が拝める。すぐそばには大学があり、早朝は学生たちがごった返す。ロンドン程ではないが、人種もまばらなため歩いてても疎外感を抱きにくいのは良かった。
最後にアイルランドの人は信号を守らない。ここもベルリンに行った時にギャップを感じる点だった。車が逆に気を遣うように見えるくらいだが、自然な風景のようだ。
下段左はゴールウェイの表通りの一角だが、とにかく弾き語りが多い。観光客に向けているのだろうが、30メートルおきにヴァイオリン、バンジョー、ボンゴ、独唱などが立ち並ぶ。障がいを持った人々の演奏も行なわれており、腰を下ろすベンチも妙に多いこともあいまって観光地であり公園のようでもあった。次に来た時は私も友人たちと何か演奏(のようなものを)してみたい。中央は脇道に入ったところで、カフェやパブが立ち並ぶ。ある程度予想できたが、みな昼間から飲んでいる。コーヒーよりもビールの方が多い。


ついでに訪れたお店について記す。下段左と中央は古書店・チャーリー・バーンズ。かねてからお薦めされていた書店だが、確かにスゴかった。まず、店内の壁が本棚でほぼ埋め尽くされていることに驚くし、すべてが手に取って読めるし買えるのである。ツタヤの図書館なぞを見せつけられていた身分からすれば、これだけで心が落ち着く。イェーツ、ジョイス、オスカー・ワイルドらがズラリと並ぶ棚の横にはペンギンブックスの古本が敷き詰められた棚がある。店の外にはディスカウントされた本を収めた棚がこれまた店を取り囲むように設置されている。なぜかグラフィティの本を購入した。下段右はカフェ・レンツォ。何となく見た目で決めて入ったカフェだが、チャーリー・バーンズが委託で本を売るなど、縁のあるお店であった。ハロウィンに備えた、控えめな装飾が確認できた。ここは居心地が良かったので3回くらい訪れることになる。妙に量の多いコーヒーが2.5ユーロ(330円くらい)、ばら売りのフルーツがそれぞれ50セント(70円ほど)。今回の旅で思い出したようにバナナを貪ることになるのだが、ここは記念すべき一本目であった。


写真は撮っていないが、チャリティショップが至るところにあるアイルランド。ゴールウェイの中心部だけでも8軒はある。休日は教会前でも蚤の市があるため、それを含めれば相当の数となる。女性ものの服や、見たことのない歌手のCDが多い印象で、私はヴィンテージの絵ハガキをお土産として購入。


ここから先は昨年と同じ取材先を訪れた。簡単に言えば、アイルランド西部の端っこ手前で土地を開拓して住んでいる人のお宅である。これについては、別の場所で発表する機会があるため、ここでは保留。左の写真はその方と合流した村、ゴート。訪れるのはまだ2回目だが妙に懐かしい。ここまでくると、あるのはパブ、デリ(コンビニ的な施設)、床屋、1ユーロショップ、スーパーだけである。


右は取材に向かう途中の風景。バレン高原と呼ばれる有名なスポットだが、まさかこの付近に人が住んでいるとは思わないだろう。しかし、彼ら彼女らはここで生きている。もしかしたら、一帯を開拓したのは皆アイルランド外から来た人なのかもしれない。途中には湖があるのだが、曇り空と併せて眺めると沼のようである。しかし、今年の夏はここ20年で一番の快晴で最高のビーチになったと教えてもらった。
バレンにはストーンヘンジ的な岩のオブジェが現存し、モハーの断崖(絶壁。落ちたら死ぬ)も有名だ。だが、いずれもまだお目にかかっていない。移動手段は旅行会社のツアーバス以外は自分の足、またはヒッチハイクを頼らねばならないようだ。一度だけ馬車を見かけたこともある。いつか「街までお願いします」と尋ねるつもりだ。

取材を終えてゴールウェイに戻る。パブなどを覗く余裕もないまま、次の日の朝にダブリンへと発った。
ダブリン、そしてロンドンの記録へと続く... (18. 11/10)