REINIER VAN HOUDT / Igitur Carbon Copies (feat. David Tibet)
こちらはレイニアのソロ。本職はピアニストだが、ケージやフェラーリ、ソニックアーツ一派のスコアも度々演奏するかたわらテープ・コラージュも時折披露する。NWWや初期C93のようなパンク以後のフォロワーたちも咀嚼しているところもポイントか。本作はどうやらマラルメによる未完の物語をコンセプトにしたらしく、デヴィット・チベットがここでも朗読役として参加している。ヒグラシの鳴き声からガラスがぶつかり合うような具体音、ロバート・アシュレイのようなブツブツ声までミックスされた混雑ぶりだが、上のC93のアルバムと同様NWW的なぶっ飛び方をしておらず、どこか毅然としている。過剰なオーヴァーダブなどもなく、そこかしこに音を放置しておかない規律のようなものさえ垣間見えるが、それ故にB面の冒頭の足早な展開に緊張感さえ芽生えるのであった。その真面目さと、かくも断片的で不明瞭な音響の共存が可笑しいと同時に美しい...とはいえ、ソラブジの長すぎるピアノ曲をわざわざ演奏するような人なので、そのスポーツマン的偏執を考えれば納得か。今年の春に出たカレント93『The Stars On Their Horsies』はノンクレジットだが、鮮やかなコンクレートぶりは間違いなくレイニアの仕事であろう。あちらもかなり良かった。