VENTURE BROSについてのあれこれ

サントラも最高

英訳の仕事があったので、その勢いで英語圏の小説やアニメを見たり、調べたりしていた。日本製のものは内容がわかるので、台詞や字幕をチェックできて面白いし、まあまあ勉強になる。すぐに忘れてしまうので筋トレやプログラミング共々、毎日接することが大事だと思う次第です。

もっぱらチェックしているのはカートゥーン・ネットワークはじめとした米国のアニメ・チャンネル。その中でかねてから注目もしていたのが『ヴェンチャー・ブラザーズ』である。既にシーズン6まで進行中、放映開始から13年もの月日が経っている人気シリーズにも関わらず、日本では一切情報が入ってこない有様なので、無い知恵絞って見ている。歯抜けで見ているため、筋書は今一つ整理できていない。youtubeには放映枠であるアダルト・スウィムが公式で名シーン(?)だけをアップロードしているが、それらだけで本作のキワドい部分が察せられよう。一応DVDやブルーレイもあるので、少しずつ勉強込みで見ております。『アドベンチャー・タイム』と違って、ゴア表現、セックス描写など、下世話な部分が多すぎるために日本では無理だろう、たぶん。
作画に関してはFLASHで制作されているのだが、シーズン4あたりから目に見えて水準が上がっており、違和感など全くない。アクションシーンは結構力が入っているし、ヴィジュアル目当てでチェックしている層も少なくはないだろう。
なので、今回はここで軽く紹介することにした。内容の読み間違いが多いので、鵜呑みにしないで、「こんなキャラがいるのね」程度に思ってほしい。いずれデータベースみたいなものも作りたいな。いやー、それくらいハマってしまいましたとも。『THEビッグオー』と並んで、我がサンプリング発掘魂を刺激する殿堂入り。スコアもジム・フィータスだし(それで知った)。日本で一切無視されていると書いたが、コアな方はいらっしゃるもので、日本語字幕を添えてアップロードまでされていた。実にわかりやすく、有難い計らいである。これだけでも見たくなりますよねえ。

『ヴェンチャー・ブラザーズ』の下敷きになっているのは60~70年代のカートゥーン、アメリカン・コミックスを筆頭に多くのポップ・カルチャーなのだが、キャラクターの構成はハンナ・バーベラ『ジョニー・クエスト』を骨格にしている。飛行機に乗っているシーンはまんまで、他にも『スーパーマン』、マーヴェル・コミックスといった往年のアメリカン・コミックスはもちろん、ビッグバンド・ジャズをバックにしたアクションというスタイルは日本の『カウボーイ・ビバップ』も大きく取り入れている(アダルト・スウィムの放映第一号は『ビバップ』なのだ)。
主人公はチーム・ヴェンチャー、詳しく言えばドクター・ヴェンチャーことラスティ、その息子であるディーンとハンク、ボディガードのブロック・サムソンらだが、ストーリーが進むにつれて、ライバルであるヴィラン(悪役)のモナーク、その助手であり妻であるドクター・ガールフレンド、モナークの手下である「ヘンチマン21」らにもスポットが当てられていく。風呂敷を広げ過ぎている感も否めないが、あらゆる(どこかで見た)キャラクターが入り乱れるのも『ヴェンチャー・ブラザーズ』の魅力なので、まずはイメージ検索だけでもいいから、どんな面々がいるか確認してみて欲しい。

パロディだけで構築されているわけではなく、骨太なストーリーも(一応)含んでいる『ヴェンチャー』だが、その代表が後半明らかになる兄弟のクローンである。突然死んでしまうヴェンチャー兄弟、スーパーマンと『イージーライダー』ラストの合わせ技という演出にビビるが、深刻な状況になってしまったかと思うと、ラスティは大量のクローンを研究所に保持しており、それ以降、ことあるごとに兄弟は死ぬハメになるという怒涛の展開になる。現在のシーズンではクローンが全て死に絶え、オンリーワンの存在になった兄弟だが、その現実を受け入れるくだりは中々ヘビーなくだりである。台詞も面白いのだろうど、自分の英語力ではまだまだ読み取れていない。
兄弟のハンクとディーンだが、前者はわんぱく、後者は優しく内向的という方向付けが一応なされている。ハンクはブロックになついており、彼がボディガードをやめて移籍してしまった特殊部隊・スフィンクスに入れてもらうように懇願するシーンもあった。自分をバットマンだと思いこむことで、超人的なアクションを見せるなど、少しクレイジー、いやいやインセインなところもある。カーチェイスでは追ってくる敵をマシンガンで応戦したりとアクションパートでは大活躍。更にはセックスシーンまで披露する。私はシーズン4のややロンゲのデザインが好きである。ちなみにこのデザインは自分のもとを離れてしまったブロックへの憧れから取り入れたものなのだという。ジャケットもブロックのそれを使っている。
ディーンは大人しく、かつナイーブな性格で、色恋沙汰が妙に多い設定である。暴力沙汰は嫌いで、物騒な場面に出くわすると激昂して飛び出してしまうことも多い。彼の名前はロジャー・ディーン、プログレのジャケットでお馴染みのイラストレーターにちなんでおり、ラスティはプログレ・レコードを聴かせて彼を覚醒しようと試みたこともある。エイジアはいいけど、ピンク・フロイドの『狂気』は危険だという設定が笑える。シーズン5からガラリとデザインが変わり、日本のアニメにいそうな見た目にもなった。シーズン6では更にあか抜けたそれになり、私はこれが好きである。
学校には行かせてもらえず、睡眠学習装置のみで教育されるなど、ヴェンチャー兄弟はハッキリ言って異常な環境にある(常にヴィランに命を狙われているのもある)が、こうして「普通でない家庭」が完全にファンタジーでない塩梅で描かれているのは、やはり面白い。日本では100パーセント平穏(サザエさん、ちびまる子ちゃんなど)か、100パーセントファンタジーしかないのだが、こちらはアメリカという土壌的に「普通」や「当たり前」という認識に溺れないところが好印象。それは『シンプソンズ』や『サウスパーク』もそうだ。自分以外の人間や文化があるという前提で作られている。スタッフが聡明だから、というよりは土壌の違いだろう。それにしても、クローンがいるから大丈夫という理屈で放たれるラスティの「The Boys Never Die!!」は強烈です。

『ヴェンチャー』の見どころの一つとして、あらゆる場所からのサンプリングが挙げられるのだが、自分は音楽関係のネタを優先して拾いがちである。真っ先に挙げるべきはデヴィット・ボウイだろう。悪の組織、カウンシルを統べるサヴリン(君主)として君臨する人物として、「デヴィット・ボウイ」が出ている。そのまんま、ロックスターのボウイである。『ヴェンチャー』が放映開始された頃、ボウイ本人は『リアリティー』のツアー中で倒れ、表舞台から姿を消した頃だった。ボウイサイドにも許可をとった上で登場させているのだろうが、凄い采配である。サヴリンはホログラム上でメッセージだけを発信するポジションだったが、ストーリーが進むにつれて、その姿を現す。ドクター・ヴェンチャーの宿敵であるモナークと、その助手、ドクター・ガールフレンドの結婚式に参列した時は名シーンの一つで、お供にイギー・ポップとクラウス・ノミを連れて現れるという合わせ技であった。このエピソードでは、ギルドを乗っ取らんとするファントム・リム(ドクター・ガールフレンドの元恋人)と結託したイギーとノミがボウイに謀反を起こす展開が描かれており、イギーと格闘戦を繰り広げるボウイというショッキングな光景が堪能できる。ノミは得意のソプラノ・ボイスで耳をつんざくという個性に即した攻撃を見せるほか、登場する度に「ディンド~ン」という決め台詞まで披露する暴走振りである。結局イギーの謀反は失敗、ボウイはモナークとドクター・ガールフレンドを祝福し、鷹に変身しては大空へと去っていく。
シーズン5では乱れてしまった組織を破壊することで解体したサヴリン(このシーズン中で、サヴリンの正体はボウイ『ダイアモンド・ドッグス』に描かれている謎の獣であると推測されている。ナゼ?)は、ここでも鷹となりどこへとなく去っていく。その後、鷹は一発の銃弾に撃ち落されるのだが、それがサヴリンかどうかはわからない。ただ、ギルドは解体され、サヴリンも表舞台から姿を消したという事実が残った。シーズン5が始まった年は本物のボウイが『ザ・ネクスト・デイ』をひっさげて突然の復活を果たした時期でもある。偶然か否かは別として、サヴリンの人気は高まる一方であったが、シーズン6が放映される月、2016年1月の10日にボウイはこの世を去る。『ヴェンチャー』のスタッフも哀悼の意をこめて、サヴリンのいいとこどりの映像を公開。肝心のシーズン6でボウイの姿はなく、めちゃくちゃになったギルドの残党たちの前でドクター・ガールフレンドの口から「サヴリンは死んだ」と告げられるのであった。

ボウイ以外にもたくさんある。ハンクが唯一の友人、ダーモットと組んだバンド、シャロウ・グレイヴィーはミュージック・ヴィデオ付の曲「ジャケット」を公開。そのMVもパロディの嵐で、ジョイ・ディヴィジョン「アトモスフィア」ネタもある。シーズン5のエピローグ、ドクター・ヴェンチャーの弟であるジョナス・ジュニアの葬式では、ジュニアの仲間であるキャプテンが弔辞を読み、レクイエムとしてクラッシュ・テスト・ダミーズの「ンンン」を歌う。チーム・ヴェンチャーのお手伝いロボット、ヘルパーがリズムマシンとなり、参列者たちがサビをハミングするシーンは笑えます。
パロディを挙げればキリがないので、各々youtubeなどでチェックしてもらえば良いのだが、最後に最近のシーズンのあらすじを書いておこう。間違ってても、許してください。

■シーズン6
シーズン5の終盤、ガルガンチュア2での戦いでギルドは崩壊した。そして宇宙ステーションからの脱出時、チーム・ヴェンチャーはジョナス・ジュニアのと死別、更には地球にあったヴェンチャー・インダストリーも失ってしまう。焼け焦げた施設を前に行なわれるジュニアの葬式。頭を痛めるラスティはジュニアの遺産の分配について、弁護士から話を聞かされる。たいして期待していなかったはずの遺産だが、ラスティの取り分はジュニアのスーパーサイエンス・テクノロジー一式と、ニューヨークに本社として構える超巨大な高層ビルであった。あまりのショックに卒倒してしまったラスティに弁護士は呼びかける。
「起きてください、Mr.ヴェンチャー。あなたは大富豪になるんですよ」。
ジュニアのほぼ全てを引き継いだラスティは、彼の盟友であったキャプテンのマネージメントのもと、多くの団体への寄付といった事業も存続することになる。ハンクとディーンはニューヨークでの生活に心躍らせ、ウキウキ。ハンクは向かいのビルに住んでいる可愛い女の子一目ぼれ、ディーンは大学への進学を決めるのだった。キャンパスではかつてニューヨークで出会ったヒーロー、ブラウン・ウィドウと再会し、奇妙な学園生活が始まった。シーズン4からボディガードを離れていたブロックも所属する組織O.S.I.内の命令でファミリーの警護に復帰、トレードマークであるシャツとジーンズ、サバイバルナイフをもって再び登場した。同じくO.S.I.で、ボディガード代行を果たしていたヘイトレッド軍曹(ペドフィリア)は本社ビルの窓口に腰を据えて警備全体を統括するようになる。
引っ越してきたチーム・ヴェンチャーだが、ここはニューヨーク、数多くのヴィランが蔓延る土地でもある。そんな危険からリーズナブルな価格で守りますよ、とスーパーヒーローによる自警組織、C.A.L.がラスティに売り込みをかけてくる。キャプテン・アメリカみたいな見た目をしたトッシュ、ワンダーウーマンをモチーフにしたアマゾネスなど濃い面子が揃う。ビジネスライクなトッシュは人々を守るのはアマチュアのスーパーヒーローだとバッサリ。更に驚くべきはヴェンチャー一行のビルの向かいにある建物は、スーパーヴィランたちの社交場にもなっていた。ハンクが惚れた子はそこの主とも言えるワイドウェイルの娘だというのだからややこしい。
さて、宿敵・モナークは元部下であり今はパートナーであるヘンチマン21、そしてドクター・ガールフレンドと屋敷で体制を整えていた。そんな時に新聞で見かけたラスティ移動の報せ。ライバルが大富豪になることを快く思うわけがなく、モナークは21と共にビル内に潜入するなど、嫌がらせと偵察をあの手この手で果たそうとする。ガールフレンドはギルドの管理などで大忙し、かつて謀反を起こしたファントム・リムも緊急事態ということで和解し、ドクターZやラディカル・レフトといった残党と共に再建の案を練っていた。
ある日、モナークは自身の父親がラスティの父であるジョナス・ヴェンチャーと交流があったヒーロー、ブルー・モルフォであることを知り、大ショック。まさか自分がスーパーヒーローの子供だっただなんて・・・と動揺するも、秘密基地(まんま『バットマン』です)の設備に驚く。その間、ギルドが弱っている時期に乗じて台頭せんとするワイドウェイルがガールフレンドに接近。弱体化したギルドを援助することも兼ねて、自身を中心メンバーの一人に入れることで合意した。同時に彼はシンクタンク(表の姿はディーンらが通う大学の講師)をはじめとする高ランクのヴィランらを結集し、チーム・ヴェンチャーの命を狙い始めていた。ワイドウェイルが関心を持つのはドクター・ガールフレンドのみ。モナークはいらないので、仲間であるコピー・キャットを派遣しては引き離そうとしたりとあの手この手を尽くす。自分らの命はもちろん、宿敵を横取りされるわけにはいかないと、ワイドウェイルらを暗殺しようと試みるモナークは、その姿にブルー・モルフォが使えると判断したのだった。ちなみにブルー・モルフォはグリーン・ホーネットのパロディである。刺客の一人であるヴィラン、レッド・デスはおぞましいレッド・スカルな顔とは裏腹に、子煩悩なナイスミドル。しかし、やる時はやる強面だ。一時はブルー・モルフォを抹殺せんと飛来したレッド・デスだったが、モナークらは彼を説得し、共同戦線を張ることになる。

長すぎ!!とはいえ、こんなもんであろうか。10月にはブルーレイも出るとのことで、楽しみが一つ増えた。英語の勉強も兼ねて、GO TEAM VENTURE!!といきたいものである。


(16.9/1)

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