"Unfortunately, it’s true: #VentureBros has been canceled. We got the highly disappointing news a few months ago, while we were writing what would have been season 8. We thank you, our amazing fans, for 17 years of your kind (and patient) attention. And, as always, We Love You." 2020年9月8日、カートゥーンネットワーク(CNN)内の深夜帯・Adult Swim内で放映されている『Venture Bros』の打ち切りが原作者であるジャクソン・パブリックとドク・ハマーそれぞれのTwitterで発表された。投稿の数日前に、制作中のシーズン8が頓挫したと読める関係者の証言が記事になった矢先の出来事であった。ファンダム内の衝撃と動揺は1週間経った今でも収まることなく、Adult Swimがアップロードしている番組のダイジェスト動画の多くに打ち切りを嘆くコメントが寄せられている。 有志によって番組の存続を希望する署名も立ち上げられた。
『リック&モーティ』のようなタイトルと比べてターゲット層が狭いせいか、『VB』が日本へ輸入されることはなかった(具体的な内容は後述)。メディアでも、本邦で『VB』を取り上げたものはなきに等しいと思う。 『VB』ってこんなアニメ 『VB』のアイデアはジャクソン・パブリックがアニメーション『The Tick』に脚本家として参加していた時期に生まれた。パブリックがシナリオの裏に書いた少年二人のスケッチ。これが後のヴェンチャー・ブラザーズ、ディーン&ハンク・ヴェンチャーとなる。パブリックの頭の中にはすでに自身の作品の構想が練られており、そのモチーフはハンナ・バーベラ制作の『ジョニー・クエスト』だった(日本でも『科学少年JQ』として輸入されていた)。幼いころに見ていた『ジョニー・クエスト』のモデルが1910年のSF小説『トム・スウィフト』だったことに気付いたパブリックは、『ジョニー・クエスト』を叩き台した自分だけのユニヴァースを練り始めた。少年たちとハイテクノロジー、冒険心に満ちた父親とあちこちからやってくるヴィランたち。これがそのまま『VB』の核となった。 ![]() 筋書きはこうだ。天才科学者兼スーパーヒーローであるジョナス・ヴェンチャーの息子、ラスティは幼いころから父親の冒険に引っ張りまわされ、父親の死後も世界中のヴィラン(悪党)から狙われるようになった。父からスーパーサイエンスとヒーローとしての地位を受け継いだラスティは、自分と生まれたばかりの息子たちを守るためにボディガードのブロック・サムソンを雇う。ラスティをアーチ(宿敵)として狙い続けるヴィラン、マイティ・モナークとドクター・ガールフレンドのコンビたちの嫌がらせに耳をふさぎながら、ヴェンチャー兄弟は青春(失恋、ハロウィン、バンド結成、『イージーライダー』のラストシーン、特殊部隊入り、ミュータントとの足相撲など)を謳歌する。 兄弟の片割れ、ディーンは自分たちがオリジナルの代替であることを知ってアイデンティティ・クライシスに苛まれるが、もう一人のハンクは、それを「アメリカン・コミックスのヒーロー的」と受け入れてディーンを諭す。ディーンは、兄弟(=同じクローン)のおかげで自己を確立する。人はなりたいものになれるし、何者であっても自分なのだと。 ポップ・カルチャー総覧(騒乱) 『VB』をハンナ・バーベラのパロディ以上のものにしているのは、パブリックと共同原作者ドク・ハマーが抱く、ポップ・カルチャーへのオブセッションだ。彼らはシナリオを自らの青春時代にいた俳優や、音楽または映画からの引用で埋めつくす。劇中のセリフ一つからシークエンスまで、ジャーゴンとオマージュだけで構成されている時間は少なくない。個々の「ネタ」は他と対照的になることもあれば、本質的に重なることもある。 『VB』がポップ・カルチャーの道化たち、ボウイを筆頭としたパフォーマーたちを大挙させていることは上で触れたテーマと無関係ではない。『VB』はポップ・カルチャーを多面体として捉えることを通しながら「自分(個人)とは何か」を問い続ける作品なのだ。 エピソード単位の作品紹介や、作曲を担当しているJGサールウェルへのインタビューは弊誌『FEECO』の2号に掲載している。宣伝で終わってしまい恐縮だが、よければご一読を。 |
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