MOGRE MOGRU / DIVE ACTION 1 (2022)

「踊れないことに特化したDJイベント」というテーゼとともに2017年5月2日から始まった「盤魔殿」は、現在の時点でほぼマンスリー化しており、常に凶事をもって更新されていく現代の陰ひなたに咲く人間性という花の畑のようである。その花は享楽的に踊るダブパーティーやレイヴから、盤魔殿のように踊らずして立ち尽くす場まであまねく種が蒔かれており、人が集まり音楽鳴るところに起こる思惟をもって開花するものだと考える。芸術やアートといった語で形容してしまうと、限られた人間だけのものとして矮小化したように聞こえるので、ここでは使用を控えたい。もっと根源的かつ精神的な、生理反応としての音楽および場と呼ぶべきだろうか。推量ばかり目立つのは、当の筆者がいまだ盤魔殿に足を運んだことがないという体たらくゆえ、である。いい加減に現場を体験し、ここまで書いてきたことの真偽を自ら確かめたい。

MOGRE MOGRU(モグレ・モグル)は盤魔殿内で結成された即興アンビエント・ユニットとのことである。編成は剛田武(フルート、クラリネット、ヴァイオリン、アコーディオンなど)、Tanao(ギター、ボイス)、Aura Noir(ミュージックソー、リコーダー、グロッケンシュピールなど)の三人で、『DIVE ACTION』と銘打たれたライヴ録音が現在3つまで発表されている。漠然とセクション分けくらいはしているのか、朗読が音頭をとるように始まる時もあるが、即興とうたうだけあり、演奏はそれぞれがモニターからの音に反応しているようだ。習練や模索の結果、あるいは自然発生的なそれにも聞こえる音響は、複数の楽器で分厚い一つの音を作るのではなく、個々の楽器がソロ的に鳴らされる劇めいた展開は、BGM的に同化することもできれば、写真の細部をクローズアップするように各パートへ集中することもできる。『DIVE ACTION 2』の1曲目(ライヴハウス吉祥寺NEPOにおける2021年12月録音)や、『DIVE ACTION 3』の1曲目(渋谷のDJ Bar EdgeEnd録音)にはそれが顕著だ。
『DIVE ACTION 1』に収録されている演奏には、『2』以降のナラティヴな性格はあまり表出せず、手探りで音響を築いていくといった趣向であるが、2曲目である2021年10月録音(初めてMOGRE MOGRUの名で行なった演奏とのこと)には、以降の音楽の芽が出ている。後半にThrobbing Gristle「Persuasions」が聞こえてきた時はチャネリング的様相であったという当時のTGのライヴを想像させ、再生が終わるころには最近読んだ書籍にあった「優れた思惟は音楽となる」というカバラ伝道師の言葉を思い出させた。後は身体に音楽を触れさせてやるだけである。演奏者にとっても聴衆にとっても、自らが立つ空間から受け取ったモノを音楽とするトランスグレッシヴな解釈というものがあり、いろいろな意味で閉塞した現在において、『DIVE ACTION』的な演奏と盤魔殿という場は筆者に必要な体験であることが示唆された。早く行きたい。


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(22.6/3)