Apple Musicを使って、右も左もわかってない話

アーティストのカタカナ表記が辛い

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遅れに遅れてApple Musicを使い出した。これはAppleが提供するサービスで、サブスクリプションと分類されるものだ。簡単に書くとiTunes Storeにアクセスして、音楽データをストリーミングで再生・ダウンロードできるようになっている。月額は980円で、Apple Musicは初月含めた3か月間は無料で使用できる。Google Playなど、他社も似たようなサービスを展開しており、扱っている音楽に差異こそあれど、メジャータイトルは大抵聴き放題という状況になった。漠然とし過ぎた表現だが、マニアックなジャンルを集めている人以外は大抵満足できてしまうだろう。マニアックとされる分野ですら、その中でメジャーなものは聴けるケースも多い。
iOSが8.0以上でないと使えないサービスで、つい最近まで4(iOS7から先に行けない)を使っていた自分には無縁のものであったが、とうとうiPhoneを新調したのもあり、手を出すことになった。更にこれは後から知ったのだが、PC上ではiTunesで同様のサービスが利用できる。もちろん、スマートフォンで聴く分にはそちらのiOSをアップデートしないといけないのだが、家で使う分にはこれで充分という人も多いと思う。世間からズレにズレてはいるが、こうして私もトレンディな音楽大好き人間の仲間入りである。ああ、書いてて目まいが・・・

心にもないことはさておき、一通り使ってみた感想を備忘録としてまとめてみた。まだまだ使い慣れていないので、「単にオメーの操作がおぼつかないだけやろ」と言われることも多々書いていると思う。あまり気にしないように。

■クラウドとローカルが統合される
Apple Musicのデータベースと自分のiTunesライブラリが統合されるのには驚いた。これにより、ライブラリにあるミュージシャンがとりあえずはiPhone内で記録されることになり、本体に入れていないアーティストとアルバムの情報だけが登録される。ネットに繋いでいれば、この情報からデータベースにアクセスして、再生が可能になる仕組みである。いざ統合してみると空のデータが大量に並んでおり、本体内に入れている分だけ再生する時でもこれらが目につく。Apple Musicをオフにすれば、従来のマイミュージックと同じ仕様になるのだが、この切り替えは地味に面倒くさい。iPodに全部ぶち込んでいた人にとっては自然な光景かもしれないが、最低限の、交通機関内で聴けるようなものだけ入れている人間にとっては、ちょっとわずらわしい。ストリーミング再生のためにいったん統合するのは理に叶っているかもしれないが、そこまで依存していないユーザーにとってはお節介にも感じる。プレイリストを作って、そこに再生したいものだけをまとめておくと若干マシになるため、自分はこうしている。それでも、Apple Musicからストリーミングで聴いていたものはダウンロードしていない限りプレイリストに追加できないし、反映されない。

■あくまでiTunes上の情報に準拠する
曲データはiTunes越しにCDDBから取得されたものが通常だが、Apple Musicをオンにした状態で再生すると、ストアに登録されているデータ優先で再生される。アートワークを自分で指定したもので試すとわかるのだが、要は勝手に差し替えられてしまうのだ。登録している情報はまだ完ぺきではないせいか、時には違うものを表示してしまうこともある。具体的に例を挙げて書くと、最近取り込んだ電気グルーヴのライヴ音源はアートワークが登録されていないのか、数年前に出たベストのそれが割り振られるようになっていた。流石に違う作品のものを持ってこられると困惑する。些細な問題だが、この例に限らず、アルバムではなく曲単位で管理されていることがわかる。

■マイミュージックと差別化できていない
驚いたのがファイル再生時に曲名で判断していると思しき点である。これまた例えが電気グルーヴなのだが、「Shangri-La」を再生するとしよう。マイミュージックにライヴ音源がある状態で、Apple Music上からシングル版を再生してみると、マイミュージックのそれが優先して再生されてしまう。曲名が完全一致しているとこうなるのだろう。流石にこれは落ち度と言ってもいいだろう。設定でいじれば何とかなるんじゃないかとも思うのだが、念のため書いておく。

■大人の事情が立ちはだかる
サンプリングが激しいクラブ・ミュージックなどは大人の事情で収録されていない曲が多い。またまたまた電グルで例えてしまいますが、『VOXXX』のラストを飾る「ハローミスターモンキーマジックオーケストラ」がないという様で、サンプル元の都合で削除されたのだろうか。このように、歯抜けになっているアルバムも多く、曲順がバラバラのものすらある。大急ぎで登録したのか、まだまだ統一できていないという歯がゆい現状がある。電グルばかり例に挙げてるのは許してください。

クラウド化により、ライブラリ、PCがそのまま持ち歩けるような感触になったのだろうけど、UIがまだまだ追いついていない印象を受ける。現にiOS9にしてからの「ミュージック」は最高に見辛い。プレイリストをレコメンドしてくれる機能をありがたいと思う人もいるだろうが、機能のオン/オフ、表示/非表示など、見た目上のデザインはこちらで干渉できる余地が欲しい。重箱の隅でしかないが、ここまで至れり尽くせりだと逆に細かい粗が気になってしまうのも事実だ。

サービスの話は上で終了。次に気になったのは、ここまで手軽にアクセスできるようになって久しい音楽において、消費の仕方で(勝手に)議論が起きる。データとフィジカルでは違いがある云々の議論は最初にmp3が出た時と同じで、必然的に発生するものだから今更正誤に当てはめるのもナンセンスという気がする。アーティスト側もサービスを理解した上で作品をリリースないしは会社側に委託しているのだと思う。最新作ではアノーニをストリーミングで再生したが、現物が届く間のラグを埋められるのは素直に嬉しい。もちろん音質的には限界があるストリーミングなので、フィジカルにがまだまだ及ばないのが現状(ハイレゾ音源、24bitといったフォーマットで出すアーティストも増えているようだ)。結局、フォーマットに見合った質へと落ち着くため、個人的に満足できるならそれで良いし、それ以上を求めるなら他の選択肢をとれば良いはずだ。「プレーヤーにセットして、音が鳴り出す前の静寂がないとダメ!」なんて言われると、肯定も否定もしようがなく困ってしまうのだが、現実にそういう人もいる。そうでない人もいる。アーティストのフォーカスにこの問題が入っていない以上、聴き方と音楽は全く別の話。
データが主となった市場では、フィジカルを売るのは難しい。レコードはバブルのようだが、それも長くは続かないと言われている。音楽ではなくフォーマットを消費することに囚われる感覚は、世代的にも自分は遠い人間なのであまりピンとこない。だが、支えたいアーティストであれば最もダイレクトに恩恵が行くようにするだろう。自分は出来る範囲ではあるが、そうしている。それは使命だとか形式に従っているわけではなく、単にそうした方が良いと思っての判断である。自分はデータもカセットもCDもレコードも買うが、これらフォーマットに払っているわけではない。誤解を招きそうだが、作品に払っている自覚もそれほどない。アーティストそのものに払っていると言えばいいのか。こうした姿勢は音楽産業に限らず、ゲームでもよく見る。もっと根源的な認識の問題であろう。

回線制限が怖いので高音質での視聴、更には音楽自体を聴かないという人もいる。これは音楽離れとか、漠然とした現象で片づけられるものではなく、インフラやそれを取り巻くビジネスの問題もあるはずだ。自分は了見が狭く、好きなものしか見たくない人間なので、よく語られる音楽の未来云々にはあまり興味がない。どんな状況でもやる人はやるし、支えられるだけの土壌と成果があるのならば、相応のリアクションがあると考えるからだ。音楽に限らず、他の方法で表現することだってあるだろう。その時はそれに見合ったお金や時間を払うだけである。何が言いたいのか、よくわからないまま終わります。

(16.5/12)

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