Nurse With Wound 編集盤探訪

どれも買いやすいですよ

ここ最近Nurse With Woundの露出が多い。あくまで過去と比べての話だが、リリースごとにThe Quietusのようなメディアが記事を書いているのは珍しい動きだ。
最近注目されたのはコラボレーションで作った音源を集めたベスト盤『The Swinging Reflective』の第2弾と、第1弾のリマスター+音源追加をもっての再発だろう。この2枚があればNWW初心者はもちろん、何かの事情でコレクションを手放してしまった元ファンだって手軽に振り返ることが出来る。この2枚に加えて、2005年にキャッスルから出たベスト盤『Livin' Fear of James Last』があると尚手っ取り早い。
最近何から手を出していいかわからないと尋ねられたり、The Quietusが幾つかのアルバムをピックアップしていたりと重なったので、自分も似たようなものを書いてみようと思ったが、選ぶのが大変。なので、上の3枚のベスト盤を紹介してみる。ノイズ・インダストリアルというタームに限らず、幅広い層のファンが出来ることを願う。拙文かつ量だけ無駄に多いのはいつものことである。

The Swinging Reflective

◆Dead Roads / Cradle Your Snatch / The Little Seed
元パートナーのダイアナ・ロジャーソンが出した作品群から抜粋してメドレー形式にまとめたもの。「デッド・ローズ」のスウィングぶりにいきなり驚かされる。彼女はレインコーツ、スリッツ、そしてルーダスに代表される女性バンドの登場に励まされる一方で、ホワイトハウスの反道徳的アジテートから表現のエッジを目指す情熱を得た。

◆The Frightened City   
トニー・ウェイクフォードとの共作『リヴェンジ・オヴ・セルフィッシュ・シェルフィッシュ』より。NWWとしてではなく、両者の名義で出したことからもわかるように、どちらか単独では成し得ない着地を見せた名作なので是非多くの人に聴いてほしい。実験音楽とフォークの融合とはデヴィット・チベットが目指したコンセプトだが、それを一番音像化出来た例だと個人的に思う。この曲はちょっとしたモンド要素あり。

◆The Window On The World   
絶滅危惧種認定しても差し支えない、ヨーロッパ式田園サイケデリック、それも三十年選手というレジェンダリー・ピンク・ドッツをプロデュース(ステイプルトン曰く「プロデュースという言葉は嫌いで、ヘルプしただけ」だそう)。バラバラのリズムでループする具体音のサンプルと、ヘナヘナなまま鳴り続けるオルガン、そして何よりもメロディアスなエドワード・カスペルのボーカルが心地よい。終盤のカットアップ的展開は流石の編集ぶり。

Brained By Falling Masonry   
NWWのキャリアを一望しても異色なロック・チューン。敬愛するクラウトロック・グループ、ブレインチケットのファースト・アルバムから大胆に切り取り、ほぼカバー曲として仕上げた大作。なんといってもクリント・ルインことジム・フィータスのボーカルと、彼に負けじと後ろで叫び続けるロジャーソンが凄い。また、彼女がNWWに参加した最初のレコードでもある。

Panzer Ruin   
カレント93が88年に出した名作『スワスティカズ・フォー・ノディー』収録の同曲をリミックスしたもの(初出の名前は「ルーニー・ルーン」)。原曲はシンプルなリズムとクラシックのサンプリングをバックに、ルーン研究家のフレヤ・アズウィンがエッダを歌うものだったが、あまりにフォークなアレンジが不満だったステイプルトンは他の収録曲まで素材にして大改造、サイモン・フィンも腰を抜かすようなサイケデリック・ナンバーに作り変えてしまった。カレント93の来日公演時でも演奏された曲で、このバージョンに近いアレンジだった。

◆Animal Or Vegetable   
10インチ・シングル『クラム・ダック』より。本人が「クラウトロック・トリビュートとしては最高の例」と自慢する一曲。ステレオラブからアルバムのプロデュースを依頼されるも、クラウトロックのアイデアを盗んでいる(≒俺の方が詳しい)という主張から拒否し続け、結果リミックスに落ち着いた答えが本作と「エクスプローディング・ヘッド・ムーヴィー」である。後者はノイ!の「ハロガロ」をそのまま使った原作を活かしたものだったが、こちらはファウストを全面的に使用している。例えばドラムのビートは『ソー・ファー』1曲目からのモロ使い。

◆Duelling Banjos   
ユナイテッド・ディアリーズ初のコンピレーション『ホイスティング・ザ・ブラック・フラッグ』より。実はオリジナルと異なるmixになっており、終始刻まれていたドラムがなくなっている。私はこちらのバージョンを先に聴いたので、オリジナルの方に違和感を抱いてしまったり...。ジョン・ケージとデビット・チュードアによる『ヴァリエーションズ4』の上に米国の男女コメディアン、マイク・ニコルズとエレイン・メイを乗せるというシチュエーションはコラージュの醍醐味にして、ステイプルトンなりのシュールレアリズム。

Bone Frequency   
アルコール中毒に悩みっぱなしだったジョン・バランスへのベネフィット・コンピレーション、『フォックストロット』から収録。90年代前半にアイルランドで出会い、そのまま義理の息子となったピート・ボッグと、ピートと共にレイヴ・シーンを謳歌していたイラストレーター、ダラグ・グレアリーのセッションをリミックスしたもの。ダンス・ミュージック嫌いのステイプルトンがブレイクビーツに触れるという珍事。ピートは後に自身のプロジェクト、アースモンキーのアルバムをリリースする。
なお、素材集『ラット・テープス・ワン』に入っているゴリゴリのドラムンベース・トラックは彼らのセッション時に生まれたもので、私は最近までオムニ・トリオのものだと思っていた(UD初期にいたロバート・ヘイなもんだから)。

◆Simple Headphone Mind
またもステレオラブとのコラボレーションを収録。こちらは『クラム・ダック』の後に出たEPから。最初期のクラフトワークを想起させるリズムボックスと、ノイ!に近い浮遊感のあるギターが延々と続く。作品または素材としてのクラウトロック再評価が進んだ当時はどんな反応だったのか気になるところだが、今日ではマイルドすぎる仕上がりに貫禄すら感じる。

◆The Dead Side Of The Moon   
スティーヴン・ステイプルトン&デヴィット・チベット名義でも幾つかのレコードが出されているが、これはその一つ『ミュージカル・パンプキン・コテージ』に収録されている。編集盤ゆえに大幅なカットがされているが、本来は15分以上に渡る大曲である。バンド的なサウンド、更に詳しく言えばカレント93のライヴに近い構成を持っており、エンジニアにしてギターも堪能なデヴィット・ケニーと、ベヴィス・フロントのニック・サロマン、そしてゲスト参加したサイク・バンクロフトのサックスが実に60年代なムードを醸造する。オリジナルは冒頭のオルゴールが泣ける。

◆Generally Regarded As Safe   
チェコスロバキアを抜け出し、各地を放浪しながら演奏していたアラノスことペトル・ヴァストルとの共作『サントゥール・リナ・バイシクル』より。まともにフォークを演奏している瞬間も多く、英国フォーク経由でトラッド・ソングに開眼したカレント93をどうしても思い浮かべてしまうが、この土着的なテイストはアラノスだからこそ。

◆How To Destroy Angels II   
前の曲からノンストップで移行するドローン大作。盟友コイルのデビュー曲をリミックスしたもので、鐘の音が左右のチャンネルを何度をまたぐ、その瞬間がとても気持ち良い。もともとは16分ほどの尺だがこちらも半分くらいにまでエディットされている。80年代末にクリス・ワリスが手掛けていた未完のフィルム『ラムズ・シスター』で使う予定だった曲で、音源としてはカレント93、NWW、ソル・インヴィクタスからなる3LPボックスが初出だった。余談だが、このフィルムの断片が昨年になって突然何者かによりyoutubeにアップロードされている。

◆Angle
ニック・サロマンのプトレマイク・テラスコープへのベネフィット・コンピレーション『サカー』(救助)提供曲。ピート・ボッグが参加した最初期の曲の一つで、インド及び東洋の音楽に興味があった彼のセンスを反映してかシタールが鳴りっぱなし。カレント93の曲と言われても信じてしまう。逆再生っぽいダルシマーの音も官能的。

◆Just What Do You Mean By "Antichrist"?
デヴィット・チベットが崇拝する人物の一人にして、一時期の米国のお茶の間では子供にまで親しまれていた異端のシンガー、タイニー・ティム。チベットが自身のレーベル、デュアトロから出したタイニーのコンピレーション『ソングス・オブ・アン・インポテント・トルバドール』から収録。タイニーとチベットの電話越しの会話から始まったかと思えば、突如チベットのシャウトが炸裂、次いで日本語の様にも聞こえるコラージュの波を抜けると、再びタイニーの声明が再生される。敬虔なキリスト教信者だったタイニーは聖書や創世に対して独自の見解を持っており、チベットはそこに惹きつけられていった。タイニーの世界観に注目した人物は当時どれくらいいたのだろうか。ボイド・ライスはきっちり『RE/SEARCH』誌でインタビューしている。

◆Tape Monkey Mooch
今回の再発にあたって新たに追加された一曲。2004年の『アングリー・イーレクトリック・フィンガーズ』はステイプルトンとコリン・ポッターが作ったマテリアルを第三者へ投げて料理してもらうプロジェクトで、これはジム・オルークによる仕事である。ステイプルトンの弟子とも言えるクリストフ・ヒーマン、そのヒーマンから影響を受けたオルークがNWWに関わることで、現代音楽狂三世代が繋がった貴重な瞬間である。そんなオルークはNWWはあまり好きでない、というのがまた面白い話。

The Swinging Reflective II

◆Rock N' Roll Station
92年の『サンダー・パーフェクト・マインド』から本格的に制作へコミットするようになったコリン・ポッター。『サンダー』のマテリアルを更に加工することで作り上げたアルバム『ロックンロール・ステーション』からの収録曲。ジャック・ベロカルのカバーであり、突如ヒップホップ化したことでファンを驚かせた本作だが、ステイプルトンとポッターにとっては実験的かつ「エレクトロニック」な作品なのだそうだ。今日ではライヴのクライマックスとしてもお馴染みの一曲。

◆Disconnected
ついに心の師であるファウストとも共作した『ディスコネクテッド』から。ファウストに限らず、NWWにおけるコラボレーションとは、ステイプルトンが相手から受けとった素材を密室で生まれ変わらせることであり、バンド的な作り方をしているわけではない。その手の内は未だに謎で、錬金術と評されるのも納得である。

◆Electric Smudge
ヴィジュアル兼サウンド・アーティストであり、教鞭もとっているというフリーダ・アブタンとの共作。2006年のライヴ・パフォーマンス『サウンドプーリング』ほか、00年代中期から後半にかけてNWWのアルバムに参加している。テープ・ループ及びスプライシング的な内容で、オールドスクールな「エディット」に向き合った一曲。彼女による映像は一時期のNWWのライヴにも使われている。

◆The Squarewarp Paradox
前衛劇作家、グラハム・バワーズとの共作は短期間に4枚ほど出ており、2015年にバワーズが亡くなるまで勢いは衰えなかった。劇や映像用にサウンドを紡ぐのはステイプルトンにとって尽きることのないモチベーションの一つ。この曲単体ではちょっと渋すぎるので、劇的な展開も有するアルバムを推奨。

◆Easy Listening Nightmares
80年代初期、ステイプルトンが毎週金曜日の仕事終わりに通い続けていたのがIPSスタジオ。卓を楽器として扱う技術を培ったのもここで、NWWがステイプルトンのソロ・プロジェクトとして生まれ変われたのはここがあったからこそだ。そのIPSに10代後半から勤務しており、ギターも達者だったデヴィット・ケニーと作ったのがこの曲。終始ループするペレス・プラードの上をノイズすれすれのギターが飛び交うもので、本コンピレ-ションでは飛びぬけてキャッチー。ステイプルトン曰く、90年代はほぼプラードしか聴いてなかったとのこと。

◆Gloakid With Phendrabites
現在もNWWの主なディストリビュート先であるダーター・プロモーションズ。そのオーナーであるスティーヴ・ピティーズのプロジェクトがバンド・オブ・ペインである。モロに80年代NWWのフォロワーといった趣。無限音階から何かが潰れる音など、矢継ぎ早に音ネタが展開される。

◆Cruisin' For A Bruisin'
00年代後半から今日にかけてレギュラー・メンバーとして活躍するアンドリュー・ライルズは卓越した耳と現代音楽への造詣の持ち主で、ステイプルトンにも匹敵すると言われている。加えてモンド・ミュージックやイージー・リスニングはもちろん、ダンス・ミュージックとヘビーメタルまで貪るのだから凄い。この曲はNWW流ホット・ジャズ及びモンド・ミュージック大作『ハフィン・ラグ・ブルース』収録のムーディーな一曲。50年代のドラマをそのまま音にしたような内容に脱帽。NWWをノイズ、インダストリアル、サウンド・アートといった面から知った人にこそ聴かせてみたい夢の一時。

◆Painting With Priests
クリストフ・ヒーマンとイタリアで行なったライヴ・パフォーマンスを加工したもの。ドローン大家、その師弟競演とも言える内容で、起伏らしいものが全くない徹底ぶり。

◆Tidal Whirlpool
アラノスとの共作で『サントゥール』限定再発盤に入っていた追加トラックより収録。ヒーマンとのドローン・テイクに近いようで、その実、個々人のカラーがわかる一例。ヘヴィーなドローン・マニアへのテイスティングに使ってみたい。

Ash On The Trees (Slices Of Midnight)
スティーブン・オマリーによるSunn O)))のアルバム『ØØ Void』を再構成したもの。オマリーから依頼されたもので、ステイプルトンとポッターだけで作られた。今日の鈍重すぎるドローンになる前の作品が素材のおかげか、意外と聴きやすい。オマリー本人に尋ねてみたところ『ソリロキー・フォー・リリス』が一番のお気に入りだそう。

◆Livin' With The Night
『ハフィン』にも参加していたカントリー歌手、リン・ジャクソンをフィーチャーした、真っ当すぎるシャンソン。女性ボーカルはステイプルトンにとっての「名曲」において重要な要素だ。

◆May Rain (Chromanatron)
フランスのロトレリーフから出た『クロマナトロン』より。クラウトロック・グループ、サンドの音源を素材に作ったもので、同名曲が彼らのファースト・アルバムに収録されている(カレント93もカバーしてました)。もはや別の曲に作り替えていると言ってもいい内容だが、曲の構成ではなく、あくまでそこから得たインスピレーションを料理するのがステイプルトンのやり方である。

◆Rock Baby Rock
イタリアのラーセンと、最初期のクラフトワークやノイ!に参加していたフリッツ・ミュラーことエバーハルト・クラネマンを招いた曲。ヴィジュアル・アーティストとしても知られているクラネマンは、マニ・ノイメイヤーほどではないが、元気な御爺ちゃんである。ラーセンはストイックなドローンを手がけるグループで、次のブラインド・ケイヴ・サラマンダーとも共振する。内容的にはシュトックハウゼンにも近い、ディープかつ空虚なドローン。

◆Cabbalism III
『ソリロキー・フォー・リリス』を想起させるサウンドを生み出していたサラマンダーに一目ぼれしたステイプルトンは、そのままトリノのフェスティヴァルで彼らとライヴで競演。ゆっくりと、しかし確実に変化していくインプロヴィゼーションを記録したのがこのトラックを収録している『カバリズム』だ。NWWのライヴは基本的にインプロで、このようなドローンでも同じ瞬間はない。慣れると、後半の微細な変化の連続が目まぐるしく感じるようになってくる。

Livin' Fear Of James Last

◆The Six Buttons Of Sex Appeal (Edit)
言わずと知れたファースト・アルバムから。クラウトロックやデレク・ベイリーといったフリー・ミュージックへの愛着がモンタージュされた本作はポストパンク黄金期を裏付けるピースの一つだ。

◆Dirty Fingernails (Edit)
アルバムとしてはデヴィット・チベットが初めて制作に関わった『ギュレンスコルド』から収録。ヒプノシスのスタジオでピーター・クリストファーソンと話している時に発見した椅子の軋みから得た、金属音への執着が発揮されている。椅子はステイプルトンにとって極上の楽器である。

◆Stick That Chick And Feel My Steel Through Your Last Meal
レイ・ラ・アンタイレコーズのコンピレーション『ザ・ファイト・イズ・オン』から。冒頭のバンジョーがなくなっているほか、大幅なエディットが成されている。オルガヌムとルスト・モードが参加している貴重な音源だが、面子よりはIPSスタジオという環境の賜物か。前の曲同様、金属摩擦や短い打撃音が暗闇の中を木霊する。

◆Subterranean Zappa Blues
『ロックンロール・ステーション』の未収録音源集『セカンド・パイレーツ・セッション』から。もともと2枚組になる予定だったが、後から発表する形となった。リズムに特化した作品で、一旦お蔵入りになったこの曲も同様。

◆Ag Canadh Thuas Sa Spèir
コリン・ポッターと作った2002年『マン・ウィズ・ザ・ウーマン・フェイス』から。地味だが完成度はかなり高い一枚で、リズムからドローンへと移行する中間に属する。初期の作風が好きなファンにもオススメしたい。どことなくエキゾチックなのもポイント。

◆Die, Flip Or Go To India
NWWとカレント93の連名で作った『ブライト・イエロー・ムーン』から。腹膜炎で緊急入院したデヴィット・チベットの臨死体験ともいえる時間を音にした作品。奥行きのあるドローンが延々と続く、無常すぎる一曲。美曲「ウォーキング・ライク・シャドウ」もあることだし、是非ともアルバムを聴いてみて。

Cold (Edit)
『サンダー・パーフェクト・マインド』のA面で、ステイプルトン曰く「真なるインダストリアル・ミュージック」。コリン・ポッターの卓さばきを経て、そのままの意味でリズミックな作品となった。シーケンサーやコンピュータは未使用、クラフトワークの「ヨーロッパ特急」と同じように全てテープの切り貼りでループさせられている。

◆The Strange Play Of The Mouth (Edit)
トレンチ・ミュージック・コアのカセットや、サード・マインドのコンピレーションなどに提供していた曲。鼻歌のような女性ボーカルと左右のチャンネルを行き交う電子音が延々とループするサイケデリックな一曲。後の『エコー・ポエム・シークエンス』シリーズとも共振する作風。

◆Swansong (Edit)
波の音がやがて圧巻のハーシュノイズと化す強力な一曲。ビキニ沖の水爆実験をレポートしたビデオを見たことから海洋汚染への怒りを抱き、それを表現した曲である。NWW版「久保山愛吉のための墓碑銘」(ヘルベルト・アイメルト)と言っても良いはず。

◆Optical Illusion Pad
またも『セカンド・パイレーツ・セッション』から。リズムだけかと思えば、スペーシーなギターと朗読が流れ込み、一気にB級クラウトロックっぽくなる。過度に変調させていないギターに、ピート・ボッグの嗜好が出ている。ファンカデリックとレッド・ホット・チリ・ペッパーズが好きだそうです。

◆Sea Armchair
最高傑作と称されることも多い『スパイラル・インサーナ』より。冒頭の叙情的なドローンの時点で、それまでのアルバムとは異なる風格を持つ。このパートはA面の導入部分で、オリジナルは複数のパートからなる大曲。ちなみにこのパートは何故かカレント93のベスト盤にも入っていた。

A Piece Of The Sky Is Missing
シングル『クールータ・ムーン』B面より。デヴィット・ジャックマンの尺八で幕を開け、そのままトライバルなビートが突き進むNWW流ジャムが展開される。分裂前のアモン・デュールとも共振する音だ。

◆Home Is Where The Heart Is / Monument For Perez Prado
『ロックンロール・ステーション』でリズムに没入したのはヒップホップだけではなく、ペレス・プラードの影響が大きいと本人談。エキゾチックなリズムが延々と繰り返されるNWW流アシッド・テスト『フー・キャン・アイ・ターン・ステレオ』の一曲で、唯一コイル(ジョン・バランスとピーター・クリストファーソン)が参加したアルバムでもある。ミニマリズムとそれを介しての意識変性はコイルが探求していたものの一つだが、NWWでやるとこうなる。

◆Intravenous (Edit)
これまたスペーシーなクラウトロックに近い『アン・アウクワード・ポーズ』から。自宅とスタジオ問わず、録音した素材を卓で一気にまとめるスタイルはこれまでと変わらないが、ピート・ボッグらにリクエストして素材を作っていったというプロセスはさながらコニー・プランク。

◆A New Dress
『クラム・ダック』より。重苦しく響くドローンと朗読がループされる内容で、アルヴィン・ルシエのカラーも色濃い。後に『ソリロキー』でステップアップする直前の記録。

◆Yagga Blues
『フー・キャン・アイ・ターン・ステレオ』に収録される前からシングルでも出していたエキゾチック・ナンバー。ペレス・プラードに感化されたリズムの上を女性ボーカルが漂うポップな仕上がり。バックのリズムは90年代のNWWではあちこちに登場しており、よほど気に入っているようだ。

Two Shaves And A Shine (Edit)
『アン・アウクワード・ポーズ』より。冒頭のベースラインだけで耳を捉えるロッキン・ナンバーである。ギターやブズーキも炸裂するジャムぶりも凄いが、何よりもデヴィット・チベットによる渾身のボーカルが聴く者の耳と胸を穿つ。
ライヴではドラムと生ベースによるヒップホップになるなど、話題に事欠かぬ名曲。

◆Rock 'N Roll Station (Edit)
『Swinging Reflective II』と同様。

◆I Was No Longer His Dominant (Remix)
何故かリミックスして収録されたノイズ・ポエトリー。というかまんまロバート・アシュレイである。朗読を担当しているのはキング・クリムゾンでヴァイオリンを弾いていたデヴィット・クロス。ジョン・フォザーギル経由で『ホイスティング・ザ・ブラック・フラッグ』に曲を提供した縁から参加。

(17.10/12)