例年通りの備忘録

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V.A. / Before the Day Is Done: The Story of Folk Heritage Records 1968-1975
まだ確証はないが、今年の研究対象は欧州のアシッド・フォークとその背景に偏りそうだからこの手のコンピに手を出しまくっている。マンチェスターで始まったFolk Heritageレーベルの貴重な音源を収録したアンソロジー。
Michael Cashmore / The Sword Becomes A Shield (Symphony Number 1)
BBC傘下のオーケストラの演奏をサンプルに使ったシンフォニック・インスト集。最近のエレクトロ路線にビックリしたが、従来のイメージに近い音楽性にもちゃんと立ち戻れるキャシュモア氏の技巧に震える。
Sachi Kobayashi / Damage
Kobayashiさんの新作は演奏とサンプリングとおぼしき素材が接合し別個の音へと変化したフランケンシュタイン的アルバム。しかし、不条理を音で描いているかというとそうではなく、明確なメッセージが込められているようにも感じる。意志と表象がダイレクトに結びついていないところに強力な政治性のようなものを見てしまう、独自の音楽です。
V.A. / 盤​魔​殿 Flashback 2​~​Disque Daemonium Live Archives 2021​-​2022
マンスリーという驚異的な催し「盤魔殿」のライヴ演奏を収録したオムニバス。持田保さんのインダストリアル・ブルース(精神的な意味で)「恐山Vibration」がたまらないぜ。
Inanis Yoake / How Things Seem
イナニス・ヨアケの新作には過去作から続いてトニー・ウェイクフォードやマット・ホーデンが参加している。ゴシック色はあるにはあるが、いかにも英国ネオサイケな曲調だけに間口が広く、念仏めいた様式に溺れたネオフォークとは一線を画している。初期ニュー・オーダーあたりが好きな人にはハマるかと。
V.A. / We Love Hair Stylistics!
闘病中の中原昌也さんのベネフィット・オムニバス。そうそうたるメンツが並び、売り上げは入院費用にあてられるとのこと。お得とか費用対効果とかそんなセコい話はしない。ただただご快復を祈ります。
Christoph Heemann/ End of Era
クリストフの新作だが、素材は99年からのものに及ぶようだ。客観的に見た上で録音を繋ぎ合わせたという印象。
Quentin Rollet & James Worse / Fothermass Abominesque
NWWとの共同作業者同士でもある二人の合作。叙情あるムードを生むサックスをよそに高速で動き回る何かの音、FX、声。コラージュ的だが双方が同居しなければ存在しない時間である。
Moon Wiring Club / Medieval Ice Cream
MWCの新作がデジタルでも配信されたので購入。フィジカルが一番な作家なのはわかるが、とにかく送料が高いものでやむを得ず。トリップホップと呼ぶにはお洒落すぎる、素朴な退廃に癒される。
Konori Sp. / Port Of History
90年代の録音とのことで貴重な内容。こうした音楽が日本国内のメディアを素通りしたままだったのだから、現在を生きている一受け手としてはちゃんと主張していきたい。録音物はそのためにもあるはずだ。「エピローグ」のギターにシビレ。
あがた森魚 / タルホロジー
ある仕事をきっかけにあがたさんの世界にドハマり。押さえていなかった企画も多く、このベストアルバムもその一つ。新曲も入ってて、あえてとっ散らかせたはずが、共通するロマンス、タルホロジーによって完パケされている圧倒的な世界観。英国の憑在論音楽パラレル版ではないだろうか。
Nurse With Wound / Alice The Goon (Funeral Music For Perez Prado)
95年に出たペレス・プラードネタのミニアルバム収録曲と、新リミックスを合わせた12インチ。
sara (.es) 、 T.MIKAWA 、 K2 、 Wamei 、 山本精一 / Utsunomiya Mix
.esのSaraさんが上記演奏家たちとコラボレーションしたパフォーマンスを、宇都宮泰さんが録音・エンジニアリングした企画。当日の記録ではなく、できる限り目の前に現場をよみがえらせる(?)挑戦である。次第に激しくなる山本さんの演奏がお気に入り。
DJIVAN GASPARYAN / The World of the Duduk
サブスクにあったドゥドゥクの音楽集。憂うつな昼下がりに流して脱力するのが日課。物悲しいからこそ癒される。
Salami Rose Joe Louis / Akousmatikous
参照が特定できない音、アクースマティックなサウンドをテーマにしたという新作。明らかにスケールが大きくなってきたはずが、1stのころのようなスケッチめいた雰囲気もしっかり残っている不思議。モート・ガーソンあるいはYMOのように、苦労して作曲した痕跡がないヤワラカスーパーナチュラル。
JG Thirlwell + Mivos Quartet / Dystonia
JGによるストリングスカルテット用スコアをMivosカルテットが演奏。基礎となる東欧のクラシック的響き、変拍子とダイナミクスによる緩急づけは相変わらず暗く、ネガティブに燃えていく。それが現代において説得力を持ってしまっている。
V.A. / Romance Girl A / 乙女の儚夢 NOEL
あがた森魚『乙女の儚夢』のトリビュートアルバム。レトロをもって逆説に現在を描写する世界観をそれぞれが解釈。エドワード・カスペル氏が歌う「乙女の儚夢」の歌詞英訳を手伝いました。
恐山Vibration / 恐山Vibration
持田保さんがはじめたペイガンユニット。ネオフォーク的アコースティック志向というよりは、むしろレイヴ。Death In Juneいうところのキャンプファイア・ミュージックであり、密室集会のための音楽だ。
Large Plants / The Thorn
Ghost Boxのジム・ジュップがプレスリリースとデモを送ってくれたラージ・プランツの新作。フォークソングやテレビ番組的エレクトロニクスが主であるGhost Boxの中では異端のサイケデリックロック、それも米国風のそれを表現し続けるバンド。アンビバレントな関係にある米英ロック史の鏡写しか。
Ché-SHIZU / Live (1986-1988)
越子草からカセットテープで復刻されたライヴ音源。あっという間に売り切れていたが、なんとか買うことができた。ザッパのカヴァーがあるのはなんだか意外だが、ただの趣味のお披露目に終わらない納得の演奏で堪能できた。
Nurse With Wound / She And Me Fall Together In Free Death
2003年にBeta Lactumがリリースしたアルバムの復刻。今年はリイシューが多いNWWだったが、トニー・ウェイクフォードとの『Revenge Of Sellfish Shellfish』のアナログが出たのは何よりの快挙だった。
こちらは全然更新できなかったが、今年はブリティッシュフォークやら昔の電子音楽やらをちまちま集めていた。振り返ってみればNWW関連の再発ばっかり優先して、ただでさえ苦しい懐が枯渇してしまった。見聞きしたものは来年1月末あたりに出す『FEECO』にて掲載する予定。