2019聴いたブツ/メモです

ツ イート

Ono Yoko / War Zone
去年見落としていたリリース。過去の曲を再録したもので構成されており、「イマジン」や「ホワイ」も入っている。どの時代でも必要な概念だ。声は本当によく出ている。
セキトオ・シゲオ / スペシャル・サウンド・コレクション
エレクトーンでおなじみのセキトオ・シゲオだが、どうやらマック・デ・マルコが人気再燃理由の一つらしい。自分はバクスターのムーグもののような、より安っぽいものが好きなのだが、こちらはこちらでビデオゲームっぽさが強くて馴染みがある(ように感じる)。最後の曲はトリプルファイヤーのメンバーによるリミックス。
Toro Y Moi / Outer Space
前作から転じてダンサブルな内容になった。全体の再生時間が短めなのもあって、よくリピートしている。ダフトパンクの『RAM』を最初に聴いた時もこんな感じだったような。同じタイミングにSpotifyで見つけたムーディーマンの旧作にも近い印象を受けたが、あちらよりずっと明るいのでハードルは低い。ジョギング時に良さそう。
Oneohtrix Point Never /
Love In The Time Of Lexapro

EP。坂本龍一のリミックスが収録されている。『ガーデン・オブ・デリート』からすぐ離れるも、『エイジ・オブ』でまた少し興味が戻ってきた。本作も歌が入っていて、よりキャッチ―になった・・・が、それはそれで物足りない。良くも悪くも音楽だけで語れない人物だ。その抽象性もまた魅力、ということで。
SCOOBIE DO / BOOTLEG-TIC GIRL 6
あと少しでコンプリートのライヴ音源。2016年の札幌・道新ホール公演で、コーラスやホーン隊がバックに。やはり「Oh Yeah!」にはホーンが必要だ。
電気グルーヴ / 30
30周年記念アルバム。ますます進む「外国の歌」化。何言ってるかわからない、歌詞を読んでも心当たりがない、だけども伝わる特殊な電波。ゲストはインガ・フンペから町あかり、トミタ栞、クレイジーSKBなどトリッキー。後半のインストも◎。ジャケットはTOPY、ですよね?
MUTE BEAT / Still Echo
ミュートビートって配信されてたの!?と最近知りまして、慌ててマイライブラリ行きにした名作。下手に抒情的なドローンやアンビエントには出せないフラットさ。これぞ人の手の暖かみ・・・いや、テクノロジーの成せる業と言いたい。それこそダブ。
こだま和文 / Stars
この名作も配信されていた。ノンストップで聴けてしまうライトな仕上がりだが、UAをフィーチャリングした曲を迎えた途端、一気に持って行かれる。ダブはボーダーレスな音楽だと思い始めたのは、本作やミュートビートといった日本産のものの影響が大きい。
SCOOBIE DO / サバイバルファンク
新曲とライヴ音源入りCD。タイトル曲は5拍子で、スクービー版「テイク・ファイヴ」かな。リズム隊の頑張りぶりがなんとなくスピードスター時代の後半を思わせる。ライヴ音源はジョー作詞作曲「さよなら私の」が聴けて嬉しい。アルバム入りはいつ?
V.A. / Kankyo Ongaku:Japanese Ambient
Environmental & New Age Music 1980-1990

名前通り、日本の環境音楽を収録したコンピレーション。海外での再評価という現象ありきの企画なので、音楽よりも再評価現象、その受容のされ方を辿ることが要である、はず。全体的に今聴くのは辛い。これが率直な感想であーる。
(((さらうんど))) / New Age
ストリーミングサービスで配信スタートってんだから嬉しい。最も金がなかった時期、これとスクービーの『かんぺきな未完成品』はよく聴いていた。それが良い思い出というのわけではないのだが、忘れがたい時期だ。「きみはNew Age」と「空中分解するアイラビュー」はやっぱり名曲。後者のY.Sunaharaリミックスも配信してくれたら、というのは贅沢かな。
Shuta Hiraki / Not Here, But There
入眠時のための音楽と銘打った2曲。キャプションに引っ張られた表現をするなら、眠りに落ちる瞬間を細分化したような2曲目が〇。その弱弱しい音をもって、周囲の(雑)音を意識してしまう私はもちろん不眠症である。
JAC BERROCAL, DAVID FENECH and
VINCENT EPPLAY / ICE EXPOSURE

ブラッケスト・エヴァー・ブラックから出している、もはや定番にもなった三者のコラボアルバム。日本語によるスポークンワードにちょっとビックリ。前作ほどリズミックな瞬間は少ないのでベロカルのファン的にはしっくり来るだろうか。ビートが物足りないと思うけど、あったらあったで違和感があるため、発展を望むようなプロジェクトではない、かも。
Cosey Funni Tutti / Tutti
2017年にギャラリーで演奏された半自伝的フィルムのサントラらしい。映画自体に興味あり。音はほぼインストゥルメンタルで、あくまで添え物の域を出ないが、冒頭のトランペット(彼女がTG時代に着手したモチーフの一つ)にしんみりしてしまう。
Nurse With Wound /
Chance Meeting On A Dissecting Table Of A Sewing Machine And An Umbrella

NWWのファースト・アルバムがカセット再発。ロシアのレーベルからで、ちゃんとオフィシャルらしい。ミニNWWリストなど、付属の小物に惹かれて購入。CDにあったボートラはなし。
Nurse With Wound / Changez Les Blockeurs
昨年CDでも出たNWWによるTNB1stのリワーク。これは500枚限定で出されたヴァイナルで、すぐに売り切れてしまったものだが、安価でオークションに出されていたから勢いで買ってしまった。
内容はCDで補完しているので未再生である。というか、このジャケット目当てで買ったようなものだ。ポール・ヘガティによるライナーノーツはこれにしか付いてこない。
Thighpaulsandra / Practical Electronics With
Thighpaulsandra

ソロ作品としては3年以上ご無沙汰の新作。前回のように膨大なボリュームではないため、比較的気軽に聴ける。ELpH名義のコイルや、そのルーツとなったクラシックな電子音楽にも近いが、こんなアブストラクトな音に歌を乗っけられるこの人はやっぱ凄い。
Die Tödliche Doris ‎– 日常における七つの死亡事故
SUEZAN STUDIOによるドーリスの再発企画。今後も魅力的な復刻が続くドーリスだが、予算的な都合で今はこの一枚に留めている。これはツィックツァックから出たEPの初CD化で、リマスターに加えて明石政紀さんによる対訳と解説が付いてくる。正にローカライズ、国内盤の意義を果たしている仕事だ。音だけではなんのこっちゃな世界だったので、こうした形で触れられるのは嬉しい。
Philip Sanderson / On One of These Bends
スナッチのフィリップが81年に出す予定だった音源。これあがまたバラエティ豊かで、カセット時代らしいエレクトロニクスという氏のイメージを覆す豊潤さだ。
Mark Stewart & Mafia / Learning To Cope With Cowardice + The Lost Tapes
マークのソロ1stに当時のセッションからお蔵入りになっていた未発表音源を追加してのリリース。10年近く前にマーク本人のリマスターで出たものが素晴らしかったため今回は迷っていたのだが、Spotifyで配信されていたのでそちらを選んだ。でも音はブツの方がいいだろうな。未発表音源が予想以上にしっかりしていたため、その思いはますます強まるばかり。しかし、何より望んでいるのは2ndと3rdの復刻だ!
Normal Brain / Lady Maid
ヴァニティからリリースされた藤本由紀夫氏のプロジェクトが復刻。LPだけでなくCDやカセットまで作られているようだ。オリジナルのスリット型スリーヴやインナーが再現されていないのは残念、ということで今年出るであろうヴァニティBOXのCDを得るまではストリーミングで済ますことにした。スピークアンドスペル含めて当時らしい音だが、シンセサイザーの構造をしっかり理解した人がパンク的な発想にコミットしているところがミソだろう。
細野晴臣 / Hochono House
『HOSONO HOUSE』を打ち込みメインでリモデルするというコンセプトからして興味をそそる企画。『S-F-X』っぽいのはジャケットだけじゃないから驚きだ。
スケッチショウの音+フォークとか聴いてみたいなあ、なんて思うことは色々な音楽を耳にする中で抱いてきた淡い希望なのだが、まさか本人によって叶えられるとは思わなかった。古典につきものな「時代の空気」みたいなものは払拭されているマジック。
Muzan Editions - Standard Grey / km:
奈良のMuzan Editionから出た複数のカセットの一つ。A面は長尺コンクレートが1曲、B面は抒情的なドローン詩篇がコンパクトに収録されている。アンドリュー・チョークに共振する、サウンドとヴィジュアルがピッタリなデザインが◎。アンビエントと呼ぶのは間違ってないけど、自分はもっと違う形容がしたいなあ。
Former_Airline /
Rewritten Memories by the Future

FAの新作。テープ再生の環境がなくなってしまったため、今回はデータで購入。NONばりのループが冒頭から炸裂。NDW風のエレクトロニクスは相変わらず冴えているが、一番好きなのは不協気味ディスコな4曲目。
Rema Rema / Fond Reflections
鉄板としても名高いレマ・レマがライヴ音源+リマスターで復刻。一曲目からいきなりヤバい!意外とライヴで再現されているところにも驚きあり。
Ola Szmidt / EP2
ジャケットが面白かったから聴いてみた作品。尺八的な管楽器の音がメインで、スケッチ集のような印象を受けた。作者のオーラはウルティマ・トゥーレのフリーマン兄弟と制作したこともあるらしい。意外な縁であった。
Scoobie Do / Bootleg-tic Girl II
2010年のツアー音源詰め合わせ。『何度も恋をする』からの選曲が多い。同時に2015年の『Ⅴ』も買ったため、この度シリーズをコンプリート。
William Basinski / On Time Out of Time
前作と比べると、やっぱりループの人だというイメージが強まるばかりのニューアルバム。個々の曲が(このジャンルにしては)短めで、意外とメリハリがある。
Sebastian Gandera / Le Raccourci
88年から90年代前半の間にカセットでリリースしていたらしい作家の発掘音源。ロバート・ヘイとパスカル・コムラードの出会いと言えばいいのか、とにかく音からサンプル使いまで、すべてに心臓わしづかみ。再生時間も短いから無限に聴けてしまいます。像が浮かばぬ懐かしさ、メルヘンの極地なり。ジャケットも◎。
Mike Cooper / Tropical Gothic
マイク・クーパーによるエキゾもので、私が最も好きなジャンルの一つ、捏造フィールドレコーディングである。「鬼婆」とか「Shindo」とか出てくるし、新藤兼人へ捧げているのだろうか?タイトルは言い過ぎ感こそあるが、昭和の日本を象徴している、はず。ムードを一変させる「Running Naked」が最高。
L.Valerie / ELECTRO-PAMPAS
ジャケットが良かったからゲットした②。プリミティブなパーカッションとリジーのような朴訥とした歌がGOOD。ヤング・マーブル・ジャイアンツのファンにもお薦め。
TANUKI / カタカナ・タイトル + Kanji Title (Double EP)
久々にvaporwave、じゃなくてFuture Funk。
あくまでBGM的な押しの弱さを感じるのが不思議。「ファンクOFF」のベースなんかは学生時代に行ったアニソン・トランスがガンガン流れるイベントを何故か思い出しちまうぜ。写真はレコード限定のアートワークでソウルのイラストレーターBilliesによるもの。でも、このキャラ使ってOKなの?デジタルはNYP。
Tha Blue Herb / TOTAL
過去作からソロまでストリーミング配信されたのがきっかけで再熱・ブルーハーブ。特にこのアルバムは出た当時に聴いておきたかったなあとつくづく思う。O.N.O氏のビートは「研ぎ澄まされている」という表現がピッタリだ。ちょっとメロウなBOSSのソロとの対比も面白い。1stや2ndとは違う力の入り方が自分にもフィット。新作も出るらしい。
田中公平 / ハーメルンのバイオリン弾き 魔曲全集 1
来年には出したいFEECO誌用にアニメの劇伴を少しずつ集めているのだが、その過程で『ハーメルンのバイオリン弾き』も再熱。北米版Blu-rayあたりで出てくれたら一番嬉しい。クラシックにわかな自分には嬉しい魔曲もさることながら、このサントラで一番は「予告」だろう。時代を感じる主題歌二つもこれはこれで。「未完成協奏曲」の8cmも中古で買うたで。
Third Eye Foundation / Wake the Dead
昨年に出ていたTEF名義の新作。全く知らなかったよ。内容は2016年の本名名義にも近い、どん底トリップホップといった趣。聖歌のようなサンプルや、一拍ズレによるサイケデリックなリズムがソワソワさせるが、この落ち着きのなさこそ安らぎよ。コイルに続いている数少ない作家のひとりだと個人的に思う。
These New Puritans / Inside the Rose
バーネット兄弟のプロジェクトになったも等しいニューアルバム。所謂ゴス系はあんまり食指が伸びない自分でも、カレント93経由で知った彼らは別である。デヴィット・チベットも一曲参加。ギターではなくシンセを使って、ナヨナヨ、耽美、神秘的というヨーロピアン・ゴスの王道を表現。やることやってたら、80sリバイバルの波に乗っていた感じ。箱鳴りが良さそう。
Fennesz / Agora
フェネスの新作は宅録に近い録音によるものらしい。ストリーミング対象になることを考慮してか、意図的に音がくもっているところもある。しかし、位相というか音の配置は流石で、眼前と(その向こう)で揺らめくような2曲目後半の展開はイヤホンで聴くと気持ち悪いくらい。『エンドレス・サマー』とかよりも、ずっと好きかも。
Guchon / Dogs of the Future
マルチネレコードからの音源を聴くのはいつぶりだろう。内容は黎明期、なんでもテクノと括られていた時期をおさらいするようなバラエティの豊かさ。PSのゲームで耳にしたような、あっさりとしたダンス・ミュージック。アートワークは禺吾朗氏。
V.A. / 無限のリヴァイアス キャラクターソング集「あしたから」
『無限のリヴァイアス』キャラソン集。こういうのに手を出すことは少ないのだが、好きな作品にまつわるものは例外である。だいぶ前に手放して以来、ジャンクばりの価格で見かけたので購入。吉良知彦、かしぶち哲郎が提供しているのはマニア的に驚くべき点だろうか。ヒプノシスマイクを先取りしたようなマイクリレーも。
V.A. / Pay It All Back Volume 7
On-Uのサンプラー企画。タイトルはバロウズの詩からとっているようで、収録曲の一部にはサンプリングもされていた。アフリカン・ヘッド・チャージの少しフレンチな仕上がりが意外かつ心地よい。4曲目にはドライアンドヘヴィーのボーカルが参加。にせんねんもんだいもバッチリ提供。マークが出してたDJ mixが懐かしくなったり。
DJ Krush / 軌跡
TBH繋がりでKrushのアルバムも多くストリーミング配信されていたと知る。ほぼ揃えていた中で、一昨年に出たこれは耳にしていなかった。フィーチャリングに徹した内容でやけに暗いトラックが多いのだが、所謂オールドスクール、建設的なネガティヴィティということで。OMSBやリノ参加の曲は特にそう思う。ラストの志人は別の次元にいっちゃってます。
Asmus Tietchens / Eine Menge Papier
出しすぎてて、いつの作品かもわかりにくいアスムス。昨今のダーク・アンビエントやフィーレコ下地のドローンと合流しているのだから驚く。本作はよりフィーレコ要素が強く、ヘッドフォン向けかも。個人的にはコラボよりソロの方が良く感じる。
River of Diamonds / Photon Touch
カナダのデュオ。詩集付きというだけあって、スポークンワードアルバムと言える内容。電子音の使い方というか和音の組み合わせが10年くらい前の京都で耳にしまくった自主音源っぽい(伝わるわけなし)。
4曲目が良い。
菅野由弘 / 水に棲む 天使のたまご 音楽編
押井守監督の映画のサントラ。アナログを手放してからご無沙汰だったが、珍しくCDが安価で落ちていたので購入した。音を良くして再発される可能性もゼロではないかな。映画の内容は今見てもサッパリどころか寝落ちしてしまうくらいなのだが、音楽共々好きな作品の一つ。
UnicaZürn ‎/ Sensudestricto
ステファン・スロワーとデヴィット・ナイトによるユニットで、一昨年に出たアルバムに似たエレクトロニカ路線(結構昔からやってたんですね)。頻度こそ少ないが、やはりコイルでも見せていた奇妙なループが冴える。BGM的に聴き流しながら時折見せる変化に引っ張られていく。ところでサイクロブの新作は?
Current 93 / Invocations of Almost
3月に行なわれたD.Tibetの個展会場BGMとして作られた音楽。添え物らしくドローンがぼんやり鳴ってると予想していたのだが、チベットによる朗読などバラエティに富んだ曲群であり、結構作り込んである。昨年に出たアルバムと並べて聴くとより味わい深い。ここ最近は出すもの全部が良い。ジャケットと同じ写真が使われているトートバッグも購入。目立つ!
空間現代 / Palm
スティーブン・オマリーのレーベルから出たアルバム。ROVOやルインズのようなやり方ではなく、すべて計算した上で展開していくルービックキューブのような進め方は曲だけでも堪能できる・・・が、ライブを何回か見た身からすると、どうしてもあのダンスのような動きなしでは物足りなく感じてしまう。とはいえ低音がキマりすぎて◎。
Sunn O))) / Life Metal
あまり食指が伸びなくなって久しいSunn O)))だが、今回はライトな仕上がりで良かった。手を抜いているというわけではなく、ギターノイズに拘るも所謂ロックのアイコン的なそれを匂わせない、アンビエントな音像となっている。これがナイスな塩梅の所以か。今に始まったことではないと思うが、例えば昨年のジム・オルークあたりに触発されたのだろうか。
Ladytron / Ladytron
久々に出て嬉しかったレディトロン。らしい音を聴かせてくれるあまり、我が時間が止まっていたのかと錯覚するほどである。デペッシュ・モードがいて、ニューオーダーがいて、レディトロン(とコールド・ケイヴ)がいるっちゅうわけですわ!ジャケットは物騒。
Ulver / Drone Activity
ライヴ音源だが、ここまでのクオリティならば是非日本に来て欲しい。わずかに変化していくドローンが昨年見たNWWのライヴを彷彿とさせる。Sunn O)))にはないジャムっぽさがまた良い。
Steven Stapleton and David Tibet / The Threat of Memory
ステイプルトン&チベット名義で出したアルバムをまとめた5CDBOX。リマスター+アウトテイクだが、『オクトパス』にはタイニー・ティムをフィーチャーした曲が収録されている。彼ら流のジャズロックである「デッド・サイド・オブ・ザ・ムーン」もいいけど、一番はやはり「サッドネス・オブ・シングス」だろう。
COIL / Swanyard
ダニー・ハイドのスタジオから掘り出された150分に及ぶ未発表音源。『バックワーズ』時代のデモが多いようで、ハウス期の痕跡も多い。蔵出しというほかないマニアックな内容だが、アートワークはバブズ・サンティニによるものなので、NWWファンも買っているようだ。サイン付木箱に入ったバージョンも。
Nodding God / Play Wooden Child
D.Tibetとアンドリュー・ライルズの新プロジェクト。どこか懐かしいエレクトロニックなサウンドに、チベットのアッカド語(メソポタミア時代に使われていたらしい)によるボーカルが乗る。電子音+エキゾという試みは、もしかしたらカレント93でも採用されていたかもしれないスタイルだ。とにかく、NWWやカレント93では出来ないシリアスな遊びがここでは実現されている。
Charles Hayward / Objects Of Desire
チャールズ・ヘイワードが75年に作っていたテープ加工作品。玩具などを駆使したもので、ディス・ヒートのような演奏のエディット作業ではなく、スプライシング的なテープ工作のようだ。なかなかのクオリティを保っており、ハードな志とサウンドに満ちていたディス・ヒートを始める前にこんなものを作っていたとは驚きである。デヴィット・カニンガムが自身のレーベルから出していてもおかしくない。
キエるマキュウ / 明日に向かって撃て!
2014年に出たマキュウのベスト盤で、後に出た『大リーグボールのひみつ』しか買っていなかったこともありジャンク寸前のものを保護。選曲がヒット曲をあえて外したようなものばかりで当時はファンから不満があった、と記憶している。リエディットされているため、マキュウ曲のMIXとした方が正しいかも(イリシット・ツボイによる)。ジャケットは同名映画のパロディで、この図がプリントされたシャツもあり。どこかで手に入らないだろうか?
Leo Okagawa / Uncommon Places
東京の岡川氏によるカセット。アートワークがプリントされた紙にくるまれていた。中身は環境音とエレクトロニクスによるコラージュ感覚の強い曲のはずなのだが、不思議とツギハギな印象はない。
細野晴臣 / フィルハーモニー
『はらいそ』と共に砂原良徳リマスターによる再発。『S-F-X』よりも明らかに狂ってるのはこちらだが、どうしてか振り返ることが少なかった。昨年の『ノイエ・タンツ』をきっかけに聴き直してみたら、B面部分が凄まじかったので、今回の再発は触れ直すのに絶好のタイミングであった。こんなレコードがバカ売れの波に乗って出されていたとは~、と月並みな感想。
Yellow Magic Orchestra / テクノデリック
『BGM』と同時に出たリマスター再発。結局サブスクで聴いてしまっているのだが、ジャケットがオリジナル時のもの(メンバーの写真を使ったもの)になっている。10年くらい前に出した同人誌の表紙は、友人にこれのオマージュを描かせたものだった、、、と個人的なことを思い出してしまった。内容は10代半ばから飽きるほど聴いているはずが、その鮮度が落ちない不思議に満ちたアルバムだ。良し悪しで括れない瞬間が多々あるのだが、その感情すら懐かしさとして消費する自分に我ながら呆れてしまった。やっぱり「SEOUL MUSIC」が◎。
COIL / LIVE FIVE
タイポールサンドラが発売したコイルのライヴ音源。まさかこのシリーズをまだ続けるとは。100枚限定のCDrだったが、すぐにデータでも販売されるようになった。2002年のライヴで定番のラインナップという感じ。
Michael Cashmore /
The Doctrine Of Transformation Through Love I

少しずつ音源をリリースしていたマイケル・キャシュモアがついにフルアルバムをリリース。なんと音はエレクトロ分高めという予想だにしなかったアウトプット。ビル・フェイを招くという流石の采配も冴える。クラブ・ミュージック及びその空間が、現代とその混沌から抜け出る糸口であると判断した・・・のかは知る由もない。祝完全復活!とにかく良い音!
Nurse With Wound, The James Worse Public
Address Method ‎/ The Vursiflenze Mismantler

もしかしたら新規のアルバムはご無沙汰だったかもしれない。ジェイムス・ワースなるアウトサイダー作家とのコラボレーション。アラノスとの仕事を想起させるオーガニックな作風。しかし、過去のものよりも打ち込みっぽさが強いのはジェイムス側の個性かな。アラノスやティモ・ヴァン・ルイクが参加しており、彼らの音に心当たりがある人にもお薦め。
BUDDHA BRAND / Codeな会話
D.Lが生前録音していた素材やヴァースを用いた新曲とのこと。お蔵入りにしていただけあって、過去の作品と比べると見劣りするというか別人の仕事に聞こえてしまう(しかもポーティスヘッドとネタ被ってるし)。
既にD.L.が故人であることを考えると、今回のブッダブランドとしての発表を素直に喜べるかは微妙なところである。ともあれ、後に出るであろうフルアルバムまでは付き合う。
COIL / The Gay Man's Guide To Safer Sex +2 (OST)
92年に出たVHS用の劇伴。同じ年に出る予定だったサラ・デイル・センシュアルのものはスレショルド・アーカイヴシリーズ第2弾に含まれているCDで聴ける、らしい。ムーディーなラウンジまがいのものまであって、初期特有の雑多なテイストが楽しめる。とはいえマニア向けな内容だ。
V.A. / Seitō: In the Beginning, Woman Was the Sun
日本人女性アーティストのコンピレーション。いわゆるシャーマニックな文脈と、ドローン・ミュージックの実験のそれが良い塩梅で保たれていると感じた。Miki Yuiさんも参加している。リズムが面白い3曲目も◎。音からパッケージの仕方まで非日本的なのが自分に合うのかな。
Haco, Takako Minekawa, Dustin Wong, Tarnovski / Kannazuki
2017年の東京でHaco、嶺川たか子、ダスティン・ウォン、Tarnovskiの四者が行なったライヴ録音。エレクトロニクス主体の即興で、倍音とそれが消えていく間がまた美しい。10分を過ぎたあたりからの展開も良く、ループの使い方などはHacoさんのソロでは確かに見当たらぬものだった。20分弱というボリュームもライトで嬉しい。
The Hardy Tree / Stagdale EP
絵本作家・フランシス・キャッスルの新作『スタグデイル』のイメージアルバムと言えばいいのか、キャッスルの別名義による3曲が収録されている。絵も音も互いを補完することで作品そのものをくっきりと描き出す。
絵本もバッチリ買いましたとも。
Tamayuge / BABA YAGA
日本人とウクライナ人夫妻によるデュオのアルバム。奇しくも『Seito』と重なる部分もあるリチュアルなサウンド。しかしメッセージの矛先は確かに現代だ。GRIMと同じで、都市から放たれることに意味があるトライブへの暗号。何となく神戸っぽい(雑)。
COIL / Live Copenhagen 2002
タイポールサンドラが公式でフリー配布したライヴ音源。コペンハーゲンでの録音で、ジョン・バランスがアルコール依存症の影響で出演をキャンセルした時のもの。セットリストはこの間出た『LIVE FIVE』とほぼ同じ。
GRIM / Lunatic House
インポートしたらS.Grimとして出てきた。それはさておき、待望の新作は珍しくCDやアナログなど複数のメディアで展開、入手も容易だった。音は『MAHA』以来の衝撃で、1曲目からぶっ飛びつつ泣けてしまう。ノイズの使い方が上手いとかでなく、必然的にノイズから音に絡んでいくような、そんな自然現象的な瞬間を何度も体験させてくれる力作。ラスト3曲の圧と言ったらもう、、、。目を閉じて浴びてみよう。
Igor Wakhévitch / Kshatrya (The Eye Of The Bird)
NWWリストに載っていることで妙に有名な怪作家の蔵出し。90年代頭の録音らしいが、妙に時代を感じるニューエイジ的エレクトロニクスにやや納得。後半はノイズ+アンビエント的ドローンの合わせ技もあり、エレクトロニカを先取りしているとも。ジャケットが一番謎だ。
Moodymann / SINNER | KDJ​-​48
急に出たEP。ボーカルの使い方を聞くと、やはりソウルが根底にある人なのだと再確認。過去作がSpotifyにあると知ったので、それら共々愛聴するかと思う。ジョギングにも良さそう。
Reinier Van Houdt / Dead Beats
昨年のコラージュものが素晴らしかったレイニアがアルヴィン・カランのスコアを演奏したもの。とにかくボリュームのある内容ゆえ軽く接するのは難しいのだが、それだけ展開に富んだ長尺の作品として構成されていることがわかる。サティやニューエイジ調のピアノにはない歯切れの悪さ、力強さが逆に心地よい。
Pierre Bastien / Tinkle Twang 'n Tootle
リフレックスから出したアルバムが一番好きなバスティアンだが、今作のオーガニックな路線もなかなか良い。一曲目のジャジーな雰囲気も今までにありそうでなかった。若作りというとネガティブに聞こえるかもしれないが、このポップに仕上げた結果のわずかな歪さが良い。
Shuta Hiraki / Across The Empty Lot
フィールドレコーディングのみで作った2曲が収録されたカセット。公式のコメントにもあったが、オルガンのようなドローンが聞こえて、思わずキャプションを見返してしまった。
判別できないレベルの声がパッケージされており、言語ではなく音に留めておくところにこだわりが感じられた。
Tha Blue Herb / Tha Blue Herb
2枚組というボリュームだが、トータル・アルバムとして完成していた前作のように統率がとれているのは流石のTBH印。一曲ずつシャッフルで聴いてしまっているのだが、とにかく一つ一つを大事にするあまり未だ完走しておらず。でも、この接し方が良いと思ってるので問題なし。言いたいことが多すぎるBOSS、いや、ありすぎる世の中だ。
わざとらしいまでに90sなフローをする曲がある一方で、その世代が率先している(言い過ぎ)ビーフとそのショー化を批判するなど、なんだかデビューした時に近い抉り方を見ているような・・・。初回限定でインスト盤付もあるらしい。
New Order + Liam Gillick ‎/ ∑(No,12k,Lg,17Mif) New Order + Liam Gillick: So It Goes..
マンチェスターで行なったライヴ録音で、12人のシンセサイザーとヴィジュアル・アーティストが加わった編成らしい。いつも以上にビコビコしているが、せっかくならギターやベースもシンセに・・・とは言わないお約束か。珍しくJDの「ディスオーダー」を披露している。
V.A. / Tokyo Flashback P​.​S​.​F. - Psychedelic Speed Freaks
2017年に出たPSFの未発表音源コンピ。各ストリーミングでも配信されていた。ボリュームが大きいゆえに虫食いでしか聴いてないが、言語や文化といった隔てを軽々と超えていく世界への音楽だ。それが如何に響いたかはモダーン・ミュージックに集まる人が世界中にいることからも明白。
Scoobie Do / Have a Nice day!
夏全開と言いつつも、青空や夕日の海を捉えていない寂しげなジャケットがまたクールな新作。曲はバンド特有の粗削りさをあえて残しているのか、その辺りが洗練と実験を同時に果たした前作と比べて物足りなく感じる面も。さりげない変拍子や達郎風ギターなど、技術から嗜好に至るまでアピールが抜け目ないところは流石。『度も恋』のようなうららかな歌詞が楽しめなくなったのは時代のせいとしか言いようがないね。特典は春の磔磔ライヴ盤。
Yozaka/ Silic
デンマークのYozakaによるEP。小粒なニューエイジ調の曲が多かった前作よりもノイジーと思うも束の間、和音の使い方はそのまま。これをBGMに『ミスト』とか『西暦1999ファラオの復活』みたいなゲームがやりたいなあ。プレステの体験版ばっかり入ったCD-ROMのメニュー画面を思い出す。こんなことしか言えません!
Leo Okagawa / In the quiet room
エレクトロニクスによる2曲を収録。CDは水道橋のFtarriで開かれたイベント時に配布されたらしい。
タイトルとジャケットからアルヴィン・ルシエを想起するのはやむを得ず、鳥の鳴き声のように印象付けてしまう安易な我が脳。とはいえ、そこからハーシュノイズへと変わっていく過程が(自分の中で)楽しいのだが。季節がら、夜に合った。
Salami Rose Joe Louis / Zdenka 2080
ブレインフィーダーからリリースという大出世を果たすも、そのカラーを損ねることのないサラミ(前作ほど狂った低音やグルーヴはないけど)。8拍子の曲など相変わらずトリッキーだが、これもすべて天文学と化学に基づいた彼女流のメソッドから。リズムや曲の構造という観点からでないアプローチ、完全に確立されたその世界観に敬服。
Andor / Kissing Boys
素早くかつ黙々と新作を上げ続けるAndor。フィンランドのEukaryoがアートワークを手がけている。音は相変わらずのローファイ・シンセウェイヴ。微妙にダンサブルなのが気になるが、その意図は不明のままだ。4曲目が◎。
田中公平 / 劇場版ハーメルンのバイオリン弾き サントラ編
TVアニメの前に公開された劇場版のサントラ。こちらは原作に準拠したコメディタッチの内容である。音楽はこちらも田中公平氏。ドラマCDまで集めてしまい、この度アニメ関連のものはコンプリート...。
V.A. / Strain Crack & Break: Music From The Nurse With Wound List Volume One
NWWリストに含まれるフランスのバンドをコンパイルした企画盤。Steveがずっと前にBBCと企画していたものに近いと思われる。ジャン・ピエール・マシエラ、レッド・ノイズ、ZNRなどなど強烈な面々が揃う。シリーズ化ということで、次にも期待だ。
Nurse With Wound / To the Quiet Men from a Tiny Girl, Merzbild Schwet
90年以来復刻されていなかった2ndと3rdがリマスターされて再発された。
公式サイト経由のみ、つまりUnited Dairiesからの直販というところに、レーベル設立直後の理想が垣間見えて少し泣ける。未表記だがボーナストラックも収録されている。アナログも今年中には出るらしい。これはレコードとして欲しいアートワークであるね。
Whitehouse / Total Sex
ホワイトハウスの2ndが復刻。スーザン・ロウリーからのリリースで、94年に出たCDと中身が一緒らしい。リマスターくらいはしているかと思ったが、、、。ボーナストラックにはコンピレーション『ホイスティング・ザ・ブラック・フラッグ』に入っていた曲が収録されている。あとは『エレクター』が相応しい処置を加えられて復刻されれば言うことはない。
日本では帯と解説付きのエディションも出ている。
Controlled Death / Black Scorpion Rising
山崎マゾ氏の別プロジェクト。シンセサイザーをベースにした長尺のノイズと、そのライヴ音源がパッケージされている。昨年の大阪で対バンしたGRIM同様、精緻に練られた音だ。GRIMと違って、90年代を彷彿とさせるモコモコした感触がマゾ氏らしい。カセットには乾燥させたサソリの死体が付いてくるようだ。
Scoobie Do / Bootleg-tic Girl 11
三軒茶屋で行なわれたアコースティックライヴ音源。見知った曲も異なるアレンジによって新鮮。ハーモニカと歌、つまりコヤマの味が良く出ている。「ミラクル・ウェイヴ」や「Walkin' Around」なんかは割とレアな選曲である。例によって物販と通販限定。
坂本龍一 / B-2 Unit (2019 Remastering)
リマスターされて再発。細野高橋の二人がリメイクを立て続けに発表しているので御大にも何かやってほしいと思ってるのだが、これは手を入れなくて正解だと思う。
Nick Cave and the Bad Seeds / Ghosteen
前作の延長線上にある新作で、バックはモダン・クラシカル調のドローンが主。ここ数年の作風の頂点と言うべきか、この後はどうするんだろうか?偶然にも和音が日本製ニューエイジっぽい瞬間があり、期せずして耳になじむ音となった。カレント93に近いのは以前からだが、異教というモチーフを持つあちらと比べて、歌詞はキリスト教色強め(のはず)。ケイヴの声が好きな人にはたまらないだろうが、前作の方が好きかな。
Momus / Akkordion
以前からか知らないが、過去作含めてSpotifyで配信されていた。アコーディオンをフィーチャーした作品だが、旋律にはまだまだ日本の祭囃子の面影がある。全曲自前のビデオ付でyoutubeにアップされているのでこちらも必見です。
Stephen Mallinder / Um Dada
キャバレー・ヴォルテールで知られるマリンダーのソロ2作目。30年以上ご無沙汰らしい。「クラックダウン」以降に思い入れがあり過ぎるのか、808使いまくりのダンサブルな曲が続く。チープなバッキングはキャブス初期にも通じる感触があり、ヴォコーダーまで使っているものだから、自分が恋した機材たちを総動員した個人的な作品である・・・かどうかは知らない。それにしても渋すぎ!
Floating Points / Crush
前作よりアヴァンな方向へ行った…と思ったら、ハウスビートやドラムンベース的な展開を見せ、再びアブストラクトな構成に戻っていく。全曲で一曲になるような構成はDJ的で難解なイメージは控えめなのだが、模索中にも見えるし迷走しているようにも感じる。とはいえ、ルーチンワークを壊すからこそのタイトルだろうし、必要なプロセスなのだと思う。なんにせよライヴが見たいし、そちらの方が音源よりも興味がある。
808 State/ Transmission Suite
マリンダーのソロと同時期に聴いた本作も機材愛が強すぎるが、808ステイトは最初からこんな感じ。『ニュービルド』をそのままアップデートしたようなエレクトロで、2019年の音とは思えない朴訥さが心地よい。「パシフィック」のような美メロを期待していないわけではないが、全然顔を出さないからこそ、あの曲の美しさに磨きがかかるわけで、ヘタに狙った曲がないことに安堵してしまうのも事実。しかし17年も空けていたとは驚き...。
V.A. / Unfinished Sympathy Vol.1
「未完の家」をテーマにしたコンピレーション。今年テープを買ったkm:氏や、Shuta Hiraki氏が参加している。一言で表すならアンビエントなのだが、ノイズ、ダウンテンポ、音色重視のドローンなど、同ジャンルの定義の広さがそのまま反映されたバリエーションの豊富さを持つ。特に9曲目が○。NYPだが投げ銭は先の台風被害のための義援金として使われる。
Vanity BOX
昨年逝去した阿木譲氏主催のレーベル、ヴァニティのリリースを総括したボックスセット。レーベルから出たアルバムと7インチの音源を収めたCD11枚入り(黄色とピンクの二色が存在)。全国から公募した音源を収めた『MusiK』と、テープBOXも同時発売。
80年代初頭の時点でここまでヨーロッパの音楽的パラダイムシフトに同期していたのは驚愕というほかない。生前の氏とは同じ部屋に居合わせたくらいのものだった。一言お声かけしておけば、、、と考えても仕方のないことを考えさせるだけの存在なのは確かであった。後出しのようなことを書いて恐縮だが、素直にそう思う。きょうレコーズ様の公式ページにて各リリースの簡単な解説を書かせていただいたので、お暇なら画像からジャンプを。
The Pop Group / Y
ポップグループのファーストに未発表のスタジオ音源とライヴテイクを加えた3CD。ダブリンのレコード店で2000円ちょっとで売られていた。今回のボーナス音源は過去に出た蔵出しの中でも一番いいかもしれない。爆散するように様々な音楽の断片が飛び出すセカンドと比べて、フリージャズとダブが核になっている本作の方がまとまりがある分、好みが分かれるところだ。シングル曲2つや、ROVOも過去にカバーした「ウィー・アー・タイム」はやっぱり良い。関連作品が出る度に叫ばせてもらうが、マークのソロ2枚目と3枚目の再発を求む。
Leo Okagawa / something veiled
福島県にある二つの鍾乳洞で行なった録音を基にした作品。その環境が持つ音以外の要素、作者が現地で感じたそれを表すコンセプト。調査記録ではなく、心象のアウトプットとしてのフィールド・レコーディング。
Swans / Leaving Meaning
新編成となったスワンズのアルバム。ここ数年の作品と比べて曲数が多く、展開も(行ったり来たりなんだが)バラエティに富んでいる。カレント93みたいなフォーキーなパートもあれば、ベイビー・ディーまで参加している。ヘビーなリフや声明じみたボーカルはトランシーで相変わらずトリッピー、60年代的サイケデリアの再来を狙っているとすら思えるのだが、それ以上に歌詞がニック・ケイヴと比べてどれくらい宗教色を持っているのかが気になる昨今。キリスト教圏の人間にのみ出来る「脱キリスト」は日本で育った人間には、どこまで伝わるのだろう。歌詞が普段より多いのも、そんな試みに熱心であることの証左か。ジャケはちと味気ない。
David Byrne / American Utopia on Broadway
『アメリカン・ユートピア』のライヴ録音。昔の曲も多めにやっている(イ・ジンブラ」とか)。とにかく声が通るバーン。「ストップ・メイキング・センス」を見て以降、この人はボーカリストであると思っているため、今回の構成は個人的にバッチリ。ヒップホップの方面から再評価されたりしたら面白いのに。
COIL / Stolen & Contaminated Songs
『ラヴズ・シークレット・ドメイン』のアウトテイク集。本丸となるオリジナルや、その他のアルバムに手が出せないのか、とにかく細かい蔵出しが続く。そろそろ付き合うのが難しくなってきたぞ!「Who'll Fall」は名曲。
Andy Stott / It Should Be Us
『Luxury Problems』超えは難しいだろうと聴く前から穿った見方をしてしまうアンディ。一時期はビートが控えめになったドローンタイプの作品ばかりになってしまったので距離をとっていたが、こちらは『Luxury』の陰がある。とはいえ、あちらを聴けばよいという結論に至るのだが...。
Leonard Cohen / Thanks for the Dance
世に出ていなかった晩年の録音を完成させたアルバム。短い歌や朗読のようなもののピースが集められており、蔵出しと言えばそうなのだが、コーエンの声だけで統一性を持たせる説得力は詩人ならでは(他にはロッド・マッケンとかかな)。曲が簡素なのも声を引き立てていて良い。
Peter Ivers / Becoming Peter Ivers
発掘されたデモ音源集だが、これがまた完成されていて驚き(オリジナルよりいいやつだってある)。どの曲もヨレヨレで美しい。何度でも聴きたくなるし、何度聴いても忘れてしまう。最後のインストにも涙。
Susumu Yokota / Cloud Hidden
共同作業者だったMark Beazley所蔵の音源で、同氏がエディットしたものをコンパイルしたらしい。くもったような音響はその影響なのかもしれない。トライバルなサンプルだが、グルーヴのためでない使い方が良いし、横田氏の特色だった、と思う。一心不乱だったところはアンドリュー・チョークに近い、というのは言い過ぎ?
GRIM / Factory Ritual
怒涛のペースでテスコからリリースされた新作。一曲目が『LUNATIC HOUSE』ラストと繋がっているような気がして、今年は、2010年代は、今世はこの二枚を聴かずして終われない。ノイズは最終的に到達しなければいけない場所でのみ鳴り響く・・・。
Pizzicato Five / THE BAND OF 20TH CENTURY : NIPPON COLUMBIA YEARS 1991-2001
ミックスからやり直したリマスター再発。昔ほど好きでなくなった気がして、シャッフル再生で適当に流している。これがまたいい塩梅なのだが、最初に知った時からそんな感じだった気もするな。活動しながらピチカート自体は微妙にフェードアウトしているところがオイシイと思うのは私だけ? 
Felix Kubin / Matki Wandalki
Mary Ocherと会って名前が出たフェリックス。ニューヨークで会ったJGサールウェルも、クリスロー・ハアスと彼は当時でも別格だったと話してくれた。これは2004年の作品で、ピロレーターのソロ的な長閑さと80年頃のNDWが持つような粗削りぶりが同居している。笑えるんだけど超真剣。過去作もいいやつばっかり。
Merzbow / Pulse Demon
配信されていたので久々に触れてみた。なんでもボートラ付で2LPらしい。少し前にも他所のレーベルだかから出ていたような。
この時期の作品ではこれが一番かな?アートワークと音が合致する例が(個人的には)少なく感じる御仁だが、これは数少ない例外。だからこそジャケットは白黒の方が良かった、とフィジカルを買ってないくせに書いてしまった。私は『抜刀隊』オリジナルを待ち続けてますよ!
Ebony Steel Band / Pan-Machine
クラフトワーク楽曲をスティールパンでカバー。よくある一発ネタなのだが、バックのリズムは普通にドラムでとっていたりして笑える。メロディが栄えている曲ばかり選んでいるところもポイント高し!アップテンポな「タンツムジーク」が特に◎。