備忘録/2017聴いたブツ/随時更新

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田中公平 / ハーメルンのバイオリン弾き 魔曲全集 2
makyoku

引っ越しのために整理しているのだが、持っていた覚えのないものが大量に出てくるので、今年はインポートし直すついでに沢山聴き直せそうである。これはアニメ『ハーメルンのバイオリン弾き』のサントラ第2弾で、全曲生演奏という豪勢な仕事。田中公平氏のインタビューを読んでもわかるように、かなり思い入れのある仕事らしい。原作と違ってシリアス一直線の話にピッタリの荘厳なオーケストラ詰め合わせだが、第1弾のようにクラシックをなぞるものは少なめ。田中氏の作曲能力を改めて堪能できるこちらの方がお気に入り。もちろん浜口史郎氏によるクラシックのアレンジも素晴らしい。
白眉はやはり1曲目の主題歌「未完成協奏曲」で、錦織健氏の歌が本当に凄い。関係ないけど、原作の渡辺道明氏はこの作品を自費出版で描き直して発表中(進行形)。

Nurse with Wound / Octopus
少額のバックがPaypalにあったのでお布施感覚で買ってみた。これはステイプルトン&チベット名義で発表していた作品から幾つか再録したもので、あまり知られていないが98年ごろにCDで出たもの。一曲目はペニー・リンボー(クラス)が参加しているらしいけど、言及されている記事などを見たことがない。「ファイア・オブ・ザ・マインド」はチベットの師にあたる高僧の本に付いてきた曲の編集版のはず。「デッド・サイド・オブ・ザ・ムーン」も微妙にオリジナルと違うバージョン(冒頭のオルゴールがない)だ。一連の作品はリマスター再発されると前からアナウンスされていたが、滞っている様子。
鷺巣詩郎 / 彼氏彼女の事情 ACT1.0

津田雅美原作の少女漫画で庵野秀明が監督したテレビアニメのサントラ。第2弾以降もあるそうだが、これしか持っていなかったようで、この度倉庫から出土した。作品の内容自体はまともに覚えていないのだが、曲はクラシックばかりじゃなかったか?と思ったら、本当にそうだった。マーチからフュージョン、じゃなくてジャズロックにまで手を出すあたりはアレンジャーとしての鷺巣氏も堪能できる良盤。でも、やっぱり推したいのは藤井フミヤプロデュースの主題歌と井上陽水のカバーだね。
曖昧な90年代後半とその記憶に今一度合掌...。

服部克久 / 無限のリヴァイアス
何故アニメの劇判ばかりなのだ!といいますと、ある事情でこれらを優先して掘り出しているからです。
これも90年代末のアニメ『無限のリヴァイアス』劇判第2弾。ヒップホップも多かった第1弾と違って、服部克久氏のチェンバーな曲だけをコンパイルしている。躁鬱気味というか、エモーショナルとダウナーを行き来するという90年代を象徴するテンション。今見返す気はとても起きないが、忘れられない作品の一つ。「棘」と「夢を過ぎても」は、やはり名曲。オマケのエディットされたMIXは台詞がサンプリングされているなど芸が細かい。
SCOOBIE DO/ AKASAKA SWINGING, No.3,他

スクービー関連のアイテムがドバッと出土&投函。DVDは『かんぺきな未完成品』のツアー千秋楽を収めたものと、ダイジェストと言えるものの2枚。レコードは『No.3』とレコードストアデイで出た『新しい夜明け』(B面は「真夜中のダンスホール」)。どれもファンアイテムの域を出ないかもしれないが、貴重なフルライヴDVDや、最初期のアルバムのレコードは持っておきたいもんです。

Nurse with Wound/ A Missing Sense
何故か2枚出てきた編集盤。タイトル曲はオルガヌムとのスプリットで出した、まんまロバート・アシュレイな、それでいて80年代屈指の名作。「スワンソング」はハーシュノイズ好きにお薦めしたい大曲で、シメはサード・マインドから出たLPに収録されていた3rdアルバムB面の再録。実はデヴィット・チベットが初めて参加した録音、のはず。CDで出ているほか、今ではbandcampでも手に入るってんだから良い時代です。そういえば、年末に出た『スパイラル・インサーナ』の再発には「A Missing ~」も入っているようですね。こちらはアートブックなるものが付いてくるらしい、2CDエディション待ち。
UnicaZürn / Transpandorem

ステファン・スロワー(サイクロブ)とデヴィット・ナイトのプロジェクト。ドローンの上を様々なパターンのフレーズが這うタイプで、左右バラバラに鳴っているところがミソ。明滅する電子音にコイルの『エンジェリック・カンヴァセーション』を想像したりもする。

William Basinski/ A Shadow in Time
バジンスキはご無沙汰で、たまたま聴いてみたのだが、これがまた良かった。冗長でないというか、久々にサンプルの良さで勝負している気がして、とても敷居が低いと感じた。ボウイに捧げられ、タイトルも氏の本名「デヴィット・ロバート・ジョーンズ」となっている1曲目はコーラスやサックスがふんだんに使われている。サックス奏者でもあった彼を悼んでの采配だろうか。ループが持ち味の人だと思うので、今回の仕上がりには満足。
V.A./ Coilectif: In Memory ov John Balance and Homage to Coil

フランスのRotoreliefから出ていたコイルのトリビュートがamazonに入っていたから買った。参加陣はかなり豪華で、ヴィヴェンツァ、ジャック・ベロカル、エタン・ドネ、パシフィック231などなど大御所多数。
イリッチは実際にコイルの音源を素材にしているなど、皆気合が入っております。2006年ということで、ジョン・バランスに捧げられていると書いた方が正しいかな。

MSS (Multicultural Symbiotic Societies) / Drop Out
disk unionに入っていたCD-Rで、約45分1曲入り。残響音の彼方から、交差・重複してやってくる戯言の大群。ネタは書きませんが、今だからこそ、この素材。
Simon Fisher Turner / Giraffe

Editions Megoから出たフィッシャー・ターナー新譜。スタイルが微妙に変わってはまた戻る御仁で、定位置に留まらない魅力をそのまま凝縮したような作品。具体音コラージュ、ドローン、しみったれすぎてて泣けるピアノなど、細かいツボを押しまくる秀作。

Joe Meek/ I Hear a New World
モンド・ミュージックでも定番な一枚だが、実は聴いたことがなかったのでこの度入手。いやー、60年の時点でこれは行きすぎです。NWWの『Sylvie and Babs』の親の一つだね。楽しいったらない名作。コラージュという単語またはジャンルに惹かれる人にはオススメという評価もうなずくほかなし。
Dirty Projectors / Dirty Projectors
実はまともに聴いたことがなかったグループで、実験的な側面も強いという評判を聴いたからこの度初体験。ボン・イヴェールやOPN的なサウンドと歌に予想を裏切られた。この手のスタイルには長らく馴染めないのだが、上に挙げた2者含めて、過去作からここに着地した過程を含めると景色が一変するのだと思う。トラッドな瞬間も多く、全然受け付けないわけではないのがむず痒い一枚だが、何度も聴いたら好きになりそうな気もする。過去作も手を出してみようかな?
電気グルーヴ / TROPICAL LOVE
ほぼ全てガレージバンドで作ったという新作。豊富すぎるベースライン、ドラムブレイクのサンプリングなど、リラックスしながらも拘りがうかがえる渋い作品。
前作の『人間と動物』よりも更に脱力した作品だが、『A』時代を思わせる叙情的な「ユーフォリック」など決めるところは決めます。『ORANGE』からネガティブなオーラを抜いたと言えば近いかもしれないけど、正真正銘、完熟した二人体制の電気を改めて見せつける。ジョギングのお供に最適!!
Nurse with Wound / Spiral Insana (ART BOOK)
バッド・ダイアナのアルバムと一緒に買った86年名作の再発。アートブック・エディションの名の通り、コラージュを収録した本型のケースに収められている。何度も聴いている作品だが、どうも微妙にいじってあるようで、聞き覚えのないサンプルなど発見多数。日本に入荷されてすぐに売り切れてしまったため、結局公式のストアで注文した。
Cliff Stapleton / The Tumbling of Creatures
ハーディガーディ奏者のクリフ・ステイプルトンが参加した仕事をコンパイルしたもの。サイクロブやコイルの音源も入っている。自分はこれらでの活動しか知らなかったが、多くのグループやプロジェクトにも参加しているようだ。音色という点では最も好きな部類のドローンである楽器だが、参加したグループによってわずかにその個性を変えているのが伺える良企画。初体験だっただけにコイルでの仕事がピッタリと感じる。
Hauschka / What If
日本でも人気があるらしいハウシュカ。ピアノをフィーチャーした作家だが、それを支えるリズムも面白く、ベルリンの流行りっぽい自動生成モノよりも遥かにとっつきやすいのが好印象。
「ネイチャー・ファイツ・バック」がお気に入りで何度も再生中。
Wolf Eyes/ Undertow
個人的にご無沙汰のウルフ・アイズ。久々に新作を聴いてみたらエラく渋い内容になっていた。フリージャズの延長としてのドローンを繋ぎまくり、最後の大曲はボーカルがヘナヘナなせいで初期TGのようですらある。個人的には前半の音が延々と続くだけでも良かったけど、彼らなりのアンサンブルが堪能できるラストも含めて良かった。
A Guide for Reason / aftertones
まずジャケットが良いよね。惹かれて聴いてみたら、レトロなイメージからはかけ離れたエレクトロニクスの即興集であった。メゴから出たサイモン・ターナーの新作と比べてしまうのだけど、ユーモアというか引き出しが多いあちらと違って、ストイックなままで終わるのが印象的だった。コンセプトには想い出や夢といった如何にもイメージを誘導するワードがあるのだけど、それは1曲目だけでして...そんな孤高のサウンドがニューヨークの今なのだろうか。
Pharmakon / Contact
相変わらず気持ち悪いジャケットでブレないファーマコン。アルバムということもあってか、ハーシュノイズは控えめ、リズミックな低音が目立つ(比較的に)ポップな仕上がりに。今回はそんな気分だったのだろうか。マンネリの回避と活動のペースを両立するのが難しいジャンルだけあって、ちょっとイマイチかな?
この世界の人には是非リミックスにも前向きであってほしい。
SCOOBIE DO / ensemble
『パレード』以来、13年ぶりのシングルだそうで、リアルタイムで買うのは初めてになるのだろうか。出す価値と意義が過去と大きく異なるフォーマットを選ぶところにバンドの気合と賭けが見てとれる。プロデューサー目線で作ったというだけあって、カッチリ狙った渋い出来にニヤリ、ますます濃くなるヤマタツの影。それでいてスクービーにしか出せぬ、いや、ならぬ地の強さが光る。特典のライヴ音源も◎。
Pharmakon / Contact
インプロ風のジャム詰め合わせだが、カンのような木訥さもあって聴きやすい。大きな発見こそないが、生き急ぐようなムードもなく、30年以上前に出ていても違和感がない音に安心する。ツマミを少しずつ上げて楽しみたくなる一枚。
V.A/ Sammlung (Elektronische Musikkassetten, Düsseldorf 1982-1989)
大阪で行なわれたステファン・シュナイダー、ミキ・ユイ、ダダリズムの公演で買ったコンピレーション。シュナイダーが監修したもので、82年から89年のデュッセルドルフ・シーンを切り取ったもの。いずれもシングルやカセットを一つ出したきりで消えてしまった存在ばかりだが、中には不気味なくらいに今の流行とマッチしたものも。わざわざクラスターやクラフトワークと比較しなくても、その土地の音とわかる個性がデュッセルドルフにはある。
Salami Rose Joe Louis / Zlaty Sauce Nephew
昨年に続いて出た新作。やはり、やはり、やはり良すぎる。短い曲が32、どれも同じようで異なるというか、全部通して一つの曲になるような統一感、天然でそれを築いている作為のなさが凄い。ウワモノやボーカルと隠れて、リズムも相当奇妙だったりする。
Dread/ In Dub
ルストモードで知られるブライアン・ウィリアムスの別プロジェクトで、ダブに手を出した作品。従来の鉛的アンビエントが持つ重低音を見事にダブと繋げている。ポストパンク、ひいてはTGはじめとした初期インダストリアル・ミュージック世代にとっても、その影響力が計り知れないジャンルであることを改めて確認した。偶然だが、ジャケットが電グルの新作に似ている。
Revolutionary Army of the Infant Jesus / Mirror
数年前に再始動していたことは知っていたグループ。
いわゆるネオフォークは匿名性と無個性を混同して潰れる者が多いのだけど、ニューエイジ的なエッセンスを強めているおかげで、この世界では相当にポップな一枚となっている。カレント93の『イスランド』(アイスランドで録音されたことでも知られる)あたりが好きな人にはマストでしょう。オリジナルのジャケットは味気ないものだったが、今回は勘違いして買いそうな人も出てきそう。
Amanda Palmer & Edward Ka-Spel/ I Can Spin
A Rainbow

エドワード・カスペルとアマンダ・パーマーの共作。パーマーがどんな人物か知らなかったのだが、ドレスデン・ドールズというデュオの活動にはじまり、作家としても有名らしい。LPDにも顕著な、室内楽とトイポップの中間を漂う、ソフトすぎるサイケデリック。カスペルの囁くような声とパーマーの歌、これらを邪魔しないローファイなシンセとチェンバーな楽器群の調和が美しい佳作。
Laetitia Sadier / Find Me Finding You
レティシア・サディールのプロジェクト。ステレオラブというキャリアがどうしても判断に影響を与えるのだが、当時からエミュレートしていたレトロ調のサウンドが強いので尚更。サウンド面に深化していったティム・ゲインと対称的で、こちらはボーカルとレトロのイメージを更に強化。今更時代とのギャップを狙う必要もなく、本当にやりたい音楽がこれなのだと思う。
The Durutti Colmun / どうもありがとう
86年に出た日本公演を記録したライヴ盤がリマスターと音源追加を以て再発。かなり満足度の高いリイシュー。
あの閑雅なサウンドも生ではそれなりにダイナミックな演奏をもってプレイされている。「ベルギーの友人たちへ」のアレンジが良い。かなり取り出しにくいパッケージであること以外は◎。
Drew McDowall / Unnatural Channel
ドリュー・マクドウォールのソロ2作目。前回はコイル時代の陰が良くも悪くも強かったのだが、今回は自分の嗜好がより強く反映されていると感じた。80年代のカセットテープ・ノイズと同時に、ここ最近のダークアンビエントへの共振が確認できる。
DUB SQUARD / MIRAGE
ダブ・スクアッドの新作。まだ存続していたことが驚きな上、世代らしいブレイクビーツやハードハウスを披露している潔さにも同じく驚愕。EDMを拒否することはアイデンティティを保つ方法の一つなのかもしれないけど、彼らの場合は90年代で言うダンス・ミュージックを作ることがそれなのか。Disc2はリミックス(空間現代はリ・フォーム)で、曲は素材であると言わんばかりのディレクションも当時らしい。
Midori Takada / Through the Looking Glass
長年廃盤となり高騰していることで有名だった作品の再発。LPは高くて諦めていたけど、CDもあったので購入できた。流石のクオリティで、1日1曲ずつ流すなど、長々と付き合いたくなる作品だ。楽器も豊富なので、単純に聴いていて楽しい。
Xordox / Neonspection
JG・サールウェルの新プロジェクトで、由緒あるEMSスタジオ所蔵のブックラ・シンセを中心に作り上げたオール電子音なアルバム。劇判の仕事でも見せていた似非SF、モンドなスペースミュージックはもちろん、クラウス・シュルツェ的な展開まで飛び出す、シンセサイザーの歴史を包括したような力作。最近のシンセ・ウェイヴ好きにも大推薦。
Richard H Kirk/ Dasein
リチャード・H・カークのソロ・アルバムで、キャヴァレー・ヴォルテールの名前は使わないらしい。今時のインダストリアルなサウンドでニューウェイヴ調のロックを描いてみたような仕上がりは「クラックダウン」の時期の延長にも思える。ノイズからダンスへ行くなら、ウィリアム・ベネットのカット・ハンズのようにドープな方向へ進んだものが好みかな。音からサンプルの使い方まで、意外なほどにキャヴスっぽくはあるので、旧来のファンにも薦められる。とりわけキャッチーなテクノ「ニュー・ルシファー」が◎。
CAN / The Singles
カンのシングル集。このバンドのシングルを意識したことは「タートル~」を除いて皆無だった。それだけに新鮮。これと『フロウ・モーション』までのアルバム、おまけに『ロスト・テープス』さえあれば一生楽しめそう。
Former_Airline / The Discreet Charm of the Ghostmodern World
コンスタントにドロップされるFormer_Airline新作。
カセットテープだが、媒体特有のローファイな質感に頼る気配はゼロ、とにかくニヒルな電子音とノイズの応酬だが、ニコの『デザートショア』のように詩情ある瞬間も。ダブ+NDWといった趣で抜けの良い1曲目、個人的によく触るvolca bassそっくりな6曲目が激渋。
ZU / Jhator
フリージャズと記憶していたZUの新作がハウス・オブ・マイソロジーからリリース。当然、あのレーベルのカラーに沿ったテイストになっており、これがまた素晴らしい。キャプションにもあるように、コイル、ピーター・クリストファーソンの仕事に影響を受けているそうだ。1曲目は一瞬「ゴーイング・アップ」かと間違えるようなパートがあり、ドキドキしてしまった。ドローン化するドラムやシンセはもちろん、ハーディガーディや琴(八木美知依さんが弾いている)まで導入しており、多彩なハーモニーが楽しめる。ところでデヴィット・チベットとコラボしたZU93名義のアルバムはいつ?
Girls Ritual / Emergency!
インターネットアイドルと言っていいのか、そんな注目をされているデヴィ・マッカリオンのプロジェクトの一つだそうだ。ザラついた電子音にまみれたシンセ・ポップで、サラミ・ローズ・ジョー・ルイスと対になるような俗っぽさも魅力。ところどころ一昔前のハードコアテクノ調、ナードと呼ぶにふさわしいイナタさが顔を出して、泣ける。ZINEが付属するカセットテープもあったようだが速攻で売り切れてしまった。
The Mulholland Free Clinic
ムーヴDと複数のメンツからなる新プロジェクトだそうで、ベルリンに多いストイックな仕上がりのハウスが並ぶ。オープニングにあるような、ノイズまじりのドローンも彼の地らしい。ファンキーやメロウといった形容を入れる余地がない素っ気なさに無表情で酔いしれる...。
Sunshower / Arcadia
面白くもない夏の終わりに見つけてしまった、如何にもなアンビエント。大貫妙子のアルバムとは関係ないよ。イノヤマランドの1stを彷彿とさせるコードをなぞるシンセの応酬。煽りに煽ってくるチルアウト。NYPです。
Rose Mcdowall / Our Twisted Love E​.​P.
来日までしたローズ・マクドウォールの新作。吃驚したのが、かつてのソロウを彷彿とさせるサウンドであること。スウィッチブレイドがただの企画であることは理解していたが、PTV~カレント93による影響がここまで残っていることに驚いた。また合流してほしい。
特に「Make It Easy On Yourself」が素晴らしい。
Haco / Qoosui
2年ぶりの新作。アートワークから連想するような音がそのまま入っています。
声もドローンも一体化しているので、つい言葉を聞き流しがちなのだが、その境界を意識してこそ栄える作品でもあるはず。
irr.app.(ext.) / Flux​/​Crayfish
もともとカセットで出ていた作品がデータでも販売されたので購入した。引っ越し時に売ったか紛失してしまったか・・・。見る人が見ればアートワークとタイトルから察せるのだが、これはオルガヌムがAMMのエディ・プレヴォ、NWWのスティーヴン・ステイプルトン、そしてアンドリュー・チョークらと共に作った名作スプリットのオマージュである。オリジナル同様、些細な軋みや金属摩擦、更には尺八まで持ち出しているため、ストイックすぎるirrの過去作と比べてポップにすら感じる。
POLTA / 土星少年 EP
ライヴ物販限定だった新音源が部数限定で販売。傑氏による手書きペーパーまで付いてきた。タイトル曲のメロディから、2曲目のクリエイションっぽさまで、これまで以上に90年代っぽさが強い。フルアルバムはどうなるのだろう。大阪のライヴは当日に風邪をひいて行けなかったので、なんとか生で見たい。
Nurse with Wound / The Swinging Reflective II
コラボレーション音源から選んで、エディット+ノンストップMIXで収録していたベスト盤の第2弾。が、今回はセパレートでの収録だった。内容は微妙にいじってるのかどうか正直判断できない(ライヴ録音も多いし)。収録曲は定番の「ロックンロール・ステーション」(これコラボに数えていいの?)にはじまり、アラノス、クリストフ・ヒーマン、イタリアのブラインド・ケイヴ・サラマンダー、サンド、リン・ジャクソン(『Huffin' Rag Blues』参加)などが名前を連ねる。
DJ HELL / Zukunftsmusik
アルバムは大抵フロア向けじゃないヘル。今回もクラブではなく家で聴くものと割り切って作ってある。中身はオールドスクールなディスコや、クラフトワークまたはクラスター的なデュッセルドルフ・マナーに徹したルーツ回帰路線。ステレオMCsを招いたロベルト・ゲアルのカバーが白眉。石野卓球にも言えるけど、良くも悪くも変わらない自分の芯を楽しんでいるようで、肩が軽くなる秀作。ただ、収録時間長すぎ!リード曲「カー・カー・カー」はPVも良い。
Toro Y Moi / Boo Boo
宅禄っぽさは残しつつ、音から曲の構成まで磨き上げられた新作。ネオン・インディアン派の自分でも聞き惚れる歌の数々で、持ち味のローファイもこれまでとは一味違う。ヴェイパー風と言えばいいのか。
ビートが抜かれてアウトロになったと思ったらノンストップで次の曲へ続いていくなど、アルバムの構成自体にも妙な拘りがあって面白い。全編通して使われるピシャピシャしたスネアがたまらないぜ。
Zola Jesus / Okovi
貫禄が凄いことになってきてる新作。かつてのプロデューサーだったフィータスの『ラヴ』にも近い、交響楽+ネオフォーク時々IDMなトラックと歌がピッタリ。
ドローンやブレイクビーツ問わず歌を生かせるのはミュートで培ったバランス感覚か。
Derek Piotr / Forest People Pop
奇妙なリズムを刻むビートとオートチューン使いまくりなボーカルが絡み合う不思議な作品。普通に歌っているはずが、南米の民族音楽のような歌唱になってて常にミスマッチ。それがクセになる。
Cornelius / Mellow Waves
『Point』以降はあまり反応できなかったコーネリアスだが、今回はかなり良かった。これまでのように声もマテリアルとして使うのではなく、普通に歌っている。やっぱりサウンド・デザイナーじゃなくてミュージシャンとしての氏が好きだな。それでいて、過去のアルバムとカラーが全く異なるところに凄みを感じます。
METAFIVEの影響か、ロックしまくる2曲目が楽しい。録音は流石の凝りようなので、ヘッドフォンかつ大きめの音で聴くと発見多数。その分、電車なんかで聴くにはちと厳しい。
SCOOBIE DO / Cracklack
シングルの意欲がそのままアルバムになった新作。ライヴ用として作るのではなく、あくまでプレーヤーで再生することを想定したかのようなディレクションに、プロデューサー・松木泰二郎のハングリーさが伝わる。女性コーラスとキーボード、ノーナ・リーヴスもビックリするような丁寧過ぎるギター、ミュートのかけ過ぎで打ち込みかと思うくらいにタイトなドラムがフレッシュ。
『何度も恋をする』、『ミラクルズ』以来の衝撃。

Robert Haigh / Creatures of the Deep
ロバート・ヘイの新作。サイレンではなく、ニューヨークのレーベルから。いつも通りと言えばそうなのだが、中にはオルガヌム的なドローンを使った曲もあり、わずかに趣向が異なる。2年前に出たアルバムには及ばずか。
Zos Kia / 23
ゾス・キアのライヴ音源やレア・テイクを収録した編集盤。マニア向けだが、なかなかのボリューム。
これと今年に出た『トランスペアレント』さえあればOKかな。「ビー・ライク・ミー」はPTVのコピーと言われればそうかもしれないが、やはり良い。
RHYMESTER / ダンサブル
LINEミュージックの無料期間で聴いている内に買ってしまった。キリンジを招いた「Diamonds」が○。気晴らしに徹したような明るさだが、4年前の『ダーティー・サイエンス』から地続きのもの。業界では影響が大きい地位にいる自分たちの役割を果たそうとする姿が涙ぐましい。LIBROがトラックを提供していたのが意外だった。
Public Speaking / Grace Upon Grace
去年出ていたアルバムはあまり印象に残らなかったが、こちらは良かった。劇判調でジャズ時々ラウンジ。それもツイン・ピークスのサントラ風というのだから好きな人にはたまらないだろう。去年のミヒャエル・アーサー・ホロウェイに近い。インスト版も収録されているが、明らかにこちらの方が良い。
Rabid Chords 002: VU Tribute
日本と米国のアーティストによるヴェルヴェット・アンダーグラウンドのトリビュート。00年に出ていたものだが、これは知らなかった。ほとんどが1stからの選曲で、ジム・オルークによる「ヴィーナス・イン・ファーズ」、ルミナス・オレンジの「サンデー・モーニング」、スワームズ・アームの「アイル・ビー・ユア・ミラー」が良かった。当時の流行りもあってか、グランジ的なファズ使いが多い。
Whitehouse / Birthdeath Experience
日本語ライナー付で再発。古典も古典で、今聴くとハーシュと呼ぶにはショボすぎだが、TGを批判しつつも彼らに刺激されて生まれた音であることを再確認。次の『エレクター』で大きな進化(そして終焉)を見せているだけに、こちらの再発が望まれる。オリジナルとの音の差は常々言われているが、ウィリアム本人またはデニス・ブラッカムによる現在系のマスタリングが望ましいかな。
Kotetsu Shoichiro / MAVDISK
ピクニック・ディスコの小鉄氏が出したビート集。自分が知っている範囲では、去年出たⅣ POLYMOTHのアルバムに近い。でも、あちらほど無菌でないというか、人肌を感じるのがニューウェイヴ、いやミュータント・ディスコ・・・いやいや、自分なりのパンクかな。とにかく艶があるけど物悲しい、ネオンの瞬きのようなウワモノでリラックス。ジムノペディネタも良かった。
Andor/ Puppy Love
ポーランドのイラストレーター、ダニエル・カームダウンがジャケットを描いていることで知った音源。ローファイを共通項に、ロックやアンビエントなどの(大雑把な)バリエーションを持つ。
メソッド以上に精神が宅録的と言えばいいのか、こじんまりとした、あえて言うならチープな曲だらけ。具体的な例えを挙げられるわけではないのだが、MIDI音源を漁っていた頃を思い出してまうノスタルジーが。
細野晴臣 / Vu Ja De
間隔を空けて録音していた音源を収録したらしく、テレビ番組用に書き下ろしたジングルも入っている。ブギなどのクラシックをカバーしたものが多く、フル・アルバムというよりは最近の活動報告といった感じ。すぐそばで歌っているような録音のせいか、エキゾに感じる瞬間もありむずがゆかったり(それも魅力)。声が本人のものなのか一瞬疑ってしまう場面が多々あるのだが、「ラップ現象」みたいな工夫をしているわけでもなさそうだから気のせいか。
Elodie / Vieux Silence
アンドリュー・チョークとティモ・ヴァン・ルイクのデュオ。全ての機材がドローンへと結実するわけではないようで、各々のソロにはない類の減衰音があるなど、違いもくっきり。ソロ作があまりにパーソナルなこともあってか、こちらはライヴ感があるというか、異なるカラーを目指しているのがわかる。一番驚いたのはCD及びデータで出たことだ!
Mary Ocher / Faust Studio Sessions and Other Recordings
3月頃に出たアルバムが素晴らしかったメアリー・オセールがまたリリース。ハンス・ヨアヒム・イルムラーのファウスト・スタジオでのセッションがメインで、レコメン系とも言いたくなるチェンバーな曲もあった前作よりも荒々しい楽曲の数々。彼女のことを調べていく中で言葉、歌や映像に込められたそれを捉える必要があると感じた。こういう人がポップとされてる世界を見てしまうと、日本ってやっぱりアレですよねと改めて。もう少し詳しいことは今書いてる本にでも載せます。とにかく推薦!
bikke+近藤達郎 / 1992
ラヴジョイ結成前に録音していた曲がとうとうお披露目。1曲目からやられました。92年という時代に抱く、根拠のないノスタルジーか、はたまた自分が京都に抱く独善的とすら言えるイメージが学生時代と結びついたのかどうかは決めかねますが、こんなに綺麗すぎていいのか、という程に美しいです。
Phew+山本精一とは趣から何から違うし、元アーント・サリーだからという理由でもないけど、二枚をずっと隣に並べておきたい。
AUBE / 2000
きょうレコーズから始まったAUBEの復刻。晩年のライヴを収めたもので、意外と知られていない時期の音源。自分もこの頃には疎いので、いざ聴いてみたらビックリしてしまった。
静寂を破るのはクラウス・シュルツェ的な電子音で、轟音という典型的日本製ノイズのイメージとはかけ離れたものになっている。クィーン・エリザベスのようなパンクな触り方ではなく、着地点を絞って一直線に飛んでいく豪快かつ精緻な演奏だ。
Yellow Magic Orchestra / NO NUKES 2012
買った記憶はないが聴いた気もするライヴ音源。当時ストリーミングで見たのかな?あれから気が遠くなるくらいの時間が経ったように感じるが、まだ5年なんですね。変わらないものもあれば変わったこともある。どちらを気にしていくかは、その時々で変えていくしかないようだ。自分でも何言ってるかわからないのはさておき、「放射能」のカバーと「千のナイフ」が良かった。ちなみにこれ、AmazonのMusic Unlimited無料期間でプレイ。
Philipe Besombes / Anthology
ストリーミングで発見した②。こんなものまであるんだからビックリ。NWWリストにも載っていたフランスの作家で、主にSF映画の劇判を手がけていたそうだ。これは75年から79年までの音源をパッケージした4枚組。75年『リブラ』はスペーシーなドローンから似非ロックンロールまで、とにかく多彩。劇判という出自ゆえか、その作り物感が楽しい上に、ちょっとした実験とも言えるエフェクトが頻出。なんだかコラージュみたいに聞こえてくる。
Saicobab / SAB SE PURANI BAB
サイコバブのニューアルバム。ヌメロロジー、数秘術に基づいて作ったとキャプションにある。めちゃくちゃなようで、確かなフレーズにはなっているから、思いつきのジャムではないようだ。頭で作っているのか、感性で作っているのか判断しにくい不思議なリズムに満ちた作品である。近年コズミックになり過ぎたヴォアダムスとの違いは、こちらの方がよりプリミティヴでシンプルな快楽を伴うこと。ダンサブルと呼べばいいのかな。
Call Super / Arpo
ベルリン在住のコール・スーパーによるアルバム。初期のケン・イシイに近いという評が気になり、聴いてみたが、確かに『ガーデン・オブ・ザ・パーム』や『インナー・エレメンツ』っぽい。頻出するシンセパッド(のはず)、クラリネットを重用した「アルポ・サンク」や「エッコ・インク」なんかはアンビエントを通り越してエキゾチックの域にある。自動生成モノよりこっち派な自分としては大満足。
SEGA / ポロリ青春名曲アルバム 〜ニュールーマニアポロリ青春オリジナルサウンドトラック
こんなものまでストリーミング対象かーいと一人で驚いてしまった。数年前からデータで配信されていた『ニュールーマニア』のサントラで、CDはプレミア。
「アウトオブザミラー」は光吉氏のカバー含めて名曲だ。「ジョジョビール」のBGMがJSRだったり、14年越しに発見することが多かった。嗚呼我が青春。